雨が降って退屈の日曜日の午後。喝采を受けたのは闘牛士ではなくモノサビオっていうのは非道い闘牛の典型だ。

2004年5月9日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 小雨が降り続き強風が吹く寒いマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、エルナンデス・プラ牧場。ソブレロ、コンデ・デ・ラ・マサ牧場。闘牛士、エル・フンディ、オスカル・イガレス、ゴメス・エスコリアル。マドリードの闘牛士3人という事もあり観客はほぼ満員の入り。ソルのテンディド5アルトで番長がお客さんを連れていたが声を掛けられたので一緒に観戦す。

 エル・フンディは、バンデリージャを打つのをやめた方が良い。角の間で1度も打たなかった。前からそうだけどエル・ファンディがあれだけのバンデリージャを打っているのにこのレベルじゃ名前が紛らわしいだけだ。始めの牛は良く膝を着く牛だったが左角の方が長いパセを繋げる牛だった。それを徹底してナトゥラルを繋がないところにフンディのダメさがある。ホセ・トマスの様に徹底的に闘牛で人生を語れないのは技術が未熟なことと、徹底できない迷いや不安があるからだ。ナトゥラルを続けていれば耳は取れなくとも喝采を浴びていただろう。

 4頭目も膝を着くし、パセの後の返りが早い牛でやりにくかった。右角はブスカンドしていた。それでも立ち位置が悪すぎる。クルサードも足りない。牛を誘う位置が近すぎるのと、いつも同じ所に立っている。あれじゃ良い牛でも動かなかくなる。牛が悪いのは判るが剣が2頭ともカイーダ。口笛を吹かれて当然だろう。マドリード闘牛学校でホセリートと同期生は人気でも実力でも大きく差をつけられている。そのうちサン・イシドロに呼ばれなくなるだろう。

 オスカル・イガレスは、上手く牛を扱えなかった。2頭目の牛は左角が長かった。だからナトゥラルを続けた方が良かったがそれが出来なかった。彼も立ち位置が悪い。クルサードも足りない。牛を誘う位置が近すぎるのと、いつも同じ所に立っている。左角はブスカンドする。5頭目は、右角の方が良い牛だった。でも、パセを繋いでいるだけ。面白いパセはなかった。剣は2回ともかなり前の方に半分以上刺さった。

 ゴメス・エスコリアルも、ダメだった。3頭目ではポルタガジョーラから始めたがコヒーダされた。これで観客の同情を買ってファエナが盛り上がれば良かったがそれは出来なかった。この牛も良く膝を着く牛で、おまけに左角はブスカンドする。それでまたコヒーダされた。でも、自分が動くからやられるのだ。最後の牛は右角がブスカンドする牛。それなら左角はどうか試せばいいのに怖がってそれをしない。右手で持ったムレタを牛の前で振って牛を疲れさせることだけに専念していた。剣は2回ともバホナッソ。口笛拭かれて当然でしょう、君。

 今日喝采を浴びたのはモノサビオ(ピカドールの馬をひいたり世話をする係員)。6頭目のピカで牛が馬を突きピカドールが馬から落ちそうになった。タブラにいた複数のモノサビオが落下しそうな係員を抱えて危険を回避した。また、ピカドールのいない馬が牛から攻撃されていたが、それを後ろからタズナと肩を押さえて牛の攻撃を馬に集中させて落ちたピカドールの方に牛が行かないようにしていた。この献身的で危険をかえりみない行為は称賛に値する。

 退場するときも観客は立ち上がって喝采を送っていた。これがこの日1番の見所っていうのは、非道闘牛の典型のようなものだ。


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