ペピン、エンカボ、コヒーダ。剣で耳を失う。アドルフォ・マルティン牧場は今年も野性的な良い牛を出した。

2004年6月4日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 快晴のマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、アドルフォ・マルティン牧場。ソブレロ、アドルフォ・マルティン牧場。闘牛士、ペピン・リリア、ルイス・ミゲル・エンカボ、ハビエル・バルベルデ。ノー・アイ・ビジェテ。ソルのテンディド5アルトにてTさんとYさんと一緒に観戦す。

 ペピン・リリア。1頭目は、野性的で難しい牛だった。牛が登場したときに、拍手が起きた。これは牛の美しさに対しての賞賛だ。角は上を向き尖っていた。体型は引き締まっていた。その牛の美しさに観客は、思わず「ケ・ボニト」と口に出さずにはおられなかった。牛はブルラデロに行かなかった。走り回る牛。ベロニカを繋ぐと左角が短く見えた。メディア・ベロニカ。拍手が起きた。ピカは、右後ろと右前に入った。エンカボのキーテはベロニカを3回左角で通し、右角でメディア・ベロニカを決めた。拍手が沸く。あれっと、思った。僕は左角が短いと思ったが、エンカボの左角が長いと判断してベロニカを繋いだからだ。エンカボが正しかったことは、ムレタになってから解った。流石にプロの目。命を懸けてアレナに立っている闘牛士の目だ。と、感心したと同時に、俺の目はまだまだひよこだなと反省した。

 ペピンのファエナは、ナトゥラルから始めた。ペピンもまた、左角の方が長いと判断していたことが解った。クルサードしていなかったがナトゥラルが繋がると、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョで牛はブスカンドした。デレチャソを試みたが牛はブスカンドして繋げられなかった。またナトゥラル。クルサードできない。この牛はクルサードが出来ない牛のようだった。案の定、コヒーダされた。もう右も左も危なかった。剣を代え、スエルテ・ナトゥラルでバホナッソ。

 4頭目の牛も野性的な牛だったが1頭目よりもやりやすい牛だった。ブルラデロへ行かない牛。ベロニカの時牛が飛んだ。右角だった。左角は短かった。長いベロニカが繋がると、「オーレ」がなった。メディアを決めると牛の返りが早かった。この牛も決して簡単ではないことが判る。ピカは左後ろに2度入った。エンカボのキーテは、チクエリナ3回、メディア・ベロニカでまた返りが早かった。ファエナは、膝を折ったデレチャソから始めると牛は頭を下げてムレタの動く曲線をなぞっていった。「オーレ」がなりそれが続いた。パセ・デ・ペチョで喝采にかき消された。

 クルサードしてデレチャソを3回繋ぐと、「オーレ」がなり、パセ・デ・ペチョで喝采が鳴った。距離を取ってクルサードしてデレチャソ。手の低い長いデレチャソが3回繋がるとまた、「オーレ」がなり、パセ・デ・ペチョで「オーレ」が喝采にかき消された。離れクルサードして3回手の低い長いナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。素晴らしい。離れナトゥラルを繋ぎ左手のパセ・デ・ペチョをすると牛はパセの後、急に振り返り角を振り上げてペピンを空中へ放りあげた。悲鳴が上がる。アレナに落ち痛そうにするペピン。右腰の服が破けていたが、左太股の裏には角が刺さった穴が開き血が滲んでいた。

 それから痛い足を引きずって剣がないまま、手の低い長いナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。牛の前に立ちバンデリジェーロに剣を持ってくるように指示した。バンデリジェーロは真剣を持ってきて、アレナの中央で剣を刺しに行った。決まれば耳が出る。しかし、剣は決まらなかった。ピンチャソ3回。その後、カイーダで決まって牛が座った。ぴおんちゃその後、3回とも観客は残念そうに溜息をもらし、それから喝采をペピンに送っていた。退場する牛には喝采が送られた。場内1周はなし。それからペピンに対して喝采が送られて、挨拶をした。挨拶が終わるとアレナを通ってエンフェルメリアへ行った。

