超新星ミゲル・アンヘル・ペレラ堂々の耳3枚でプエルタ・グランデ!モレニート・デ・アランダ剣で耳をなくす。

2004年6月6日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 快晴で暑いが風の吹くマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。若牛、エル・ベントリージョ牧場。闘牛士、ミゲル・アンヘル・ペレラ、モレニト・デ・アランダ、イスマエル・ロペス。観客は約7割の入り。ソルのテンディド5アルトにて観戦す。

 5月24日、雨で順延のカルテルがこの日開催された。下山さんが言っていた。ミゲル・アンヘル・ペレラにマスコミがインタビューで、「君の闘牛はホセ・トマスに似ているけど真似をしているの」という問いに、「僕は誰の真似もしていないけど、ホセ・トマスのようなフィグラに似ていると言われるのは嬉しい」と答えていたそうだ。今日の注目は、だからミゲル・アンヘル・ペレラだった。過去、何人のノビジェーロがホセ・トマスに似ていると言われては消えていったことか。しかし、注目のミゲル・アンヘル・ペレラは、凄い闘牛をやって簡単にそして平然とプエルタ・グランデを開けてしまった。こいつはちょっとものが違うかも知れない。彼はエドゥアルド・ガジョと共に、これから正闘牛士になって闘牛界に新風を巻き起こすことだろう。いるもんだねこんなヤツが。マドリードからじゃなくてもちゃんと出て来るんです。良い闘牛士は。

 まずそのミゲル・アンヘル・ペレラは、1頭目の牛から素晴らしかった。ギリギリに行ったので席に着いたら牛がもう出ていた。ベロニカを繋ぎメディア・ベロニカで拍手。ピカは左前に入った。キーテは、足を揃えたチクエリナ3回でラルガ。「オーレ」がなった。確かにホセ・トマスのチクエリナに似ていた。ピカはまた左前に入った。牛が離れたとき膝を着いた。モレニト・デ・アランダのキーテはベロニカ2回メディア・ベロニカで拍手。

 牛は観客に捧げられた。エスタトゥアリオをから入りナトゥラル、パセ・デ・ペチョで拍手。アレナ中央へ行きデレチャソで牛を呼び繋ぐが始めのパセでムレタを角ではらわれた。でも手の低い長いパセが3回繋がりパセ・デ・ペチョで拍手が沸いた。離れ手の低い長いデレチャソが繋がると、「オーレ」が続いた。パセ・デ・ペチョで拍手が沸いた。牛を離れた所から読んでいるから誘うときに手が体の前に出ている。そこからパセをするので手の低いパセが長い。ちょっとピコ気味だけど牛はちゃんと体を廻るようにパセをしている。そこが良い。

 距離を取り牛を呼んで手の低い長いナトゥラルが3回繋がると「オーレ」はより大きく叫ばれた。レマテのパセ・デ・ペチョが決まると喝采が鳴った。牛に背を向けて距離を取り誘う場所を変えてナトゥラル。手の低い長い綺麗なナトゥラルが4回繋がり「オーレ」がこだました。パセ・デ・ペチョの後、牛の前に立ち止まった。喝采が鳴る。キキリキからナトゥラルを繋ぐと牛が膝を着いた。

 ナトゥラルを3回繋ぎパセ・デ・ペチョで拍手がなり剣を代えた。ムレタを背中に持ってクルサードして牛の動きを確認する。背中にやったムレタを左右に動かす。それから牛を誘いベルナディーナ。牛が体の近くを通る。悲鳴が上がる。また丁寧にクルサードして牛の動きをムレタを振って確認してベルナディーナ。そして3度目のベルナディーナの後、パセ・デ・フローレンス、パセ・デ・ペチョと繋いで牛の前に立った。喝采が鳴った。パセは体の近くを通していた。素晴らしいファエナの最後だった。アレナ中央で剣を構え1発で良いところに決めた。牛は倒れた。

 白いハンカチが闘牛場全体を覆った。プレシデンテのラマルカは耳2枚出すことを許可した。ちょっと甘いかとも思った。というのも観客の盛り上がりがもう少しという気もしたが、ちゃんとしたファエナだった。だから、耳2枚で良いと思う。笑顔の場内1周。顔も良いので人気も出るだろう。それより何より良いナトゥラルを持っている。牛のことも最後までちゃんと観ている。距離も良い。だから良いファエナが出来るのだ。牛は一見やりやすそうに見えるが、足を狙ってきたりしていたので、観客が思っているほど実はやりやすい牛ではなかったのかも知れない。それと膝を着く牛を潰さずに手の低い長いパセを続けるというのは容易なことではない。こういうのを技術というのだ。おそらくテンプレが出来ているからだろう。でも、エル・ベントリージョの牛も良い牛だった。

 4頭目の牛は、ブルラデロには行かなかった。膝を折ったベロニカから始めたが足を止めたベロニカが繋げなかった。ピカは左前に入った。キーテは、体の近くを通すガオネラを4回通しラルガで決めた。拍手が沸く。これもホセ・トマス風だった。またピカが左後ろに入った後、モレニト・デ・アランダのキーテは、チクエリナ2回、ラルガで拍手。まあまあだ。ファエナはアレナ中央からデレチャソでタブラにいる牛を呼んで背中を通すパセから始め体の前を通しまた背中を通し、パセ・デ・ペチョ2回で、「オーレ」が続き喝采でかき消された。

