*5月18日。エウヘニオ・デ・モラ、コンフィルマシオンを耳1枚で飾る。

コリーダ・デ・トロス。牛ープエルト・デ・サン・ロレンソ。

      セサル・リンコン、エンリケ・ポンセ、エウヘニオ・デ・モラ。

      コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ。

1頭目。エウヘニオ・デ・モラ。

 エウヘニオ・デ・モラのコンフィルマシオン。牛が出てきたが脚がおかしい。ブルラデーラにいるバンデリジェーロのカポーテに反応して近づいてきたと思ったらタブラを越えようとした。場内どっと沸く。あまり良い牛ではない。すぐ膝を着いたりする。ピカは右肩と背骨の間に入った。2度目のピカは左肩と背骨の間に入った。首のこぶの後ろだ。

 始めのバンデリージャは牛の頭の前でしっかりと刺した。コンフィルマシオンのムレタと剣、カポーテの交換の儀式が終わった。パドリーノはセサル・リンコン、テスティーノはエンリケ・ポンセ。

 テルシオ・デ・ムエルテ。エウヘニオは右手で片膝を折ってするパセから始めた。次に振りの長い右手の良いパセ、ナトゥラルと繋いだ。手の低いナトゥラルだ。パセ・デ・ペチョも体の近くから牛を誘い角度を変えて胸の下を通している。闘牛場が沸く。

 牛は動くが、パセの後に膝を着いたりして盛り上がらない。動きが悪い。パセを繋いでムレタを出して牛が来ないときは、ムレタを後ろに隠してから牛の前に出す。その時、クルサードしていないのが残念だ。剣刺しは、スエルテ・ナトゥラル。1回で刺した。が、剣が牛の左の腹から出ている。これじゃー駄目。

2頭目。セサル・リンコン。

 セサルの牛は角がちんば。右が下がっているが、角先は両方とも上を向いている。この牛はパセの時、上に跳ねる。牛の頭がセサルより高くなっている。ピカドールの馬に、牛を持っていくときに両膝を着いた。アンデルソンのピカは良いところに入っている。あっ、ちょっと左肩よりだ。2回目のピカも同じ所に入った。血が左足を伝わって落ちている。

 アドルフォのバンデリージャは牛の頭の前で刺している。刺し終わった後も、両手は頭の上に持っていくので観客にアピールする。2度ともそうだった。満場の拍手。

 テルシオ・デ・ムエルテ。セサルの牛はあまり良い牛ではなかった。ファエナの始めは牛をアレナの中央に持っていって長い距離を取って、牛を誘った。体の後ろに隠したムレタを前方の牛めがけて出す。

 ここで、牛と、ムレタと、セサルの体は、直線上に並ぶ。この時のセサルの体の形は、牛の方から言うと、右手はムレタを持って体の前に出されている。重心は左足にあって、右足は後方に真っ直ぐに伸びて爪先だけがアレナに着いている。これが牛を誘うときの基本形だと教えてくれたのがセサル・リンコンだった。

 91年のファエナを思い出すものだった。途中から少し物足りないファエナになったのは牛が悪いせいだ。剣刺し。3回目でタブラに牛がくっついている状態で刺した。牛はちゃんと立っていられなかった。黙っているとタブラの方に行ってしまう。最後までやる気のない駄目牛。

3頭目。エンリケ・ポンセ。

 ポンセの牛が出てきたが、止まらないでアレナをグルグル廻っている。カポーテの誘いにものらない。ピカドールが定位置に着く前に牛が馬に角を突いた。右、左の肩にピカが入った。ポンセはテルシオ(アレナを中心から3つに分け、内側から、メディア、テルシオ、タブラと言う。2本引かれている白線の内側で、しかもメディアの外側)に牛を置いて、牛から距離を取って自身はメディアにいる。

 カポーテの真ん中にある折り目がパセの時、45度以上ある振り方になっている。con farta.パセも悪ければ牛も悪い。口笛が沢山吹かれる。緑のハンカチを観客が振っている。牛を交換するように要求しているのだ。3回目のピカが入ってもプレシデンテは何の指示も出さない。替えようか、どうしようか迷っているようだ。牛は替わらず、テルシオが替わった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。いつもの膝を折って右手でするパセから始めた。場所を移動して距離を取った。右手を尻の所にやりムレタを垂らし、ゆっくり牛に近づいていった。ムレタを出して牛を誘う。TENDIDOS7がポンセのムレタの出し方に不満の口笛を吹く。ポンセは自分のやっていることが解らないのだ。

 ポンセは体の横にムレタを出して牛を誘っている。ムレタは体の前じゃありませんか、ポンセさん。牛、ムレタ、体が一直線。これが闘牛の基本でしょ。こっちの勝手な命名だと、さしずめ、”闘牛の三位一体論”とでも、しておきますか。ポンセは、ラス・ベンタスでは嫌われている様だ。口笛がずっと吹かれた。剣刺しはスエルテ・コントラリアでピンチャソ2回。デスカベジョ2回。

4頭目。セサル・リンコン。

 セサルの牛は右の角が下がっている。角先は両方とも上を向いている。ピカは左肩寄りの首の後ろに入っている。アントニオがピカを刺した。アドルフォが馬から牛を離した。次のピカは右肩上のあたりだ。

 牛がコッホになっている。カルロス・アビラのバンデリージャは1本外す。牛は動きが悪くなった。左肩からかなり血を流している。体を伝わって流れる血は左足の膝から地面に滴っている。動きが悪い。パセが出来そうにない。アントニオのピカはそんなに強くなかったのにな。おかしい。

