その壱 梶島の歌

暁の夢に見えつつ    梶島の磯越す波の        しきてし思ほゆ
藤原朝臣宇合 巻第9 1729番
現代訳
夜明け前の夢に見えている、梶島の磯から宮崎に波がしきりとうちよせてくる。
その波のように貴女の事を私はしきりと思っています。

解説
 この歌は後の歌の関係から、征夷大将軍で東征中、都に残した妻か親しい
女性に送った歌ではないかと考えられる。5757の句がしきてにかかる序詞に
なっている。作者の宇合は、詩人肌の弟の麻呂とは逆に武人として有名だが、
女性へのラブレターだけは旅情豊かな歌を送ったようだ。その点、日本人の漢
詩人の草分け的存在の父の不比等の血を受け継いでいるといえよう。

宮崎海岸から望む梶島 愛知県幡豆郡吉良町宮崎海岸

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