ケ・グラン・ファエナ!エル・シド、剣でプエルタ・グランデを逃し涙の場内1周。次の牛で耳1枚。フェルナンド・ロブレニョも耳1枚。

2004年6月5日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 快晴で暑いが風の吹くマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、ビクトリーノ・マルティン牧場。闘牛士、フランシスコ・エスプラ、エル・シド、フェルナンド・ロブレニョ。ノー・アイ・ビジェテ。ソルのテンディド5アルトにてTさんとYさんと一緒に観戦す。

 今年も最終日は、ビクトリーノ・マルティン牧場で去年と同じ3人の闘牛士が闘牛場を沸かせた。そして、今年のフェリアで最も大きな、「オーレ」の絶叫が闘牛場にこだました。

 フランシスコ・エスプラは、頭で闘牛をする。それは、ピカドールの前に牛を置く置き方をを観れば判る。その期待に応えて、4頭目の牛の時、アンデルソン・ムリージョが牛を呼んでピカを刺して観客の喝采を浴びた。おそらく、今年のフェリアのメホール・ピカドールに選ばれるだろう。ただし、ピカを刺した場所は決して良い場所ではなかった。と言うのもピカが入ったのは左前だったが、肩甲骨の内側をグリグリやって牛をコッホにしていたからだ。エスプラは4頭目でデレチャソをするとパセが短く危ない牛だったので、諦めて直ぐに剣を代えて刺した。観客は怒って口笛を吹いて抗議した。1度もナトゥラルをしないから口笛を吹かれるのだ。退場の時も口笛と罵声を浴びた。当然だ。闘牛の理論に技術が追いついていないからだ。頭は1流でも、技術は3流だ。合わせても3流だと思う。ベンタスにはエスプラのファンは多いがこれではなぁ。

 エル・シドは、セビージャの闘牛士。セビージャで観たときは最低だった。サン・イシドロの1回目も悪かった。でも、今日は物凄い闘牛をした。最高だった。まるで別人のような闘牛だった。そして、やっている内に闘牛のやり方を解ったような闘牛だった。2頭目の牛は、角が上を向き尖っていた。ブルラデロを角で突いた。ベロニカを繋いでメディア・ベロニカ。バンデリジェーロのカポーテで牛が座ってしまった。直ぐに立ち、ピカは左後ろに2度入った。脚が弱く何度か膝を着く場面があった。牛はTVカメラに向けて誰かに捧げられた。

 膝を折ったデレチャソから始め脇の開いたパセ・デ・ペチョ。ここで観客は脇を締めクルサードしてパセ・デ・ペチョをするように口笛を吹いて抗議した。それが良かったのか牛から離れクルサードして手の低い長いナトゥラル4回通すと、「オーレ」が叫ばれパセ・デ・ペチョで喝采にかき消された。距離を取り、クルサードして牛を呼び、手の低い長いナトゥラル5回通した。闘牛場は、「オーレ」を絶叫した。手を体の前に出して牛を呼び体の後ろまでパセを通していた。闘牛場は興奮に包まれた。パセ・デ・ペチョで牛の返りが早く危なかったが観客は喝采を送った。

 牛から距離を取り、角2本分クルサードして牛を呼んだ。セビージャの時はクルサードなどしていなかったが、ここはベンタス、サン・イシドロだ。牛はムレタに吸い寄せられて手の低い長いナトゥラルが繋がると、「オーレ」の絶叫がこだました。2度目のパセの時角にムレタをはらわれたがそれは問題にはならない。脇を締めたパセ・デ・ペチョを決めると観客は興奮して立ち上がって喝采を送った。

 ゆっくり牛から距離を取り牛に呼吸を整えさせて、角2本分クルサードして牛を呼んだ。そうだろう、そういう闘牛が観たかったんだ。ベンタスの観客は、「オーレ」の絶叫を体に溜めて待っていた。手の低い長いナトゥラルが繋がると、「オーレ」の絶叫がこだました。フェリア中最大の、「オーレ」の絶叫が闘牛場にこだました。4回のナトゥラルの後、パセ・デ・ペチョで牛の返りが早かったが、そんな不安も喝采がかき消していた。ベンタスの観客は驚きに包まれていた。こんなに物凄い闘牛するとはと、感動と喜びを全身に感じていた。

 また、ゆっくり牛から距離を取り牛に呼吸を整えさせて、角2本分クルサードして牛を呼んだ。観客は「オーレ」の絶叫を体に溜めて待っていた。叫びたくて仕様がない。手の低い長いナトゥラルが繋がると、「オーレ」の絶叫がこだました。半ば気が狂った様に、「オーレ」を叫んだ。4回、「オーレ」の絶叫が続きパセ・デ・ペチョで牛の返りが早かったが観客は喜びに満ちあふれていた。ケ・ルンルン。

 剣を代え、膝を折った手の低い長いパセを繋ぐと、「オーレ」がなった。観客は酔ったように「オーレ」を叫んだ。パセ・デ・ペチョで牛の前に立ち止まると喝采が鳴った。後は剣だけ。もう耳2枚出るファエナであることは疑う余地がない。しかし、スエルテ・ナトゥラルでピンチャソ2回。コントラリアでピンチャソ・オンダ。刺せなくてデスカベジョ1回。プエルタ・グランデが消えた。退場する牛に喝采が鳴り、エル・シドに対して惜しみない喝采が送られた。出てきたエル・シドは涙を流している。堪えても、堪えても流れ出る涙。それから、涙の場内1周が始まった。その場に誰もいなかったら泣き崩れて大声で叫びまわっていただろう。

 グッと来るものがあった。しかし、馬鹿野郎、剣決めて泣けよなぁと思ったものだ。

 5頭目でも良いファエナをした。しかしそれは2頭目のファエナに比べるものではない。観客は2頭目と合わせて耳2枚を要求したが、勿論2枚目は出なかった。笑顔の場内1周。結果が残せて良かった。が、あそこで剣を決めていれば・・・。

 フェルナンド・ロブレニョは、3頭目で耳1枚取った。コヒーダされても牛に向かって行って手の低い長いパセを繋いだ。良いファエナだったが2頭目のエル・シドのファエナには比べるべきものではなかった。耳に対する抗議もあった。ファエナは耳1枚の価値があったが、剣がカイーダだったからだ。ちょっと残念なのは、フェルナンド・ロブレニョは去年のようなハイ・テンションが薄まった様な気がする。あれがなかったら彼の闘牛から感じるものがなくなる。あの死んでも良いんだ俺は、という気迫が彼の闘牛の全て。これでは・・・。

 ビクトリーノ牛は、アドルフォ・マルティンの牛を観た次の日だったせいか、野性味に少し欠けるような気がした。でも、良い牛を出し続けている。それは長い間、おごることなく良い仕事を続けている証拠だろう。

 今年のフェリアのメホール・ファエナは間違いなく今日の2頭目のエル・シドだ。トゥリンファドールは、マティアス・テヘラに持って行かれたけど、価値のあるファエナだった。ビクトリーノの牛も良かった。脚が少し弱い牛だったが、ほぼ完璧なファエナだった。


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