その拾九 七夕の歌2

 天の川 水さへに照る 舟泊てて 舟なる人は 妹と見えきや
巻第十 1996 人麻呂歌集
詠み人知れず
現在語訳

天の川の水、それさえも照らすような美しい水、その岸に舟が泊まっている。舟にいる牽牛は、いとしい妻の織姫に逢ったことだろうか……。

解説
 七夕は節句の一つで、今も、商店街などでお祭りが開かれる。
 その節句のお祭りの時、宮廷で詠われた歌であろう。四季の移ろいや、自然を大事にしたいにしえ人の心が美しく出ている歌である。上の句ではそれが目に浮かぶように描かれて、下の句では、年一回、逢うことを許されている恋人たちの嬉しさを見事に描いている。秋の雑歌のトップに置かれているだけあり、見事な美しい歌である。

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