今年もハビエル・コンデは、自己陶酔のファエナで観客を総立ちにした。でも、剣が決まってもデスカベジョ5回じゃ耳も出ない。

2004年4月24日セビージャ(第1級)闘牛場の結果。

 快晴のセビージャ、レアル・マエストランサ闘牛場。牛、ファン・ペドロ・ドメク牧場。闘牛士、ハビエル・コンデ、セサル・ヒメネス、ホセ・マリア・マンサナレス。観客はほぼ満員の入り。ソルのテンディド10にて写真を撮りながら観戦す。

 ハビエル・コンデは、今年も自己陶酔のファエナで観客を虜にした。だって分かり易い闘牛だもんね。2頭目の牛は観客に捧げられた。多少手が高いが姿勢の良いデレチャソを繋ぐと「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョ。デレチャソを繋いでパセ・デ・ペチョ。音楽がなる。何か僕ちゃん調子に乗ってきたみたい。ナトゥラルは牛の近くで誘う。牛との距離?関係ないジャン。牛が動けばいいのよ、えへん。「オーレ」がこだまする。脇の下を牛を通してパセ・デ・ペチョ。カッコ良いジャン僕って。牛の前で見栄を切る。オールバックの髪の毛を揺らして体を上下して見栄を切る姿は勃起したペニスだ。

 右手もムレタで牛を誘って、ムレタを左手に持ち替えて手首だけをちょっとだけ動かしてムレタを揺らして牛を誘う。その仕草だけで観客は喜んでいる。長いナトゥラルを繋ぐと「オーレ」が叫ばれた。レマテのパセ・デ・ペチョを決めると観客は総立ちになった。興奮って感情よ。肉体から出てくる感情よ。そのことを僕ちゃんはちゃんと判っている訳よね。デレチャソを繋ぎレマテはムレタを左手に持ち替えて牛もほぼ正面に立ってムレタを左から右に、ムレタがアレナを引きずりながら牛を誘うと牛はその誘いに乗って動き出した。「オーレ」。

 もう牛は面白いように動く。観客はハビエル・コンデの闘牛の虜になっている。自己陶酔の闘牛をやればやれほど観客は熱狂する。デレチャソ、ナトゥラル、長いパセを繋ぐと「オーレ」がこだました。剣を代えた。そして、ここからが凄かった。クルサードして右手のムレタで誘う。牛が来ない。そうしたら、ムレタを背中の方から出して誘った。牛が動き出し体の前を通って元いた場所に戻った。また、背中の方から牛を誘いシルクラールをする。「オーレ」の絶叫がこだまする。牛はまた元の場所に戻った。また、背中の方から牛を誘ってシルクラール。もう信じられないパセだ。

 ポンセがやるシルクラールは、体の前を通してから背中を通すもの。でも、僕ちゃんがやっているのシルクラールは背中を通してから体の前を通すもの。もうカッコ良さが違うってばぁ。僕ちゃんって綺麗。僕ちゃんって美しい。僕ちゃんって凄いでしょ。ほらほらお客さんが興奮しちゃって大騒ぎ。パセ・デ・ペチョだってこんな風にすると総立ちになって拍手喝采ジャン。このカッコ良い僕ちゃんを見て見て。

 牛をスエルテ・ナトゥラルに置いて良いところに剣が決まると、観客は歓声を上げて一斉に立ち上がって喝采を送る。最低耳2枚は間違いがない。僕が座っていた近くでは尻尾だと言っている人がいた。その気持ちは良く判る。剣が入った牛の前でポーズを取る。ここまでは僕ちゃんカッコ良かった。でも牛が倒れずデスカベジョを出す。観客はそれを観て口笛を吹いたり、ノーと言ったりしていた。まるで、クーロ・ロメロがデスカベジョをするときみたいだった。剣がダメなハビエルが剣刺しが良かったのにはビックリしたが、まさかデスカベジョで4回も失敗するとは思わなかった。それも牛の頭をちゃんと下げないで刺しに行くから失敗するのだ。本人も天を仰いでいた。

 5回目でようやく牛が倒れた。喝采が鳴り耳要求の白いハンカチが闘牛場を覆った。しかし、デスカベジョ5回じゃ耳が出ないのは当然。それでもこれだけ観客を熱狂させたのは凄かった。場内1周の時には笑顔がなかったのも当然か。僕ちゃんカッコ良かったのに、勃起したペニスは爆発することなくしぼんでしまった。僕ちゃんは欲求不満よね、きっと。

 セサル・ヒメネスは、ベロニカも良かったし、ファエナも良かった。始めの牛では、牛を観客に捧げてアレナ中央でモンテラを靴の上に乗せて自分が動かないという印にして牛を誘った。牛は反応しなかったので、立ち位置を牛に近づけて同じ事をした。今度は牛が誘いにのった。背中を通すパセ、体の前を通すパセ、これを2回続けたがムレタを角に取られてしまった。再開後も背中を通すパセから始め、デレチャソを続けパセ・デ・ペチョをすると音楽がなった。ホセリートがやるような足を広げて腹を出す様なパセを繋ぐと「オーレ」は大きくなった。

 ナトゥラルも手の低い長いパセを繋いで観客を沸かせた。レマテの後に牛から離れ、また近づくときに、ゆっくりと歩きながらムレタを左右にゆっくり振って牛との距離を確認している。こういう所が好き嫌いは別にして見所がある。パセの形や姿勢は美しいが、ピコでファエナをしているがなぁ。でも、時々ちゃんと牛を呼んでいる。クルサードはしている。牛の前で慌てない。スターの要素がある。剣は、ピンチャソ1回の後、カイーダで入った。弱い耳要求があったが、勿論耳は出ない。挨拶。

 ホセ・マリア・マンサナレスは、同名の有名闘牛士の息子だが観るべきものがない。カポーテを振ると手が高いし、ムレタでは味がない。落ち着きだけはあるが退屈な闘牛だ。あんまり退屈なので隣のスペイン人と話をしていた。その老人が言うには、カポーテで手が高いと牛の角にはらわれ易いので良くないと。後は牛や牧場の話をしていた。カメラなど仕舞ってみていた。

 ハビエル・コンデの闘牛は凄かった。あれだけ観客を熱狂させるのも闘牛の一種。ああいうのが嫌いという人も当然いる。でも、あれで観客が熱狂するならそれはそれで良いと思う。あれだけ誰にでも分かり易い闘牛というものがなかったら闘牛は滅びていく。色々な闘牛士が居るから闘牛が存続できるのだ。あー、背中から通すシルクラールの3連発は凄かった。しっかり写真に撮らせて貰いました。現像が楽しみだ。


http://www2u.biglobe.ne.jp/~tougyuu/以下のHPの著作権は、斎藤祐司のものです。勝手に転載、または使用することを禁止する。


ホームに戻る   2004年闘牛観戦記