*5月29日。また、雨の中の闘牛。牛が悪かった。

コリーダ・デ・トロス。牛、カルロス・ヌニェス。

      ペピン・ヒメネス、カナレス・リベラ、モランテ・デ・プエブラ。

1頭目。ペピン・ヒメネス。

 雨が降って19時半からの開始になっている。

 ベロニカをやっているがあまり良い動きをしない牛だ。始めのピカは左肩の骨の上あたりに刺さっている。引き離すときバンデリジェーロがコヒーダされそうになった。2回目のピカはさっきより少し後ろ入った。その前に左肩のあたりに軽く刺さったのでどっと来たようだ。

 3回目のピカは良いところに入った。牛はすぐ逃げた。4回目は、始めと同じ所に入って牛はすぐ逃げた。5回目のピカも始めと同じ所に入って牛はすぐ逃げた。ようやくテルシオが変わる。

 始めのバンデリージャは角の間で右肩の上に刺した。次は頭の前右角の前で撃って背骨の上に1本刺した。3回目は角の間で撃って左側に2本刺した。1本は首の左側だ。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ペピンは右手にムレタを持って右から牛を誘い、テルシオ(中央部とタブラの間)でファエナが始まる。パセをすると牛は人を捜している。これはちょっと出来ないかも知れない。ムレタを横に出したまま近づいて誘うがコヒーダされそうになる。

 左手でナトゥラルをする。これだと少し動きが良いみたいだ。また牛の前でムレタを横に出しながら誘う。これだと危ない。1度体の後ろに隠してから誘わないと駄目だろう。剣刺しはスエルテ・コントラリアで1回で刺した。デスカベジョは8回目で決まった。

2頭目。カナレス・リベラ。

 カナレス・リベラが左肩の上にカポーテを乗せてトリルに向かった。これから膝を着いてラルガ・カンビアールをやるところだ。牛が出てきて右に左回りに行ってしまった。それからせっかく戻ったのにまた行ってしまった。そしてようやく向かってきたが、ゆっくりだったのでタイミングが悪くカポーテを開くのが早く危なかったが、うつ伏せになって助かった。

 牛の動きが悪い。特に左後ろ脚の送り方が悪い。ピカはちょっと左側だが首の後ろに入った。牛が潰れてしまった。これじゃちょっと出来ない。2回目のピカはさっきより少し後ろだ。離されたが変な動きをしていたので牛が交換になった。

 カナレス・リベラはまたトリルの前に行ってラルガ・カンビアールをやる。ベロニカは良いパセが出来なかった。が、再度ラルガ・カンビアールをするところに彼の前向きなやる気を感じる。ピカは左肩の上に入った。パセの後に牛が膝を着く。チクエリーナをやるが脚を一歩横に引く。

2回目のピカはさっきより後ろ背骨寄りに入っている。

 テルシオ・デ・バンデリージャ。角の間で2本、首の後ろに刺した。2回目は左角の前で2本しっかり刺した。3回目は角の間で撃とうとしたが2本とも外れた。4回目は投げるような撃ち方で1本だけ刺さった。カナレス・リベラのブリンディースはエレナ王女に捧げられた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。良い右手のパセを繋いで、左手のパセ・デ・ペチョは誘い方と牛を通す反対側の足が流れるのが気になる。まあまあのファエナだ。彼はパセを繋いでいるときは良いが、牛の誘い方がムレタを横に出して誘っている。ピコだ。ナトゥラルが始まる。クルサードしていない。脇が開いて誘っている。

 ムレタを体の後ろに持っていかないで誘う。パセはちゃんと繋いだが、クルサードしていない。牛が人を捜し出している。危なくなってきた。右手のナトゥラルを始める。まあまあだ。右手のナトゥラルは96年5月2日のゴジェスカの闘牛でホセリートがやったものは、剣を投げ出して右手にムレタだけを持ってパセした。あの時の右手のナトゥラルは物凄いイマジネーションを感じさせるものだった。

