その参 挽歌


詠み人知らず 巻第七 1415
現代語訳
愛しい妻は玉の小石だろうか……。
清らかな山のほとりに骨を撒いたら
あとかたもなく散ってしまった事よ……
解説
 挽歌とは本来は棺を挽く時の歌だが、こ
こでは人の死を悼む歌の意味である。
 奈良初期は火葬が一般化したが、風
葬や鳥葬も盛んに行われていたらしい。
墳墓を作ることができたのは天皇や上流
貴族などごくわずかな人である。
 他の人たちは平安時代になっても、鳥矢
部か化野で、放置されたらしい。
 この作者はよはどに妻を愛していたのだ
ろうか。自らの手で妻を散骨したらしい。
悲しい、しかし、美しい歌だと思う。

妹(いも)=妹ではなく妻、愛する人
      当時、異母兄弟同士が夫婦に
      なることが多かったため。
玉梓=ぎょくの首飾りのように美しい
    妹にかかる枕詞
あしひき=山の麓が広がっている様から
     山にかかる枕詞

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