ハビエル・カスターニョだけがちゃんと闘牛をしようとしていた。

2004年5月16日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 晴れたが風があるマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、パラ牧場。ソブレロ2頭、コンデ・デ・ラ・マサ牧場。闘牛士、マノロ・サンチェス、ヘスス・ミジャン、ハビエル・カスターニョ。日曜日ということもあり、ノー・アイ・ビジェテ。ソルのテンディド5アルトにてTさんとYさんと一緒に観戦す。

 入場行進の後、ホセリート・エル・ガジョの命日と、ガナデロでもあった、アトレティコの元プレシデンテ、ヘスス・ヒルの死を悼んで1分間の黙祷が捧げられた。

 マノロ・サンチェス。92年のサン・イシドロで最優秀見習い闘牛士になったプエルタ・グランデのファエナは素晴らしかった。始めの牛で剣が決まらす、次の牛でもグラン・ファエナをして剣を決めてプエルタ・グランデ。泣きながら場内1周をしていたことを思い出す。が、・・・。1頭目は、ベロニカの後膝を着く牛。左角の方が短く見えた。ピカは、左後ろと左前に入った。ファエナは、デレチャソの膝を折ったパセから始めアレナの内側へ。デレチャソをリガールしてパセ・デ・ペチョ。少し沸いた。離れデレチャソでリガールしてパセ・デ・ペチョで拍手が起き口笛もなった。

 ちゃんとクルサードして牛を誘っていないことと、パセがピコであることが厳しい観客には気に入らないのだ。ナトゥラルをするもやはり左角が短かった。ムレタを角ではらわれた。パセ・デ・ペチョの後返りが早かった。剣を代えスエルテ・ナトゥラルでテンディダ(角度の浅い)で剣が入った。デスカベジョ3回。同じバジャドリードのデスカベジョの名手ロベルト・ドミンゲスには遠く及ばず、牛の頭が高いのにデスカベジョを刺しに行って口笛を吹かれる。4頭目の牛は交換になり、代わった牛も、良く膝を着く牛。それでも、牛の誘い方がダメ。クルサードしている立ち位置で牛を誘っていない。パセを繋いでいるだけで面白いパセではない。口笛が吹かれる。去年と同じ何も出来なかった。闘牛士になってからベンタスでは良いところをまったく見せていない。

 ヘスス・ミジャン。2頭目の牛は良い牛だった。ブルラデロに行かない牛。ゆっくりした長いベロニカを繋がりメディア・ベロニカで拍手が沸く。ピカは左後ろと右前に入った。キーテは、チクエリナを体の近くを通して、「オーレ」がなる。ラルガを決め喝采が鳴った。ピカは左少し後ろに入った。ハビエル・カスターニョのキーテは、ベロニカからメディア・ベロニカ。悪くない。牛は観客へ捧げられた。アレナ中央から牛を誘う。クルサードしていないから牛が動かない。5,6歩近づいてクルサードして牛を誘うと牛はムレタに向かって動き出した。パセと繋ぐと、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョで拍手が起こる。

 このまま良いファエナにはるかと思っていていたが、牛を誘う距離が近い事と、クルサードしていてもパセがピコであること。ムレタの振り方が極端に早かった事など色々重なってファエナは盛り上がらなかった。ベロニカの時にはゆっくりとしたパセを繋いでいたのに、何故ムレタでそれが出来なかったのかのだろう。パセを通すときの姿勢は綺麗なのにムレタの振り方と誘い方が悪い。本人はそのことを解っていないようだ。これは耳1枚切れる牛だった。また、ムレタを角にはらわれていたのも原因の一つ。途中から観客の口笛が吹かれるようになった。剣はスエルテ・ナトゥラルで良いところに入って牛が直ぐ倒れた。喝采が鳴ったが惜しいことをした。

 5頭目の牛では、誘うときに立ち位置の悪さと、ムレタの振り方の悪さがはっきり解った。遠目に立って牛を誘うときはクルサードしていない。それで来ないと牛に近づくがクルサードする方に寄っていかない。だからまた牛は動かない。彼は、右手の低い長い良いパセを持っているのにそれをこの場で披露することなく終わった。考えた方が良い。何故ラス・ベンタスで口笛を吹かれたかを。

 ハビエル・カスターニョは、1番まともに闘牛をしようとしていた。でも牛が悪かったので彼の良さを充分出すことが出来なかった。例えば、ムレタで、遠目で牛を誘うときはちゃんとクルサードして誘っている。だから、牛はムレタに向かって動いた。それでも牛が動かない場合は、牛に近づくのではなく、クルサードする方に寄って牛を誘い直していた。だから、牛がムレタに向かって動いた。この辺がヘスス・ミジャンと違うところだ。近場で牛を誘うときは、角2本分クルサードしていた。多少ピコでこれだけクルサードしていたら問題ない。パセ・デ・ペチョの時はムレタの中央で牛を誘っている。こういうちゃんとしたやり方をしているところが彼の良いところだ。派手な闘牛ではない。地味だ。でも、闘牛はこうやるんだという信念をファエナに感じる。だから、決してスター性のある闘牛士ではないが1流の腕を持った闘牛士であることに間違いはない。

 牛は、1頭目は普通、2頭目の牛が良かった。後は良くなかった。牛が良くないとなかなか良い闘牛は観れない。ダメ牛でも動かしてしまう、魔法を持った闘牛士でもない限りこんな日は良い闘牛が観れない。ダメ牛でも動かしてしまう、魔法を持った闘牛士。それは絶好調の時にセサル・リンコン、ホセ・トマスなんかだったら驚異的なファエナを見せてくれるけど・・・。それは普通に考えて望みが高すぎるって事だよな。


http://www2u.biglobe.ne.jp/~tougyuu/以下のHPの著作権は、斎藤祐司のものです。勝手に転載、または使用することを禁止する。


ホームに戻る   2004年闘牛観戦記