 ナトゥラルとは剣をムレタに添えないで自然な形でやるからそう呼ぶ。それは通常は剣は右手に持つものなので左手でムレタを持ってやるパセをナトゥラルという。カナレス・リベラは剣を左手に持ってやった。スエルテ・コントラリアで牛を置いて良い剣刺しだがちょっと横に刺さっている。これは肺に行っているような剣刺しだ。

3頭目。モランテ・デ・プエブラ。

 突進する牛だ。オーレ。モランテは良いベロニカを繋いだ。ピカドールが定位置に着く前に牛が行ってしまってピカが入った。牛は膝を着いた。脚がおかしいような感じだ。ピカが肩の腱を刺したのかも知れない。右前脚がおかしい。牛はカポーテに反応しない。後ろに歩いていったり、首を動かさない。反応が悪い、あまり良い牛でないようだ。ピカは背骨の上の肩の後ろに入った。次はさっきより前右側に入っている。

 始めのバンデリージャは角の前で2本刺した。次は牛の反応が悪くてへっぴり腰で、背骨と右肩に刺した。3回目はなかなか撃てなくて、近くに行ってまた離れるので牛が動かないでいる。結局1本だけ刺してテルシオが変わった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。モランテは牛を真ん中に持っていってナトゥラルから始める。クルサードしてナトゥラル。2回目にもうコヒーダされそうになっている。モランテはムレタを前に出したまま何回も牛を誘う。あれじゃ来ない。体の後ろに隠してからムレタを出さないと駄目なのに。クルサードもしていない。これじゃ駄目だよな。

 ムレタを横に出したまま、ただ立ち位置を変えて牛を誘っている。これでは来ない。判ってないよなぁ。去年のトマール・デ・アルテルナティーバの時から変わっていない。せっかくセサル・リンコンにパドリーノをやって貰ったて言うのに。今年のセビージャのトゥリンファドールが泣くよな。

 もっともセビージャあたりじゃクルサードしなくたって耳は貰えるからなぁ。ピコだってパセさえ繋いでいれば観客は喜ぶものなぁ。ラス・ベンタスとはレベルが違う。剣を替えた。前脚が揃ってないのにスエルテ・コントラリアで剣刺しに行ってピンチャソ。スエルテ・ナトゥラルでまたピンチャソ。左手の振りが悪い。3・4回目もピンチャソ。次もまた失敗・・・。

4頭目。ペピン・ヒメネス。

 牛はゆっくり出てきて真ん中にいる。カポーテの誘いに反応を示さない。牛は逃げ回っているだけで全然カポーテに来ない。でてきてから何分過ぎただろう。5分以上過ぎている。3つのカポーテに囲まれても違う所に行く。バンデリジェーロが追いかけているが全く駄目だ。物凄い口笛が鳴りっぱなしだ。

 逃げ回って馬の所に行ってピカでちょっと背中を触られただけでまた逃げてしまった。ようやく1回目のピカが刺さっている。右肩側に入った。ピカを背中に着けたまま牛が離れていった。ピカはすぐ取れた。バンデリジェーロが追いかけていたら、後ろ脚を蹴り上げた。2回目のピカは右肩上の背骨寄りに入っている。

 3回目のバンデリージャは2本刺さらなかったがテルシオが変わる。2回目はちゃんと刺していた。始めのもちゃんと刺していた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。右手のパセが始まったが手が高い。そして角ではらわれてムレタを落とした。ムレタを始めっから横に持って牛を誘っている。これじゃ駄目だ。今2回オーレが鳴ったがそんなに良くなかった。クルサードしないで左手のムレタを出している。あれじゃ来ないよなぁ。

 ナトゥラルが何回か続いてパセ・デ・ペチョ。ナトゥラルは良かった。ただ手首の動きが変だ。パセ・デ・ペチョは真っ直ぐ通す。ナトゥラルの誘い方はピコになっている。クルサードをなかなかしていない。ムレタを体の後ろに隠さない。脇が開く。

 スエルテ・ナトゥラルで剣刺し。眠くなる。退屈だ。牛が前脚で土を掻いたので置き直す。ムレタを高く上げて例のペピン・ヒメネス独特のタキージャドールにムレタを絡めて剣刺し。横に入っている。これは良くないなぁ。

