エウヘニオ・デ・モラ(Eugenio de Mora)

por斎藤祐司

 

 1975年2月14日トレド近くのモラで生まれる。本名、エウヘニオ・モレノ・ビジャルビア。

始めての闘牛。1990年8月11日、アレナス・デ・サン・ペドゥロ(アビラ)15歳。

ノビジャーダ・コン・ピカーダ(見習い闘牛士)デビュー、1993年5月15日。バルガス(トレド)18歳。

1997年サン・イシドロ祭の、最優秀見習い闘牛士。22歳。

トマール・デ・アルテルナティーバ(正闘牛士認定式) 

  1997年8月17日トレド(22歳)。パドゥリーノ、クーロ・ロメロ。テスティーゴ、ホセ・トマス。

コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ(正闘牛士確認式)

  1998年5月18日(23歳)。パドゥリーノ、セサル・リンコン。テスティーゴ、エンリケ・ポンセ。

1998年サン・イシドロ祭、最優秀闘牛士。

マドリード、ラス・ベンタス闘牛場。出場3回。耳3枚。プエルタ・グランデ1回。

−−−ラス・ベンタス闘牛場「プログラム」より−−−

  

 

 97年のサン・イシドロ祭の時に観て一辺で気に入ったのが、エウヘニオ・デ・モラ。この年は3回出場した。まだノビジェーロの時だ。3回目の時に耳1つ取る。しかし惜しかったのはこの日2頭目の時だ。ファエナが終わった時点で闘牛場の誰もが耳2枚を疑わなかった。しかし、ピンチャソ2回で、プエルタ・グランデが消えた。満場の喝采を浴びながらブエルタ(場内一周)するエウヘニオの顔には笑顔はなかった。

 この時ほど、耳2枚取らしてやりたかった時はない。サン・イシドロが終わった次の日曜日にホセ・アントニオ・イニエスタとマノ・ア・マノで耳3枚取ってプエルタ・グランデをする。

 この年の9月28日にホセ・アントニオ・イニエスタはミゲル・アベジャンとのマノ・ア・マノの1頭目の牛で右足大動脈を角で切られて血をアレナにボタボタ垂らしながら医務室に向かった。アレナに残されたミゲル・アベジャンは残りの6頭を1人で相手にした。ウニコ・エスパーダになった。最後の牛を向かえるアベジャンに対して、闘牛場の何処からともなく自然発生的に拍手がわき起こった。

 そのアベジャンはフェリア・デ・オトニョで耳1枚取り最優秀見習い闘牛士になる。そして、98年サン・イシドロの5月26日に物凄いキーテを魅せてアフィショナードを唸らせプエルタ・グランデ。始めの牛で耳2枚取った時、アベジャンは泣いていた。それほどまでにマドリードのラス・ベンタス闘牛場でプエルタ・グランデすることは価値のあることなのだ。そして、大変な事なのだ。98年サン・イシドロ祭、最優秀見習い闘牛士。

 その2日前の5月24日正闘牛士になったエウヘニオ・デ・モラが、98年サン・イシドロの一番初めのプエルタ・グランデをする。最後の牛だった。ロディージャ(両膝を着いて)でラルガ・カンビアール(頭の上でカポーテを回してするパセ)から始まった。

 良い牛ではなかった。ピカが入ってからますます非道くなった。バンデリージャを打ち終わる頃には頭を抱えて「駄目だこりゃ。どうしようもない」と、思っていた。

 ところがである。ロディージャで始めたファエナは観客を驚かせた。ロディージャで左右に2回パセをして、両膝を着いたまま牛を1回転半回してしまった。闘牛場は「おー」という歓声が起こり、拍手が沸いた。

 それからはエウヘニオの独断場だった。牛を体の近く通すパセ。ムレタ全体で牛を誘う事が出来るのも他の闘牛士が真似の出来ない事だ。そして、パセ・デ・ペチョ。これには本当に驚かされた。

 パセ・デ・ペチョは、牛の進行方向を45度角度を変えると良いパセ・デ・ペチョだと言われる。こういうパセ・デ・ペチョにもなかなかお目にかかれないのが現状だ。しかし、エウヘニオのそれは90度以上のパセ・デ・ペチョだった。しかも、きっちり体の近くを牛が通ってのものだ。

 牛が通りすぎて向きを変えると、360度廻った様に見える。人によっては360度のパセ・デ・ペチョという人がいるが実際は90度以上と行った方が正しい。こんなパセ・デ・ペチョ観たことない。今までにやった人がいるのだろうか?これもまた誰も真似の出来ないものの1つだ。

 最後の仕留めはレシビエンド(牛を動かして受ける剣刺し)を試みたが牛が動かずに、ボラピエ(牛は止まったままで向かっていって刺す)で決めた。

 白いハンカチで一杯になった闘牛場の中で「オレハ・デ・ベルダ。オレハ・デ・ベルダ」と叫んでいるとまわりのスペイン人達が「そうだ、そうだ」と言ってハンカチを振っていたのを思い出す。それにしても非道い牛で良くこれだけ牛を動かして耳2枚取ったものだ。

 プエルタ・グランデの時、門の前でエウヘニオの車は待っていなかった。モソ・デ・エスパーダ(剣持)が、アルカラ通りでタクシーを止めて待っていた。これは、ご愛敬だ。

 ノビジェーロの時、アルテルナティーバ、コンフィルマシオン、ラス・ベンタスでのプエルタ・グランデと、全部観た闘牛士は、唯一、エウヘニオ・デ・モラだけだ。今最高に気に入っている闘牛士だ。

 恐らくこれから闘牛界を背負って行くのは、ホセ・トマス、エウヘニオ、マヌエル・カバジェーロ、ミゲル・アベジャン、そして、エル・フリなのだろう。

 エウヘニオ!もっともっと自分を磨け。闘牛の歴史に名を残す為に・・・。それだけのものを君は持っている。


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