その廿 ムナギの歌

 石麻呂に  われ物申す 夏痩に 良しといふ物ぞ 鰻とり召せ
巻第十六 3853 大伴家持
現在語訳

ちょっと、石麻呂さん、私、言いますけど、夏痩せに良いと言いますよ。うなぎを取ってきて食べたら如何です?

むなぎ……うなぎのこと。当時は、薬扱いだったらしい

解説
 家持もストレスが貯まってやりきれなかったのだろうか?部下か同僚をからかった歌である。その後で、川に行ってうなぎを取る時は流されるなという歌も重ねて歌っている。今じゃパワハラ?とも思える歌だ。今のような蒲焼という料理法も江戸時代の末期近くに発達した新しい物である。醤油類(魚の醤油)も少なかったし、多分塩で丸焼き。川で取らないとない物だ。ユーモアと言えばユーモアだが、当時は藤原氏か橘氏の天下。その下に甘んじなければならない家持の鬱憤を思うと……。ちょっとやりきれない。しかし、「土用の丑のウナギ」のキャッチコピーを思いついた平賀源内がこの古歌を知っていたのかは不明である。

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