その四 大和への望郷の歌


巻第1 64 志貴皇子

現代語訳 葦の生えている辺りに浮かんでいる
鴨のつばさが重なる所に霜がおりているのが
見えるような寒い夜は、我が家がある大和が
思われてならない

解説 志貴皇子は天武天皇の第七皇子。奈良
時代末期の光仁天皇の父である。「石走る垂水
の上の早わらびの……」(8−1418)のように、
実に綺麗な歌を詠っている人である。
 傍注によるとこの歌は、慶雲3年(AD706年)
難波宮に御幸があったときに文武天皇のお供し
て、行ったときに詠まれたものだそうだ。年代が
解っている珍しい歌である。

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