*5月21日。アパリシオ、ヘスリンに、座布団の雨が降る。

コリーダ・デ・トロス。牛ーバルデフレンソ。

     フリオ・アパリシオ、ヘスリン・デ・ウブリケ、ビクトル・プエルト。

1頭目。フリオ・アパリシオ。

始めのパセで牛は右に首を振った。牛はパセの後に膝を着いて走った。ちゃんと走ったと思ったら又、膝を着いて走った。その後コッホになっていた。右前脚がおかしい。ピカはほぼ真ん中の良いところに入っている。刺し変えてちょっと前に入れた。馬から牛を離すと膝を着いた。口笛が鳴る。次のピカはさっきよりちょっと前右側だ。

 バンデリージャはゆっくりと行って角の間で刺した。2回目は早く行って角の間で刺した。3回目もゆっくり行って刺した。1本しか刺さらなかった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。アパリシオは後ろに下がりながらムレタを出している。口笛が鳴る。パラールに成っていないのに、「オーレ」のかけ声が出ている。14日と同じ様になってきた。アパリシオはまた観客に馬鹿にされている。何もしない。ナトゥラルも逃げてばかりいる。足が止まらない。剣を替える。

 スエルテ・ナトゥラルで剣刺し。ケンケンの様に左足で飛んで刺しも体が始めっから大きく左に逃げていくのでピンチャソになる。凄い口笛。スエルテ・コントラリアでまたケンケンの横からの剣刺し。ピンチャソ。凄い口笛。またケンケンで横からに剣刺し。牛の右側から左側に角度のある剣が半分入った。

 爆笑と怒りの口笛が鳴る。剣が抜けてスエルテ・コントラリアでピンチャソ。結局剣刺しが出来なくてデスカベジョを持つと、物凄い口笛が鳴りその中で1発で決める。今にも座布団が飛びそうな雰囲気だった。

2頭目。ヘスリン・デ・ウブリケ。

 牛は、出てきて左回りに1周して、それから半周ずつ行ったり来たりしている。パセは2回しかしていない。ピカは良いところに入ったが牛が膝を着いた。起き上がるが、馬に拘っている。2回目のピカはさっきより少し後ろに入った。牛はまた馬にくっついて離れようといない。

 ヘスリンはちゃんとピカドールの所に牛を持っていけなくてお前がこっちに来いとピカドールに腕を振って怒って指示を出していた。みっともないことだ。ビクトル・プエルトが出てきてキーテをする。馬のところにちゃんと持ってきて最後はメディア・ベロニカを決めた。ヘスリンとの違いを浮き彫りにするものだった。3回目のピカは1回目と同じ所に入った。

 TOROパサードでバンデリージャが刺さらない。また投げるようなやり方で刺さらない。次はようやく刺さったが、その後にさっきの刺さらなくて落としていたバンデリージャを2本拾うと、「uno dos」(1,2)と観客が声を揃えて合唱する。違うバンデリジェーロが落ちているバンデリージャを2本拾うと[tres cuatoro」(3,4)と観客が声を合わせて叫んだ。

 バンデリジェーロはいい恥さらしだ。牛が動いて止まらない。次いって2本刺さった。今4本刺さっている。次も2本刺さった。牛はブルラデーラの所に行って角を擦っている。TENDIDOS7の所で「ピッー」と、5秒以上の笛が鳴って声を合わせて[?Que pasa?」と言っていた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ヘスリン3回右手のパセをする。手は低いがパセの後半は手が上がっていってパセ・デ・ペチョの様になる。リベラ・オルドニェスも同じようになっている。いつも通りだ。クルサードしないで牛を誘っている。ナトゥラルをするがそんなに良くない。パセをしたら牛がタブラの方に行った。

 ピコだ(ムレタの先っぽで牛を誘うやり方)。全部ピコ。パセをすると全部ピコ。”たまごっち”(今スペインで流行っている)か、テレビゲームの様に「ピコピコ、ピコピコ」音でも出ているようだ。ヘスリンブームを作った人だけど所詮やってることは「ピコピコ、ピコピコ」だ。テレビゲームの好きな人は良いかも知れない。

 でもヘスリンはノビジェーロの頃は凄く良い闘牛士だった。やってることが今と全然違うことをやっていた。あの頃の方がずっとずっと良い。今の彼は、芸がないのにテレビに出てお金を稼ぐ”タレント”とあまり変わりないだろう。まぁ、それも生きるって事だぜ。おっかさん。それでも、銭の稼げる奴は幸せかも知れない。そう、それをヘスリン・デ・ウブリケ様は、お教え下さった、のだから。

 ヘスリンは右手の低いパセをやっているときに、牛にムレタを踏まれて離してしまった。剣を替えてスエルテ・ナトゥラルで牛を置いた。剣は刺さったが少し右側かも知れない。遠いので良く判らない。

