セサル・ヒメネスが落ち着いたムレタ捌きで耳1枚。

2004年4月29日セビージャ(第1級)闘牛場の結果。

 晴のち曇りで時々風の吹くのセビージャ、レアル・マエストランサ闘牛場。牛、サンチェス・アルホナ牧場。闘牛士、フィニート・デ・コルドバ、リベラ・オルドニェス、セサル・ヒメネス。観客は満員の入り。ソルのグラダ6にて他3人プラス2人と観戦す。

 フィニート・デ・コルドバは、牛に恵まれなかった。彼の特徴である手の引く長いパセは繋げるような牛は出なかった。パセの後、膝を着いたり、ブスカンドする牛だった。こんな日もある。ハンディージャの牛のようにはいかなかった。彼の2人のバンデリジェーロ、クーロ・モリーナとファン・モンティエルは非常に良い仕事をした。クーロは見事なバンデリージャを打って観客に挨拶をした。ファンは、見事なカポーテ捌きを披露した。この2人は全てのバンデリジェーロの中で最強のコンビかも知れない。その次が、ポンセの所の2人と、セラフィンの所の2人かな。

 リベラ・オルドニェスについて、特に書くことはない。いつもと変わらない。カポーテは良いがムレタは観るべきものがない。それでもセビージャでは大スター。曾祖父さん、爺さん、親爺と4代に渡る闘牛士一家。離婚したとは言え、最近また一緒に住んでいるらしい、ゴヤの時代から続く名家、アルバ公爵夫人の娘との関係もコラソン系TVに毎日のように取り上げられている。今日も唯一の見せ場は、牛交換の時にカポーテを振ってパセしながらトリル(牛の門)に牛を返して喝采を受けたこと。

 セサル・ヒメネスは、今日1番輝いていた。去年の年間最優秀闘牛士に選ばれた余裕と落ち着きが20歳の青年をスター闘牛士への道を歩かせ始めている。始めの牛はこの日1番良い牛だった。ソルテオでものっている闘牛士には良い牛が当たるものだ。ブルラデロの前で止まる牛。こういう牛が経験上良い闘牛をすることを僕は知っている。ベロニカを繋ぎメディア・ベロニカで角に持って行かれた。始めのピカは良いところに入った。キーテはリクエリナからそのままの姿勢で通り過ぎた牛をカポーテの牛でパセを繋ぎ、それを2回続けレマテのラルガを決めると喝采が鳴った。

 バンデリージャは、エル・チャノが2回とも左に廻り角の間で素晴らしいバンデリージャを打って喝采を受け観客に挨拶をした。牛は観客へ捧げられた。そのままアレナ中央で両膝を着いて牛を誘った。右手のムレタでパセを繋ぐと闘牛場は興奮に包まれた。それから立ってパセを繋ぎトゥリンチェラでレマテを決めると喝采が起き音楽がなった。もう始めから「オーレ」がなっている。距離を取ってデレチャソで牛を呼び手の低いパセをリガールしてパセ・デ・ペチョ。「オーレ」が続き喝采が鳴る。距離を取り右手のモリネーテから入りデレチャソを繋ぎパセ・デ・ペチョ。喝采が鳴る。

 落ち着いている。距離を取りナトゥラル。これの手の引くパセを繋ぐと「オーレ」が続く。レマテのパセ・デ・ペチョを決めて牛の前で見栄を切った。ナトゥラルと繋ぎレマテのパセ・デ・ペチョを決めて牛の前で見栄を切ると喝采が鳴った。距離を取ってデレチャソをするも牛が動かなくなってきた。パセ・デ・ペチョを2回繋ぎ見栄を切って喝采を受けてから剣を代えた。剣刺しは、アレナ中央で、カイーダ気味に決まった。白いハンカチが闘牛場を埋めつくしプレシデンテは耳1枚出すことを許可した。

 最後の牛は良い牛ではなかった。それでも前半はしっかりとしたパセを繋いで観客を沸かせたが、パセの後、逃げていく牛でタブラ(柵)の方に逃げて行ってからはどうすればいいか迷っていたし焦っていた。だから上手く牛を捌けなかった。ラス・ベンタスの本当のアフィショナードはこういう牛をどう捌けばいいか知っている。タブラに向かってパセをすれば牛は逃げる場所がなから牛が止まり、パセを繋げるのだ。去年のサン・イシドロのカリファの牛のもそうだった。でも、セサル・ヒメネスは未だ20歳。若い。知らなく当然だ。これが35歳くらいの牛を良く知った闘牛士なら牛が逃げてもちゃんと出来ただろうが・・・。

 それでも耳が出そうな雰囲気があったが剣がカイーダだったので終わった後は観客に挨拶をしただけになった。しかし、今日1番良い闘牛をしたのは紛れもなくセサル・ヒメネスだった。後ろで観ていた、おそらく初めて闘牛を観た日本人観光客はセサル・ヒメネスの技に、「他の人とは全然違う」と、感心していた。彼はマドリード闘牛学校で学んだことを忠実に実践に生かしている。そのことは簡単なようでいて非常に難しいことなのだ。

 闘牛が終わった後、今回のツアーに参加した人に、闘牛はどうでした?また観たいですか?と訊いたら、また観たいと、2日目も参加した4人全員が口を揃えて言ったので、闘牛に乾杯と言ってバルで美味しいタパを摘んで闘牛の話などをした。


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