 ルイス・ミゲル・エンカボは、牛を見極める目を持っていることを、1頭目の牛のキーテで示した。2頭目の牛はブスカンドする牛に手こずった。5頭目の牛は、アドルフォ・マルティンらしい野性的な良い牛だった。角は上を向き尖っていた。ブルラデロへは行かなかった。ベロニカを繋ぐと、「オーレ」がなった。レマテはベルモンティーナ。拍手が沸いた。ピカは右前に2度入った。エンカボは今日はバンデリージャを打たなかった。牛は観客へ捧げられた。中央でタブラの方にいる牛を誘った。距離があったので牛は動かない。セサルのようには牛は動かない。段々近づいて、7mくらいになって牛はムレタに向かった。デレチャソが繋がると、「オーレ」がなった。が、牛は直接エンカボの足をはらいに行った。

 空中の放り出され牛の上で何度か体がはずんだ。悲鳴が上がる。アレナに落ちたエンカボは右太股の裏から血を流していた。ちょっとすきを見せると狙いに来る危ない牛。これが、ビクトリーノ同様アドルフォの牛も同じ。立ち上がったエンカボはデレチャソを繋ぎパセ・デ・ペチョをした。拍手が沸く。離れ手の低い長いナトゥラルが2回繋がると、「オーレ」がなった。クルサードし直してナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョで拍手がなった。離れ手の低い長いナトゥラルが繋がると、「オーレ」が続いた。しかし、牛はブスカンドし始めた。パセ・デ・ペチョで喝采が鳴った。

 クルサードして、手の低いナトゥラル、トゥリンチェラ、ナトゥラルと繋ぎ剣を代えた。アジュダード・ポル・バッホからトゥリンチェラ、ナトゥラル。拍手が沸く。後は剣だけだった。剣が決まれば耳が出る。しかし、スエルテ・ナトゥラルで、アトレベサーダ気味にエストカーダ・オンダに入ったが直ぐに剣が出てきた。抜けた剣を持ち、今度は良い剣が入った。残念だが耳は出ない。退場する牛に拍手がなった。それからエンカボに対して喝采が鳴り挨拶をした。それからカジェホンを通ってエンフェルメリアへ行った。アレナにはハビエル・バルベルデだけが残った。

 ハビエル・バルベルデは、ちゃんと闘牛をしていた。3頭目は省略。最後の6頭目。牛はヨタヨタして膝ばかり着いていて交換になった。代わった牛もアドルフォの牛だった。ベロニカを繋ぐと右角の時に飛んだ。パセの後、左後ろ脚に欠陥があることが判った。観客は交換を要求したがプレシデンテは代えなかった。それが正解だった。牛は、観客へ捧げられた。膝を折ったデレチャソからアレナ中央へ。遠目からクルサードして牛を誘い手の低いデレチャソ3回が繋がると、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョで喝采で、「オーレ」がかき消された。距離を取りクルサードしてデレチャソで誘うとまた牛は動き出した。手の低いデレチャソ3回が繋がると、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョで喝采で、「オーレ」がかき消された。非常に素晴らしいファエナだった。また距離を取り、手の低いデレチャソ3回が繋がると、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョで喝采で、「オーレ」がかき消された。

 良いナトゥラルが繋がれば耳が出る。しかし、手の低い長い綺麗なナトゥラルではなかった。クルサードし直してナトゥラルを繋ぐがどうして良いパセにならない。もう少し勉強が必要だ。剣は、スエルテ・ナトゥラルで、少し後ろだったが良い剣が決まり牛が倒れたが、観客は耳を要求は弱いものだった。ナトゥラルが綺麗じゃなかったからだ。退場する牛に拍手が起きた。喝采が起きハビエル・バルベルデが観客に挨拶をした。

 退場する闘牛士たちに観客は喝采を送った。ただし、ペピンとエンカボはエンフェルメリアに行っていたので、彼らのクアドリージャが喝采を浴びた。バルベルデは退場の時、観客にまたモンテラを取って挨拶をして退場した。闘牛士が去った後、観客は、良い牛を出したアドルフォ・マルティン牧場に尊敬と敬意を込めて喝采を送った。しかし、牧童頭は、アレナに現れなかった。後でTELで下山さんに訊いたら、闘牛士が2人もコヒーダされて怪我をしているのに、喝采を浴びれないという判断だったと言うことだった。

 そういうことも含めてアドルフォ・マルティン牧場の牛は素晴らしかった。観客は牛に感動し、闘牛士に感動した。


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