5頭目。カナレス・リベラ。

 牛はゆっくり出てきたがカポーテには良い反応をしている。しかしカナレス・リベラはパセをしていない。ベロニカをすると彼の方に向かってくる牛だ。これはちょっと危ない。牛は落ち着かなくずーと走り回っている。ピカは背骨から少し右寄りの肩と肩の間に入った。2回目のピカは肩の左寄りの所に入った。

 始めのバンデリージャは角の間で撃って右肩側に2本刺した。次は頭の前で撃ったが刺さらなかった。牛に追われてきたがリベラが反対側に走って牛を引きつけた。最後は角の間で横向きで撃ったが首の瘤の前に刺さった。首を振るとバンデリージャが動く。

 テルシオ・デ・ムエルテ。雨が強くなっている。アレナの半分は水浸しだ。カバーを掛けていたところはまだ大丈夫な所があるが、水が浮いてきている所もある。リベラはファエナをしている。この牛はクルサードがどうのとかそういう問題じゃない。何も出来ない。

 リベラはやろうとして出来なくて剣を変えたのだ。観客から”殺せ”の声が聞こえる。スエルテ・コントラリアで置いているが牛が動く。1回目ピンチャソ。2回目もスエルテ・コントラリアで置いているが牛が動く。スエルテ・ナトゥラルに置き直して行った、が、やっぱり刺せない。

 前脚を揃えていないからだ。3回目もコントラリアでピンチャソ。脚が揃っていない。焦っているというか、急いでいる。横に向かって刺しに行く。これはクーロ・ロメロだ。ようやくスエルテ・ナトゥラルで決まった。牛はおそらくすぐ倒れるだろう。あっ倒れた。

6頭目。モランテ・デ・プエブラ。

 牛はゆっくり出てきてブルラデーラにいるバンデリジェーロの誘いにのってブルラデーラに角を突き立てた。モランテのベロニカは牛もきびきびした動きで向かっていき良いパセを繋いだ。パセの後、膝を着いたまま走っていった。始めのピカは3回刺しなおした。

 左肩の上、右肩、右肩よりの所、腱は損傷しているかも知れない。やはり前脚がおかしい。馬に牛が拘っている。そのまま膝を着いてすぐ起き上がる。またパセの後頭からアレナに擦り付けるように転んだ。牛はやっぱり変わった。交代した牛は小さいが、あっ小さくない。580kgあるが小さく見える。

 ピカは左肩よりの良いところに入っている。次も同じ所に刺しているみたいだ。ここなら問題ない。ただ脚がおかしい。それと首の振り方がパセの時にいつも左側に振る。つまり右角を使うと言うことだ。目が見えないのかも知れない。あるいは右利きなのか。ベロニカの時、危なかったのでかなり気を付けた方がいいだろう。ピカは同じ所に刺している。

 1回目のバンデリージャは1本だけ、2回目は角の前で2本きっちり刺した。

 テルシオ・デ・ムエルテ。モランテの牛は本当に危ない牛だ。彼はちゃんとやることが出来ない。凄く難しい。仕様がない。スエルテ・ナトゥラルで置いて脚が動く。これは刺しにいけないぞ。1回目はピンチャソだった。牛を置きづらい。ナトゥラルでまたピンチャソ。モランテは体が牛に向かって左側に逃げるように刺しに行く。脚を揃えて刺しに行かない。せっかく脚を揃えても体が逃げていくのでまたピンチャソ。今度は剣が半分刺さった。ちょっと外側に刺さっているようだ。デスカベジョは1回で決めた。

===今日の一言===

 今日は雨が結構降って客席は途中から半分ぐらいになった。闘牛士は3人とも良くやった。今日は兎に角、牛が悪かった。

 カナレス・リベラが一番やる気があった。ペピンとモランテはちょっとだけしか、らしさを出せなかった。最後はアレナは田んぼのようになっていた。闘牛士は大変だ。牛が悪くてもちゃんとやらないとブーブー言われる。

 そしてサン・イシドロで活躍できないと、中堅所以下はカルテルが沢山貰えない。だからこそ活躍したいのに牛が悪い。今日は可哀想だった。しかし何とかなりそうな牛もいたような気がしないでもない。


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