*5月2日。ホセ・トマス耳1枚取る。

ゴジェスカ。牛ー3頭アタナシオ・フェルナンデス、3頭アルクルセン。

     セサル・リンコン、エンリケ・ポンセ、ホセ・トマス。

*1頭目。セサル・リンコン。

 セサルの牛は誘いに乗らない牛だ。中央で黙って立っているだけ。セサルのバンデリジェーロのアドルフォが誘っているが牛は動く気配がない。

 カルロス・アビラ(バンデリジェーロ)がパセをする。アーこれは難しい牛だ。何も出来ないかも知れない。アントニオがピカを突いたら牛がコッホ(ビッコ)になった。これは非常に難しい牛。ポンセがパセをやっても牛は動かない。

 1頭目のセサルの牛が悪る過ぎた。剣刺しも悪かったが、見てて思ったのは左手でパセをやらなかったのが残念に思う。今日の牛は、右手でパセするとセサルの体を狙いに来る。左手でやるとどうだったか見てみたかった。去年も目の悪い牛で左手のナトゥラルをしなかったが、それと同じで悪い牛だとなかなか上手くいかない。誰でもそうだが・・・。基本的には牛が悪すぎた。

*2頭目。エンリケ・ポンセ。

 ポンセの牛はセサルの牛よりもずっと動く牛だ。タブラ、ブルラデラにはいかない。ポンセ3回ピンチャソ。4回目で決まる。ファエナで観客は沸いたがそれほどオーレはでなかった。どっちにしろ耳はでなかったろう。今の牛はセサルの牛よりずっとずっと良かった。

 ただ今日は風が強いみたいで闘牛士は苦労している。ムレタの時に風を気にしている。ファエナをやる場所が問題になってくるだろう。

*3頭目。ホセ・トマス。

 ホセ・トマス。あまり良い牛ではない。どちらかというと悪い牛だ。ピカが入ってからのキーテ、チクエリーナは2・3mの所から牛を誘い、体ギリギリを通してパセをした。これは物凄かった。去年のプエルタ・グランデの時のチクエリーナよりゆっくり牛をパセして観客を驚かせた。

 ファエナも角の間に体を入れてクルサードしてパセ。ホセ・トマスのクルサードは、左手のナトゥラルの時は牛の左角の方から角の間に入っていってクルサードしていって右角の前に体を持っていってパセする。クルサードの位置を過ぎたもので、クルサードを越えたクルサードをやっているのだ。

 剣刺し1回。徹底したクルサードで耳1枚。これでサン・イシドロの活躍が約束されたようなものだ。良いファエナだった。去年に比べて右手のパセは上手くなっている。左手のパセは去年の方が良かった。これは去年の4月後半から11月始めまでスペインで闘牛を観たときに、後半に思っていたことそのままだ。

 そして、誘うときにムレタを静止させてやるのではなく、動かして誘うようになったのが駄目だ。誘うために出したムレタは静止させてこそ危険な香りが増す。しかし、ホセ・トマスは素晴らしい。今、NO1闘牛士といって良いだろう。セサルがやったキーテも良かったが、ホセ・トマスに比べると残念なことだが落ちる。

*4頭目。セサル・リンコン。

 セサルの牛はさっきより良いが落ち着きのない牛だ。タブラにもブルラデーラにも行かないが止まらない。セサルはどうも良い牛に当たらないようだ。1発ブルラデーラに行った。牛が悪くて何も出来なかった。ただ91年の様な“間”がない。緊張感とか緊迫感が薄れてきたようだ。それはセサルにも観客の方にも。

*5頭目。エンリケ・ポンセ。

 ポンセの牛はセサルの牛より良さそうだ。ポンセは牛をパセに誘うときにムレタを横に出す。体の前にムレタを出して誘わない。だから体から遠くで牛をパセする。パセ・デ・ペチョの時も脇を開いて牛を誘う。彼は出来るだけ遠くで牛を捌きたいみたいだ。

 それとパセをしているときに牛が通過していくと重心が牛と反対の方向に逃げていく。ポンセは危険な香りのしない闘牛士だ。だから観客はブーイングする。口笛を吹く。騒がしくなる。観客に観て貰えない。最後は捨てたような感じの闘牛になった。剣刺しもピンチャソが2回。3回目で剣が刺さった。今やポンセはラス・ベンタスでは嫌われているのかも知れない。

*6頭目。ホセ・トマス。

この牛は良くなかった。ホセ・トマスは良いファエナが出来なかった。

 

===今日の一言===

 もうホセ・トマスが時代の中心だ。それはとても残念なことだけれど事実だ。セサルファンのおいらも、ポンセファンの人もその事が良く分かった筈だ。ホセ・トマスに対抗できる新しい闘牛士がサン・イシドロで、出てくるだろうか?

 出てこなくても、そんな雰囲気を感じさせる闘牛士に会いたいなぁ。


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