 テルシオ・デ・ムエルテ。牛が悪く全然パセが出来なくて剣刺し。スエルテ・コントラリアで1回ピンチャソ。牛がタブラの所まで行って座ってしまった。結局マヌエルが小刀で頸椎を切る。この牛で一体何が出来るのだろう。どんな闘牛士が出てきてもおそらく何も出来はしないだろう。あぁ、セサルは牛に恵まれない。凄い口笛。

5頭目。エンリケ・ポンセ。

 ポンセの牛はカポーテの動きに反応するが、ブルラデーラの所に行って頭を左右に振るが角は立てない。左肩にピカが入っている。牛はコッホだ。右足がおかしい。マリアノが今危なかった。ピカはまた左側に入った。当然だ。右足がおかしいのに右肩に刺す奴は、ものを知らない馬鹿か、技術の未熟な奴だ。勿論ポンセの所にいるピカドールは馬鹿でも未熟者でもない。とても良いピカドールなのだ。

 バンデリージャは牛の頭の前でしっかりと刺していた。刺した場所もいい。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ポンセはいつもの様に膝を折っての右手のパセから始まる。牛が膝を着く。ポンセは左手の良いパセが3回続いたが、また膝を着いた。ポンセはパセの時、腰が動く。ピコでやっている。ポンセはいつもちゃんとしたパセをしない。ある人は、「いつもちゃんとしないんじゃなくて、出来ない人なんだ」と、言っていた。その通りかも知れない。ピーピー口笛を吹かれる。剣刺しはスエルテ・コントラリアでメディアまで行かない位に刺さっている。角度はある方だ。デスカベジョ3回。口笛。

6頭目。エウヘニオ・デ・モラ。

 エウヘニオは両膝を着いたラルガ・カンビアールを2発決めて場内を沸かす。「オーレ。オーレ」右手、左手と使い分けた。考えてみれば凄い事だ。普通ラルガ・カンビアールは右手なら右手と、続ける場合は同じ手を使うものだ。でもエウヘニオは違った。

 ベロニカも良い。これから何かが起こるかもかも知れない。牛は反対の位置にいるピカドールの方にいてピカを受けた。横から見ると良い位置に刺さっているように見える。遠くなので良く判らない。牛は馬にくっついたまま離れようとしない。牛は両膝を着いた。2回目のピカは左肩の方に寄っているようだ。

 バンデリジェーロがバンデリージャを打った後、コヒーダされそうになってタブラを越える。頭の前で刺していた。牛が止まらない。ポンセがカポーテを牛に持って行かれる。バンデリージャ次1本。次も1本。

 テルシオ・デ・ムエルテ。エウヘニオは両膝を着いて牛を誘う。場内どっと来る。右手で持ったムレタでパセ。1回。裏側でパセ。そして膝を着いたままで1回転半のパセをした。観客は驚きの声を上げると共にオーレの声を大きく出した。闘牛場は興奮の中に入っていった。

 エウヘニオは中央に走っていて距離を取って牛を誘った。エウヘニオは牛の角の間に入っていて右手のムレタを出す。牛が来る。手の低い長いパセが何回も決まり、体のすぐ近くを牛を通してパセ・デ・ペチョを決めた。彼がパセ・デ・ペチョで1つながりのパセが切れると、観客は喝采を送った。

 エウヘニオの良さはパセの時に牛を体の近くを通す事と、パセ・デ・ペチョの時の牛の動線が素晴らしい曲線を描くことだ。勿論、牛は体の近くを通りまさに胸の下を牛の角が通っていく。エウヘニオは牛の角の前に立っても逃げなかったし、落ち着いてムレタを出して牛をパセしていた。角と角の間に腰が入っていて、ゆっくりと左手を出して体の近くを牛の角が通っていった。その為に彼の闘牛服の腹には牛の血が付いていた。

 剣を替えて最後のファエナに入った。マノレティーナだ。左手にムレタの端の布を持って、右手にはタキージャドール(ムレタに付ける木の棒)に真剣を添えて持っていた。タキージャドールのネジ側の端は彼の尻に隠れていた。それだけ牛に出すムレタの面積が少なくなることになる。だからパセの時に、牛の角は彼の腹から5cmも離れていなかったろう。ムレタから牛が出てくる。そういうパセだった。

 隣にいたおばさんは恐怖で声を上げながら見ていた。マノレティーナを1回2回3回と続けた。最後は体にムレタを隠す様なパセをして牛を剣がすぐ刺せるように置いた。後は剣を刺せば良かった。完璧に近い剣刺しだった。耳1つ。当然だ。口笛を吹く人がいたがそれは理解できない事だった。

===今日の一言===

 セサルは牛に恵まれなかったと言ってもこれじゃアフィショナードに忘れられる。でも1頭目の牛の時に見せた距離を取ってからの誘い方は91年を彷彿した。

 ポンセはいつも同じ。パセの時牛が体の前を通過すると腰が反対の方に逃げて行くし、脇が開いてパセする。クルサードしないことが多い。みんな悪いことばかりだ。それでも喜ぶお客さんがいるのだから、これはそれで良いのかも知れない。今日はセサルよりはがんばっていた。

 エウヘニオは期待した通り良かった。コンフィルマシオンで耳1つ。彼は自分の見せ方を知っている。派手なパセで観客の気持ちを引きつけて、後は自分本来のパセをする。剣刺しも上手い。顔を見ただけで野心を感じさせる。これからはホセ・トマスエウヘニオ・デ・モラの時代になるのかも知れない。


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