※WindowsCEに色々と動きがありましたので、内容を改訂しました。(2000-9-30)
Q1.WindowsCEって何ですか?
A1.Microsoft社の携帯機器用OSで、Windows95/98に似た画面構成/操作方法が特徴です。
WindowsCEは1996年9月16日にアメリカのMicrosoft社が
発表した携帯機器/家電用のOS(基
本ソフト)です。
CEとは「Consumer Electronics」の略で「家電用のWindows」という
意味になりま
す。これは単に携帯機器用のOSではなく、様々な用途に
使えることを意味します。(Q2参照)
画面構成や操作方法はWindows95/98を意識して作られており良く似ています(画面1)。
ただ、 この意識して作ったことが逆に「動作が重い」「PDA※の使い勝手を考慮していない」とい
う
批判を浴びることになったため、 最新バージョンでは表示を平面にして簡略化したり、画面構
成
を変えるなどしています。
※PDA=Personal Degital
Assistant(小型携帯情報端末)
画面1:WindowsCEの画面 (カラー,640×240の画面)
ところでWindowsCEは携帯端末での使用を前提としているので、
Windows95/98シリーズとは以
下のような相違点があります。
1.CD-ROMで供給されるのでなく、予めROM(チップ)に内蔵されてCE機と一緒に出荷される。
2.マウス操作の代わりに入力ペン(「スタイラス」という)で画面をつついて(「タップする」という:
写真1)入力する(右クリックはALT+タップ)
3.ウィンドウのサイズ変更という概念が無く、最大化と最小化の2種類だけ
(ソフトの同時起動や切り替えは可能)
写真1:画面をスタイラスでタップする
次にWindowsCE搭載機種の長所と短所をまとめてみましょう。
(長所)
1.操作がWindows95/98に似ているので、パソコンユーザなら特別な操作方法を新たに学習
しなくて良い。
2.Word,Excel,OutlookなどMicrosoft社のOffice製品とデータ連携が容易である。
3.起動・終了が瞬時にでき、Windows95/98のパソコンと比べてバッテリーの持ちが良い。
(連続使用で10時間前後)
4.本格的なキーボード搭載機種があり、ペン入力の情報端末よりデータ入力が楽である。
5.Windows95/98搭載のノートパソコンより安価(定価で10万円前後)。
(短所)
1.機能を絞って特化した携帯端末機器よりも操作が煩雑になる。
2.ソフトのインストールやデータ変換などはパソコンが必要となるためCE機単体での運用
が難しい。
3.Windows95/98ほどソフトが豊富でない(特に商用ソフト)。
4.機能が特化した携帯情報機器よりも大型で高価になりやすい。
ということで、WindowsCEの概要は御理解戴けたでしょうか?
Microsoft社は「全ての情報機器にWindowsを」という戦略の一環として
WindowsCEの普及を計
ってきました。しかし携帯用OSとして後発だったこと、
Windowsのインターフェースにこだわる
余りパソコンとPDAでの使い勝手の差を上手く吸収できなかったこと、ノートパソコンの低価格
化によって価格差が無くなったこと等が災いし、Palmシリーズなど強力なライバルの多いPDA
市場でのシェア確保に苦戦しています。ある程度成功しているのは日本で「ビジネス用」および
「ポストペット用」としてのキーボードタイプマシンと、MP3プレーヤーとしてのPalmタイプマシンと
いったところでしょうか。
このため最新のバージョンでは、「PDAに即した使い勝手の向上」と「マルチメディア指向」、
「Office製品との連携」をポイントに大幅な改良を加えています。よく言われるように「Microsoft
社の製品は3世代目からが本物」というとおり、今後成功するのかどうか、またどのような方向
に発展していくのか、はたまたPalmとの市場シェア争いはどうなるのか、注目の製品です。
Q2.WindowsCEにはどんな種類がありますか?
