2010年6月2日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の今年39回目の結果。フェリア・デ・アニベルサリオ3日目?ベネフィセンシア(慈善闘牛)。 19時開始、21時15分頃終了。20時19分照明点灯。 プレシデンテ、マヌエル・ムニョス・インファンテ。ノー・アイ・ビジェテ。 ヌニェス・デル・クビジョ牧場の牛。 全体として、非常に上質の牛が出た。 1頭目、。2頭目、。3頭目、良い牛 4頭目、。5頭目、。6頭目、。 闘牛士 モランテ・デ・ラ・プエブラ 口笛とアビソ1回、沈黙。 カジェタノ・オルドニェス ディビシオン、沈黙。 ダニエル・ルケ 場内1周、沈黙。 |
曇時々晴。少し蒸し暑い。ヌニェス・デル・クビジョ牧場(牛Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ファン・ペドロ・ドメク、カルロス・ヌニェス、ホセ・ルイス・オスボルネ牧場)。闘牛士、モランテ・デ・ラ・プエブラ、カジェタノ・オルドニェス、ダニエル・ルケ。ノー・アイ・ビジェテ。ロイヤルボックスにはファン・カルロス国王に代わりエレナ王女が出席し、横にはエスペランサ・アギーレマドリード州知事が列席した。グラダ7にてビデオ撮影しながら観戦する。
モランテ・デ・ラ・プエブラは、ファエナは良くなかったが、キーテ合戦での、ベロニカは非常に素晴らしかった。
カジェタノ・オルドニェスは、カポーテが良い。見せる。器用だ。工夫もある。兄のリベラ・オルドニェスよりも良い闘牛をする。モランテとのキーテ合戦も盛り上げていた。立ってやったラルガやガオネラで観客は好感を持った。モデルをやっているチャラチャラした所もあるが、闘牛士としても良いものを持っていると感じさせる。
ダニエル・ルケは、始めの牛のテルシオ・デ・バラスで、モランテとのキーテ合戦をする。2人とも2回出てきてのキーテ合戦。ルケは、ベロニカやチクエリナをする。モランテは、カポーテの基本であるベロニカで観客の心を鷲掴みした。カポーテを振るときの姿勢、大きく優雅で、パセが長い。そして、テンプラール(ゆっくり)だ。こういうベロニカは誰も真似が気でない。モランテの至宝。美しいだけじゃない味わいがある最高級のベロニカだ。「オーレ」が闘牛場にこだました。まるで耳2枚の時のファエナの「オーレ」の様に…。メディア・ベロニカが決まると観客は総立ちになって喝采を送った。モランテ2回目のベロニカは極上品だった。鳥肌が立った。ベロニカだけでこういう感覚になるは非常にまれだ。でも、今日のモランテはそういうもの値する。ダニエル・ルケはおまけ。モランテが良かったから観客も「オーレ」を叫んだ。その証拠のように、最後の牛のキーテでは、観客は沈黙を守ったし、拍手もまばらだった。ファエナは、良い牛だったので耳の価値があるものだったが、剣が決まらず耳の要求もなく耳を取れなかった。場内1周を観客は要求しなかったが、場内1周をした。
終わった後、Yさんと2人でコロキオしてきた。モランテは、凄いベロニカだった。大きい。パセが長い。テンプラール(ゆっくり)だ。客席は総立ち状態で喝采を送った。ラス・ベンタスの観客は何もしないと、口笛を吹いたり、罵声を浴びせたりするが、良いものに対しては非常に素直に受け入れて賞賛する。
あの「オーレ」の声の大きさは、耳2枚の時のファエナと同じ大きさだった。夢の中にいるような気分を味わった。手に握っているビデオカメラと一脚が夢と現実を繋ぐ道具だった。観客の喜びようは他者との境界線を越境する破壊力を持っている。この喜びのために闘牛を観ているような気がする。耳だけが闘牛じゃないのだ。この儚い一瞬の夢のような世界を感じたくて闘牛場へ通うのだ。ランボーの「見つかった。何が?永遠が」という詩のような世界観と同じだ。
そういうようなことを闘牛が終わった後、Yさんとコロキオで話した。Yさんは去年のモランテも観ているけど、昨日のキーテ合戦に感動したと言っていた。元々モランテは好きではないYさん。それでも、昨日のモランテには去年までのモランテに感じていたものを払拭させるものがあったといっていた。ダニエル・ルケのキーテはおまけのようなもので、1人でやると観客はとシーンとしている。ルケはまじめにやっているが、味がない。まだ21歳くらいで、ひたむきなところが良いがベロニカで沸かせることは、ラス・ベンタスでは出来ない。カジェタノ・オルドニェスのキーテは見せる。20台後半から闘牛を始めたが、兄貴よりもずっと上のレベルにいる。モランテとカジェタノはアポデラードが同じクーロ・バスケス。今年は同じカルテルでまわることが多い。
カポーテの基本であるベロニカ。今の若い闘牛士は、難しい技や派手な技をやりたがる傾向にある。しかし、基本であるベロニカだけでこれだけ観客が沸くことをラス・ベンタスの観客は知っている。誰でも出来るベロニカ。しかし、そこに大きな違いが発生する。落語でもそうだが、同じ噺でも演者によって大きな違いを感じるのが古典落語の人情話。訊いていた感動したり涙したりするのが名人芸。そうじゃないのは、下手。そういう違いが、カポーテ技の基本であるベロニカに出てくるのだ。
そして僕らは知っている。ホセリートが若い頃カポーテ技でベロニカとメディア・ベロニカしかしなかったことを。ああやって実際闘牛場でやる技はほぼその2つに限定して技を磨いたのだ。そういうシンプルな事が出来る闘牛士が今はいなくなった。かつては、ラス・ベンタスでカポーテを持つと観客がシーンとなったり熱狂させた闘牛士たちがいた。クーロ・ロメロ、オルテガ・カノ、セサル・リンコン、ホセリート、フェルナンド・セペダ、そしてモランテとホセ・トマス。
今日は良いものを見せて貰った!
また、フリとの契約が切れたバンデリジェーロのホセ・アントニオ・カレテロは、今年からカジェタノ・オルドニェスに付いたようだ。また、ポンセの非常に良い理解者で優秀なバンデリジェーロだったマリアノ・デ・ラ・ビーニャは、ポンセとは縁を切って今年から、ダニエル・ルケのバンデリジェーロになった。2人とも今日は闘牛場を沸かすことは出来なかったが、今後とも良い仕事を続けるだろう。
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