3頭目。ビクトル・プエルト。

 牛は出てきてブルラデラの所まで行くが角は突き立てない。ビクトルは片膝を折ったパセをして牛をずっと観ていたが牛は違うところに行ってしまった。今左から右にパセしたら牛が膝を着いてしまった。ピカは肩のちょっと前に入った。馬から離されたときに転んで、左後ろ脚が左前脚を踏んで牛が起きれなかった。左前脚が地面を踏むことが出来て立ち上がった。

 この間、見えなくて事情が良く判っていない観客から口笛と3拍子の手拍子がなる。(牛を代えろと観客が騒いでいる)ここはTENDIDOS8なのでピカドールがどこに刺したか良く分かるのだ。(ラス・ベンタスでは、このあたりがピカドールの馬の定位置)ピカは2回目も同じあたりに入ったが、馬から離されるとまた膝を着いてしまった。牛交換。

 トリルから去勢牛が1頭出てきたら、喧嘩を仕掛けようと向かっていったが、トリルの方に向きを変えて中に入っていった。観客席から笑い声が漏れる。去勢牛は1頭取り残されてキョトンとしていて、どうしたらいいのか分からないと言うような顔がまた可笑しかった。そして退場した。

 交換した牛がゆっくりと出てきて中央に立ち止まったがカポーテの誘いに反応しない。鼻をアレナに着けて臭いを嗅いだ。良いベロニカが3回とメディア・ベロニカが決まる。牛はピカを刺されて猛烈に馬に行っている。ピカは右肩の方に入っている。肩の前だから腱は損傷されていないだろう。2回目のピカはさっきより後ろほぼ真ん中に入っている。

 始めのバンデリージャは角の間で刺した。次は牛が止まり掛けて1本しか刺せなかった。

危なかった。最後は角の間で刺した。

 テルシオ・デ・ムエルテ。牛はかなり肩に刺さっているバンデリージャを気にしている。右手でパセしているが思うように動かない。牛が闘牛士を捜して首を振っている。角がすぐ体の前に行く。コヒーダされそうになった。ビクトルは牛を適当にあしらって剣を替えた。

 この牛は右目がおかしいんだと思う。右手のパセしかやっていないがその時に、ビクトルを捜して首を振る。見えていれば不安がないので首は振らない。やばい牛だ。牛を置いて剣を刺そうとすると動いて刺せない。置き直してスエルテ・ナトゥラルで刺した。剣はちょっと右側に深く入った。牛が倒れそうでビクトルは牛の前の方に進み出て格好をつけた。

4頭目。フリオ・アパリシオ。

 牛は行き追いよく出てきて真っ直ぐアパリシオのいるブルラデーラに来た。アパリシオは自分は行かないで、バンデリジェーロにやらせている。これは臆病者の印だ。ピカは右肩寄りのちょっと前に入った。悪くはない。アパリシオは両足をようやく止めてベロニカをした。

 ただ牛が通る反対側の足は流れる。足をちょこちょこ動かすのもいつもの通り。いつものことと分かっていても頭に来る。そう彼は”コーニョ印”のTOREROだ。2回目のピカはさっきより少し真ん中に入っている。

 バンデリージャの1回目は、牛の前に廻ってきて刺した後体が回った。2回目は角の前で逃げながら1本だけ刺した。3回目は角の間で刺した。牛が追ってきてカポーテを出して離した。拍手が沸く。

 テルシオ・デ・ムエルテ。牛の前に立ってムレタを出していたが牛は動かないでジッとしていた。場所を移動して右手のパセをする。さっきとはちょっと違う感じだ。足を止めたパセが1回あった。牛を怖がっている。パセになってない。何故ならパセの時に下半身が伸び上がった様になるからだ。ナトゥラルがナトゥラルになっていなかった。

 剣を替えてスエルテ・ナトゥラルで剣刺し。またピンチャソ。またピンチャソ。またピンチャソ。アパリシオはまた駄目だった。後ろのおばさんが「アパリシオは私の友達よ」と、こんな時に言うので冗談だと思って「彼は泥棒だ」と、言ったら下の席にいた男達が大笑いしていた。おばさんは怒ったので「ごめんなさい」と、言うと許してくれた。

 下の男は「アパリシオを指差しながら「泥棒」と、言うので右手の人差し指を口の所に持っていって「しー」と、やるとおばさんは「それは何なのよ」と言う。もう、謝ったのに困ってしまう。

 しかし2列前の左側にはガナデリアのビクトリーノ・マルティンが座っているのだが彼も「泥棒」という言葉に大笑いしていた。本当は、アパリシオに金を返して欲しい気分だ。スペインのおばさんは怖い。味方に付けた方が絶対良い。特に彼女の様によく喋る人は。

