その七 雪の相聞

のち
巻第二 103・104 天武天皇 藤原五百重郎女
現在語訳
私の所に大雪が降ったよ。あなたのいる大原の古い里に降るのは後だろうよ。

近くの丘の神様に言って降らさせた雪のかけらが、あなたのところに降ったのですよ。

解説
五百重郎女は大化の改新を進めた藤原鎌足の娘で天武天皇の妃の一人となった。天皇の死後、異母兄の藤原不比等の妻の一人となるという波乱万丈の人生を送った女性である。
奈良盆地は雪はすくなく、天武天皇の宮から実家の大原(現代の奈良県にある小原)は近かった。雪に変わりはないので、これは親子ほどの年の差の妃をからかった歌だろう。
 それに対して妃は小気味よくやり返している。「あらあら、こんな手紙送ってきて……」と苦笑して返事を出している姿が目に浮かぶようだ。
万葉集には意外とユーモアあふれた歌が多い。

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