その弐 信濃路の歌


東歌 巻第14 3399番
現代訳
信濃路は今、切り開いたばかりの道です。切り株に足を踏み抜かないように、
靴を履いて行ってください。あなた。

解説
 東国(現在の中部から東)地方の庶民が詠んだ歌である。その頃、道は、
まだほとんど整備されていなかった。
 江戸時代の街道の原点が現れるのが、万葉集の編者と言われる大伴家持
が活躍していた時代から100年ほど後である。その当時、開墾されたばかり
の信濃路を通って都へ行くのは危険に満ちた旅だったろう。沓(くつ)=履物
全般、おそらくわら靴かわら草履だっただろう。これを用意する妻の無事で帰っ
て欲しいという気持ちが伝わる歌である。当時、信濃路を通って都へ行ったり
していた東国で、別れの時歌われた民謡のような歌かもしれない。

万葉のトップに戻る