 距離を取りデレチャソでクルサードして牛を呼び手の低い長いパセを続けた。1度ムレタを角にはらわれたが良いパセが続きパセ・デ・ペチョ。拍手が沸く。離れナトゥラルで手の低い長いパセが通ると、「オーレ」が続いた。パセ・デ・ペチョで拍手がなる。距離を取りアレナ中へ。クルサードしてパセを通したが2度続けてムレタを角にはらわれた。もう1度クルサードし直して手の低い長いパセが体の近くを通ると、「オーレ」がなりパセ・デ・ペチョで喝采を浴びた。距離を取りクルサードしてナトゥラルを通しまたクルサードしてナトゥラル。これを丁寧に繰り返して手の低い長いパセを続けパセ・デ・ペチョで拍手がなった。牛が1度足を狙って来たが上手く逃げた。ムレタを振っているときに牛をちゃんと観ている証拠。こういう所を観ると闘牛場で生き残っていけるを思った。

 デレチャソで、トゥリンチェラ、手の低い長いデレチャソを2回、クルサードしてまた手の低い長いデレチャソ、パセ・デ・ペチョで拍手がなる。離れデレチャソで、牛を呼びモリネーテ、デレチャソ、クルサードしてまた手の低い長いデレチャソ、パセ・デ・ペチョ2回で牛の前に立ち喝采を浴びた。剣を代えて、マノレティーナ。これもちゃんとクルサードしてパセをする事を繰り返し4回マノレティーナを繋ぎパセ・デ・ペチョ、デレチャソ。牛が体の近くを通っていたので危なかった。拍手がなり。剣刺し。アレナ中央で少しカイーダ気味に決めた。牛が座り、また闘牛場が白いハンカチで埋まった。耳1枚。こいつは凄い奴だ。もう1流のフィグラの風格すら感じる。堂々としている。プエルタ・グランデを開けても泣きもしない。平然と当たり前のように振る舞っている。本当に凄い奴。

 モレニト・デ・アランダも良いノビジェーロ。闘牛場を沸かせた。2頭目の牛では観客は耳を要求したがプレシデンテのラマルカは耳を出さなかった。そのことには賛成だ。ナトゥラルがいまいちだったからだ。ただ剣がちゃんと決まっていれば耳は出ていただろう。5頭目はそれに比べて良いファエナだった。白線を飛んで牛が登場。走り回る。ベロニカの時に風が吹いてコンディションは悪かった。そのせいなのか牛が膝を着いた。カポーテの動きをコントロールできない。メディアの後、後ろ脚を引きずるような仕草をした。ピカは右前と左前に入った。イスマエル・ロペスのキーテは、風が吹く中でガオネラをやった。非常に危険な状態だったが、体の近くを通して拍手を浴びた。命知らずだ。

 ファエナは、膝を折ったデレチャソからから始め中へ。デレチャソで牛を呼び手の低い長いパセを通したが2度目の時牛が膝を着いた。クルサードし直してデレチャソの長いパセを2度通ると、「オーレ」がなった。ナトゥラルで牛を廻すと拍手がなった。距離を取り手に低い長いデレチャソが繋がると、「オーレ」が続きパセ・デ・ペチョで喝采が鳴った。離れデレチャソの一連のパセをパセ・デ・ペチョ3回で締め拍手がなった。離れナトゥラル。クルサード不足。手の低いパセが3回通し今度はクルサードして3回通してパセ・デ・ペチョ。ナトゥラルにもう一つインパクトが足りない。離れデレチャソの日の低い長いパセを5回繋ぎパセ・デ・ペチョ。拍手が沸く。これでも充分耳は切れるだろう。

 剣を代え、アジェダード・ポル・アルトからパセ・デ・ペチョ、アジェダード・ポル・アルトからトゥリンチェラで喝采が鳴った。スエルテ・ナトゥラルでピンチャソ。コントラリアで剣が半分くらい入った。剣を抜くと牛が座った。耳は消えたが場内1周。ナトゥラルがいまいち。でも、彼は良いノビジェーロであることを証明した。

 イスマエル・ロペスも良いノビジェーロではあるが、未だ技術が身に着いていたない。ムレタ捌きも未熟。ナトゥラルがダメ。それなりに観客を沸かせていたが勉強不足です。これは経験不足だけじゃないと思う。

 エル・ベントリジョ牧場の若牛は素晴らしかった。良い牛が出ると良い闘牛が観れる。当たり前のことだが、良い牛を出すことはなかなか難しい。去年、今年と良い牛を出し続けているエル・ベントリジョ牧場に敬意を表したい。これからも真面目に仕事をして良い牛を出し続けて欲しい。

 今日は3人とも良い闘牛をした。サン・イシドロで1番良い日だったかも知れない。しかし何よりも、ミゲル・アンヘル・ペレラという凄いノビジェーロが登場したことに意義がある。彼はここままの闘牛で田舎でもうけるだろう。エドゥアルド・ガジョは田舎では受けない闘牛かも知れない。いずれにしろ、この2人は闘牛士になってフィグラと一緒に出て対等に出来る力を持っているだろうし、スペイン中の闘牛場を沸かすことが出来るはずだ。ミゲル・アンヘル・ペレラはフィグラへの道を歩き始めた。新たなスターの誕生に今日立ち会った。おごることなくフィグラへの道を歩んでいくことを望む。


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