A2.バージョン,形状,CPU毎に色々な種類があります。
前項で取り上げたとおり、WindowsCEは携帯/組込(埋込)機器用でその用途は多用です。
では、携帯情報端末としてはどのような種類があるのでしょうか。下の表を御覧下さい。
分類 | バージョン | 主な特徴など | 発表時期 (英語,日本語版) |
サポートCPU | |
英語版 | 日本語版 | ||||
H/PC | 1.0 | 1.01J | 画面480×240ドット、モノクロ4階調 | ('96/9,'97/6) | MIPS/SH系 |
H/PC | 2.0 | 2.0J | カラー256色,最大画面640×240, LAN対応,アプリ強化 |
('97/11,'98/3) | MIPS/SH系 |
P/PC | 1.0 | 1.0J | 画面240×360ドット、モノクロ4階調 | ('98/1,'98/12) | MIPS/SH系 |
H/PC | 2.11 | 2.11J (H/PC Pro 3.0J) |
カラー65536色,最大画面800×600 USB対応(マウス/キーボードのみ) |
('98/10,'99/2) | MIPS/SH系 Strong ARM |
P/PC | 1.2 | 1.2J | カラー65536色 | ('99/1?,'99/2) | (同上) |
PocketPC | 3.0 | 3.0J | ユーザインターフェイス改良,アプリ強化 マルチメディア強化,メモリ管理拡張 |
('00/4,'00/7) | (同上) |
H/PC | 3.0 | 3.0J | (同上) | ('00/9,'00/10) | (同上) |
【凡例】 H/PC=ハンドヘルドPC,P/PC=パームサイズPC
まず覚えて戴きたいのは、 H/PC=ハンドヘルドPC, P/PC=パームサイズPCという言葉です。
WindowsCEは、大きく分けてこの2つのタイプの機種用に提供されています。
H/PC というのはNECのMobileGearⅡシリーズやHPのJornada690
のようなノートパソコンを小
柄にした最大画面がハーフVGA(解像度640×240ドット)のものや、SVGA(800×600ドット)
の
モノクロ/カラー液晶とキーボードを備えた機種です。
その形状からクラムシェル(貝殻)型
とも呼ばれます。
P/PCというのはCASIOのCASSIOPEIAのように画面が240×360ドットの縦長のモノクロ/カラー
液晶でペン入力がメインのいわば「手のひらサイズ」の機種です。
イメージ的にはPalmのような縦
長の液晶を持った形の機械を想像して下さい。それからPocketPCという名称がありますが、これ
は最新版のP/PCの呼称として使われているものです。今後はこちらの呼び方が一般的になるか
も知れません。
なお、H/PC2.11日本語版にはH/PC
PRO 3.0という呼び名がありますが、 これはOS発表時に
「Microsoft Windows CE Handheld
PC Professional Edition version 3.0 日本語版」
( この略称は
Windows CE H/PC Pro 3.0)というアナウンスがあったためです。どうやら
Windows CE 2.11+α
(日本版固有の対応ハード機能の強化?)という意味で名付けられたようですが、一つのOSに2
つの違う意味を持つ数字を持つことになり、非常にややこしい名称になってしまいました。現在は
英語版同様に「CE2.11」の呼び名が一般的です
(^^;)
現時点での最新版はWindowsCE3.0ですので、店頭で選ぶ際は間違えないように注意し
ましょう。
さて、一番右端の欄にサポートCPUとありますが、パソコンと違って
WindowsCEは色々なCPUに
対応しています。CPUが違うとプログラムは互換性がないのが普通なので、対応CPUによっても
種類が存在するわけです。
通常の市販ソフトには大抵複数種類のCPU向けのプログラムが一緒に入れられていますから、
これらを購入する
ときにはさほど気にする必要はありません。
しかし、オンラインソフトでは「CE2.0の
MIPS 用」などという表記に従って自分の機種のCPUにあ
ったものを使用する必要が出てきます。
WindowsCEマシンを購入したら、自分のマシンのバージョンとCPU は何か?を押さえることと、ソ
フト購入/利用時には、このソフトは自分のマシンのCPUで動作するのか?ということは最低限
押さえておきましょう。
次に家電製品としての現状を見てみましょう。
WindowsCEはそれ自体がモジュール化されているので、
必要なコンポーネントを組み合わせるこ
とで様々な家電製品に組み込むことが可能です。Microsoft 社はこの点を強調することで家電製
品への利用促進を図っています。
ただ現時点ではMicrosoft 社の思惑ほどには普及していない
ので、様々な形で売り込みを図っています。
現在WindowsCEが採用されているもので最も有名なものは、
あの「湯川専務」でお馴染みSEGA
の「DreamCast」でしょう。
これはWindowsCE2.0をベースにカスタマイズされたもので発表当時は
CEユーザの間でもちょっとした話題になりました。
また車載用システムとしての利用の動きも最近活発化しています。CE2.0登場時から、クラリオン
が米国でAutoPC(車の音声ナビゲーションシステム)として製品を売り出していた(残念ながら日
本では未発売)のですが、 2000年9月19日にMicrosoft社から車載情報システム向けOSの仕様
を検討する「Microsoft Windows CE
for Automotive フォーラム」を設立するという発表がありまし
た。これはMicrosoft社とカーナビメーカーが共同でCE 3.0をベースにカーナビ・カーオーディオ等
のシステム向けに特化させたOSとするための検討組織で、2~3年先にはこの規格に沿った製
品が開発される見通しです。
今後WindowsCEはMicrosoft社の思惑通り、家電分野に浸透することが出来るのか?また、どの
ようなWindowsCE搭載の家電製品が出るのか?携帯端末市場の将来と併せて今後の動向が気
になるところです。
Q3.WindowsCEにはWindows95/98用の(アプリケーション)ソフトが使えるのですか?
A3.使えませんが、提供されるソフトはWindows95/98ライクに作られています。
残念ながらWindowsCEは「Windows95/98風に作られている」OSであって、Windows95/98とは
別物です。このため、これらのソフトをWindowsCEマシンで使うことは出来ません。
但し、Pocket Word/Excel/PowerPoint/Outlook/InternetExplorerはCE機に付いてきますし、
市販/オンラインソフトも出回っています。(詳細はFAQ集ソフト編参照)
これらは大抵Windows95/98を意識した作りになっているので、操作は直ぐに慣れると思います。
個人情報の管理や外出先でのちょっとした文書作成程度であれば(一部制約はありますが)
十分実用的に使えるレベルです。
Q4.WindowsCEとWindows95/98とはどうやって連携するのですか?