5頭目。ヘスリン・デ・ウブリケ。

 牛が出てきてブルラデーラを一突きしてヘスリンが出てきてベロニカをやっている。首の振り方がおかしい。パセの後膝を着いて、すぐ向かっていった。危ない。コヒーダされそうになった。上手くかわしてパセすると牛は両膝を着いて走って、普通に走って、また両膝を着いて走った。

 変な動きをする牛だ。足も目もおかしいみたいだ。ピカは真ん中に入ったが膝を着いた。前脚がおかしい。牛がおかしいのにテルシオが変わる。空の上では雷が鳴って風が吹いてきた。

 バンデリージャはTOROパサードだが綺麗に決まった。次は右角の前で決めた。次は左角の前で決めたが危なかった。拍手を受ける。お誘いにブルラデーラに牛がぶつかって倒れる。すぐ起き上がる。

 テルシオ・デ・ムエルテ。パセの後膝を着く。ヘスリンはパセした後の手が高い。牛はまた膝を着く。風が強い。危なかったがヘスリンは上手く逃げた。風でムレタがブルブル震える。パセが出来る状態ではない。サン・イシドロは風が付き物。これを克服してこそプエルタ・グランデが出来るのだ。

 ゆっくりムレタを出して振るのだが牛が倒れる。クルサードしていない。それから誘うときもムレタを横に出している。剣を変えて剣刺しに行こうとしているのだが牛はタブラに尻を着けそうになっている。これは駄目だ。ケレンシアはタブラの所にある。前脚が揃っていないのに刺しに行ってピンチャソ。次もまたピンチャソ。

 ヘスリンは剣刺しを諦めてデスカベジョを取りに行った。観客は大きなブーイングと口笛をならして、もう1度剣刺しをするように求めた。ヘスリンの闘牛士らしくない態度に観客は怒りを露わにした。今にも座布団が飛びそうな雰囲気だ。

 前の席に座っていたおじさんが「また泥棒だ」と、言った。可笑しくなって笑っていると、後ろもおばさんが「またじゃない。ヘスリンは泥棒だけど、アパリシオは泥棒じゃない。ほんのちょっとだけ悪い闘牛士だ。」と、言った。

 本当はアパリシオよりヘスリンの方がまだましだと思うのだが・・・。しかし事実を言えば、ラス・ベンタスでヘスリンは耳を1つも取っていないが、アパリシオは94年にプエルタ・グランデしている。そういう事も含んでおばさんは言っているのかも知れない。

6頭目。ビクトル・プエルト。

 ビクトルの牛はパセで脚がおかしくなっている。ベロニカは良い。45度以内にカポーテを振っている。牛が立っているとき、右前脚に体重を掛けていないのでそこがおかしいのだろう。ピカは真ん中に入っている。右前脚がおかしい。瘤の後ろ肩の間に2回目のピカが入った。良いピカだ。

 1つ難点を言えば、ちょっと強いが、大丈夫だろう。パセに膝を着く。牛は落ち着かなく歩き回って2回目のバンデリジェーロが刺しにくがっている。アパリシオは真ん中に行ってバンデリジェーロの後ろに立っていない。2人目はようやく刺した。3人目は逃げながら2本刺した。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ビクトルはようやく牛を落ち着かせてパセを余裕を持って出来るようになった。右手の低い長いパセを続けてオーレを合唱させている。拍手が沸く。ビクトルは尻の後ろに右手で持ったムレタを持ってクルサードして、牛の前にムレタを出して誘うが牛は来ない。もう1度ムレタを尻の後ろに隠して角の間に入っていってパセした。

 ビクトルはナトゥラルのパセを繋いで拍手を受けている。コヒーダされそうになったが何とか逃げて無事だ。ビクトルのパセはピコだがパセを繋いでオーレを貰っている。しかし、TENDIDOS7は口笛を吹いている。左手にムレタ、右手の剣を添えてアジュダード・ポル・アルト気味のパセを右に左に繋いだ。スエルテ・ナトゥラルで牛を置いてピンチャソ。またピンチャソ。3回目もピンチャソ。4回目に変なところに3/4剣が入った。

===今日の一言===

 アパリシオが帰るとき口笛が凄くなった。出口近くに警官が2人待っていた。客席から座布団の雨が降って警官の盾に守られて退場。ヘスリンが帰るときも口笛が凄くなった。出口近くで警官が待っていてヘスリンを向かえに来た。座布団の雨が降っていた。が、ヘスリンは警官に向かえに来ないようにさせ、道をあけるように手で合図した。座布団の雨の中退場。

 結局、拍手の中退場したのはビクトル・プエルトだけだった。ヘスリンに対して観客が怒っていたのはファエナではなく、剣刺しをせずにデスカベジョをしたことに対してだった。男じゃない、闘牛士じゃない、と言うわけである。


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