*5月17日。ホセ・ルイス・ボテだけが闘牛をやった。

コリーダ・デ・トロス。牛ーエルナンデス・プラ。

      ホセ・ルイス・ボテ、ラファエル・ガスタニェータ、ルイス・マリスカル。

 牛はエルナンデス・プラから、コンデ・デ・ラ・マサに、代わっていた。

1頭目。ホセ・ルイス・ボテ。

 牛はブルラデーラにいるバンデリジェーロのカポーテに誘われていたが、タブラ(アレナを囲む柵)を乗り越えようとして失敗した。ボテが両足を揃えたパセを1回やったが遠くに離れていってしまった。ボテはその位置で牛の来るのを待っていた。バンデリジェロがボテに方に牛が行くように仕向けた。ベロニカは良かった。決めのメディア・ベロニカも足をしっかり止めて決まった。

 パセで牛の前脚がコッポになっている。ピカは、右、左と1回づつ軽く突かれてから真ん中のちょっと右に入った。左脚がおかしい。軽く突かれた左肩にダメージがあるみたいだ。ピカは左肩上に入っている。完全にコッポになっている。ガスタニェータのベロニカは体の近くを通してメディア・ベロニカを決める。

 テルシオ・デ・バンデリージャ。始めは牛の頭の前。次は頭の前。3回目も頭の前。しっかりと刺さった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ボテは良いパセを右手で繋いだ。ボテはまた右手で良いパセを繋いだ。ムレタの振りの長いパセだ。右手に持った剣を、左手に持ったムレタに添えて、アジュダード・ポル・アルトからナトゥラル。まあまあ良いファエナだ。少し盛り上がりに欠ける。

 ボテはテルシオの所でスエルテ・ナトゥラルで構え剣を刺した。とても良い剣刺しだっだ。満場の拍手に応えて挨拶をした。今のファエナは闘牛士の粗が見えにくいファエナだった。可もなく不可もなく。但しやっていることは正しい事をやっていた。

2頭目。ラファエル・ガスタニェータ。

 ガスタニェータ(ペルー人)はベロニカの時に必ず牛が通る側の足を決めてから反対側も足を決めるのでだらしない。これは二流か三流のパセだ。キーテはなかなか良かった。ピカは首の後ろ、肩のあたりに刺さっている。チクエリーナは足を一歩引いてやっている。

 今度のピカは左の肩に近いところに刺さった。馬から離そうとカポーテを振ると、牛は角からアレナに座ってしまった。口笛が吹かれる。マリスカルのチクエリーナを回転しないでやり、後ろにいる牛を誘ってカポーテの裏側のパセ。チクエリーナ、裏側のパセ、メディア・ベロニカ。オルテガ・カノ風の低いチクエリーナだった。満場の喝采を受ける。

 始めのバンデリージャは牛の角の間、次は左角の先、最後は角の間で刺された。ブリンディースは国王の母親に捧げられた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。膝を折っての右手のパセ。膝を伸ばしている方の足が流れる。クルサードしながら手を体の前に出して牛を誘う。右手でのパセは手が低い。牛にムレタをはらわれる。牛を誘う時にピコ(スペイン語で先っぽの事。ムレタの先で誘う事)になっている。ナトゥラルは良かった。そんなにピコになっていない。ナトゥラルの時も手がやはり低い。

 牛を誘うときも体の後ろから出して来ている。パセをやっている内に段々脇が開いて来ている。パセ・デ・ペチョの時に完全に脇が開く。口笛を吹かれている。ナトゥラルは概ね良いが1/3位ピコになっている。パセで牛を置いてスエルテ・ナトゥラルで剣刺し。牛の置き方は最高だ。カイーダ。剣が直角に刺さっている。口笛を一杯吹かれた。盛り上がりも何にもない。可哀想だがスペインではやっていくのは難しいだろう。

3頭目。ルイス・マリスカル。

 マリスカルは、トリルの前に行って両膝を着いた。門が開く、牛がでてくる、カポーテを持った右手を頭の上で廻す。ラルガ・カンビアールだ。ベロニカに移りパセしてると、カポーテを牛に持って行かれる。なかなか良いベロニカだった。牛は右前脚がおかしいみたいだ。

バンデリージャは2回続けて1本づつ刺した。後ろのおじさんが「レホネオ・アジェール」(馬上闘牛は昨日だ)と、言った。タイミングの良いヤジだ。バンデリジェーロはやる気がない。2回続けて牛の前を通っただけだ。凄い口笛だ。最後は2本刺さったがコヒーダされそうになってブルラデーラの中に逃げていった。牛は頭っからぶつかった。ブルラデーラが揺れた。場内が沸く。ブリンディースは国王の母親に捧げられた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。アレナの中央に行って牛を誘う。牛が走り出した。体の後ろにムレタを出してパセ。同じ位置に立ったまま足を動かさず、体の前でパセ。同じ位置で体の後ろでパセ、前でパセした。ちょっとピコ気味の右手のパセが繋がってパセ・デ・ペチョ。トゥリンチェーラから右手の低いパセが2回3回右手のパセ・デ・ペチョ。牛の前で見栄を切る。場内拍手。