またデータの互換性は?
A4.添付の専用ソフト「CEサービス」で連携します。データはWord/Excelなどのアプリケーション
依存のソフトは制約付きで、テキストなどのデータはほぼ問題なく利用できます。
パソコンとWindowsCEマシンとのデータ連携は、「Windows
CE サービス」と呼ばれるソフトを使
って行われます。(CD-ROMとして添付されてきます)
市場でのシェア確保に苦戦しています。ある程度成功しているのは日本で「ビジネス用」および
接続したいパソコンにこのソフトをインストールして、付属のケーブルでパソコンと
WindowsCE
機を接続するとデータの自動同期(ActiveSyncと呼ばれる)や自動変換・転送などの作業を行
うことが出来ます。
データの互換性ですが、テキストデータなど特定のアプリケーションに依存しないものについて
は、パソコンとWindowsCE機で互換性があります。
一方、Word/Excel/PowerPoint等で作成されたデータは、アプリに依存しますのでデータ変換が
必要になります。この変換は「Windows
CE サービス」が自動的に行ってくれます。 (但し罫線な
どについては変換が出来ない場合がありますので完全ではありませんが)
また最近のバージョンではOffice製品のような有名アプリ依存のデータをいちいち変換しなくても
良い場合もあります。
Q5.WindowsCEがバージョンアップされたらどうなるの?
A5.ROMアップデートサービスを利用するか、新機種に買い換えましょう
(^^;)
WindowsCEはROM(チップ)に内蔵されて製品と一緒に出荷されるので、通常は新しいバージョ
ンが発売されてもWindows95/98のように新しいCD-ROMを買ってきて後からインストールする、
という訳にはいきません。
但し、CE機販売の老舗であるNECとCASIOはROMのアップグレードサービスを実施していま
す。これは2万円前後の金額と1週間くらいの工期で旧バージョンのCE機に新しいバージョンの
CEを入れるものです。もちろんパソコンと同じように旧式機の動作速度は新型機より劣る等の
制約は一部ありますが...
なお、このサポートは今までは新バージョンが出た時期のみ限定で実施されていましたので、次
回以降どうなるかは不明です。該当する機種のメーカーでの情報に御注意下さい。
Q6.結局WindowsCEはどんな人にとって「買い」なの?
A6.次のような人にはお薦めです。
WindowsCEの長所短所、現在の市場シェアその他を勘案すると、次のような人にお勧めです。
※ノートPCと比べて...
1.長時間(10時間程度)電源を気にせず使いたい人
2.衝撃など少々乱暴に扱ってもHDDのようにすぐ壊れない環境をお求めの人
もし出先で画像データの本格的修正や罫線が沢山入ったWord文書を頻繁に作成する、複雑な
技術計算をするなど”本格的に”データ加工をするのであれば、Windows95/98のスリムなノート
パソコンを購入された方が良いでしょう。
というのも市販アプリケーションやシェアウェアが少な
いことと、 OSや搭載アプリそのものに制約があるため、実際にはWord,Excel,メール,
ネット
サーフィンなど”普通のお仕事”+α程度の作業向きと考えるのが妥当だからです。
そういう場
合に上記のような長所を利用するか否かでノートPCにするかWindowsCEマシンを購入するかを
判断するのが無難かと思います。
※他のPDAと比べて...
1.キーボードからの長文入力が多い人(H/PC)
2.Office製品との連携を重視する人(H/PC,PocketPC)
3.インターネットへの接続を容易に実現したい人(H/PC,PocketPC)
4.MP3などマルチメディアを楽しみたい人(PocketPC)
もしメールのチェック(長い返信は書かない)や個人情報の管理だけに特化した使い方をするの
であればZAURUSやPalmを購入するべきです。しかしそこから一歩踏み出してパソコンでしてい
るような事をしたい、とお考えならばWindowsCE機も検討対象とすべきでしょう。
では、CE機を購入するとなったとして、次はどのようなタイプを選ぶか?という問題になります。
特に文書入力を重視するならMobileGearⅡのようなラージキーボードタイプのH/PCを、立った
状態で片手操作することが多く、時にはマルチメディアも楽しみたいというのであればPocketPC
をお薦めします。
また、大画面が良いという人は800×600サイズの画面を持つマシンや、逆に
携帯性を重視するけれどキーボードで入力したい、というのであればHPのHP/Jornadaシリーズ
のようなミニキーボードタイプのマシンも検討すると良いでしょう。
WindowsCEに限らず、携帯端末はまだまだ万能機が無いのが実状です。自分が一体どのよう
な状況でどのような使い方をしたいのか?を良く検討されてから御購入されることをお薦めしま
す。是非悔いのない御購入を...
(2000-9-30 内容一部改訂)
(2000-11-5 CE3.0日本語版を表に追加)