 ナトゥラルの時危なかった。手は低いが手首は返してる所が良くない。良いパセ。牛を右手のパセで体の回りを廻す。ポンセ風のモリネーテを1つ。シルクラール。マリスカルは牛を動かす。スエルテ・コントラリア。カイーダだ。

 牛は咳をするみたいにして血を吐き出す。もんどり打って後ろ脚から崩れた。凄い口笛だ。剣刺しは非道い物だった。あまり見たことがない人だとおそらく良い剣刺しに見えるのかも知れないが、あれをしてはここでは許して貰えない。挨拶。同時に口笛が吹かれた。

4頭目。ホセ・ルイス・ボテ。

 牛はゆっくりでてきて、突然走り出してブルラデーラの近くに行く。ボテのカポーテは、パセの時開く面積は広いが、カポーテの真ん中にある折り目は45度以下になっている。ピカは左肩前に刺さっている。ベロニカは足、腰が少し揺るずれる。ピカは牛に当たって木の先が折れた。替えて左肩前に入る。バンデリージャの後のキーテが良かった。牛をバンデリジェーロから離して助けた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。牛が良くない。思うように動かない。クルサードしてナトゥラルで良い形で誘う。牛は少し動くが良い動きが出来ない。パセらしいパセにならない。牛が段々動いてきていい感じでナトゥラルが出来て来た。腹を前にしてクルサードして右手で牛を誘いパセ。

 左腰を牛に向けて誘い右手でパセ。角の間に入っていって右手を出す。牛が来る。が、いい具合に動かない。ボテは牛の前で少しづつ移動して手を出している。あまり良くない。ボテはやはり歩き方がおかしい。左足がおかしい。92年の脊髄損傷の後遺症なのだろう。あの時は、半身不随で再起不能と言われた。そんな大怪我を乗り越えてまた闘牛場に戻ってきたのだ。

 去年は5月22日の満月の夜に、剣刺しを失敗してコヒーダされて絶叫しながら泣き出した。満月の夜に泣いて似合う男はホセ・ルイス・ボテ位だろう。スエルテ・ナトゥラル。脚を揃えてから、牛が動いた。ちゃんと刺さらない。2回目は良いところにちゃんと入った。

5頭目。ラファエル・ガスタニェータ。

 ガスタニェータの牛は角が上を向いていて頭を横にプルプル震わせている。ピカは左肩上に入った。左前脚がおかしい。2回目のピカも同じ所に入った。馬から牛を離すと牛は両膝を着いた。マリスカルはカポーテを裏返しにしてキーテを始める。最後はラルガ。

 1回目のバンデリージャは投げ捨てるようにして刺した。1本しか刺さっていない。2回目は牛の頭の前で刺した。次も良かった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。右手の低い良いパセが3回続いた。パセ・デ・ペチョはピコになっている。左手で誘って来なくて、体の後ろにムレタを隠してまたムレタを牛の前に出している。が、牛がなかなか動かない。この牛はもう少し動きそうなものだが、彼の技量の問題の様だ。

 彼は牛の事を良く解っていないようだ。退屈だ。剣刺しは良い。デスカベジョが、上手く出来ない。ムレタで頭を下げさせると、頭は動かさないのに怖がってしっかり刺せない。3回失敗した。牛が倒れそうなのにムレタを振っている。もう駄目だ。一生下積みの闘牛士かも知れないぞ。

6頭目。ルイス・マリスカル。

 マリスカルはのまたトリルの前に行った。両膝を着いて胸の前で十字を切った。ラルガ・カンビアール。この牛は右目が悪いのかも知れない。良いベロニカが2発決まる。前脚コッポになっている。ピカは左肩上のあたりからちょっとずれながら強く刺している。やはり両膝を着いた。2回膝を着いた。また左肩を刺した。下手くそだ。

 バンデリージャは頭の前で刺している。

 テルシオ・デ・ムエルテ。今度のファエナはナトゥラルから始まるみたいだ。クルサードした手の低い良いナトゥラルだ。牛を動かせない。良い形で牛を誘うが、これがピコになっている。要するにムレタの先っぽになっている。良くない。マリルカルはやろうとしている意図が良く解らない。牛を良く知らないのかも知れない。どうも良くない。スエルテ・ナトゥラルからの剣刺しはカイーダ気味に刺さったので取ってしまった様だ。2回目スエルテ・コントラリアで3/4入った。

===今日の一言===

 ボテが何とか形になった。ガスタニェータは論外。マリスカルはやる気だけは見えた。カポーテは良かったが、牛の動きを勉強した方が彼の為だ。ラス・ベンタスは厳しい。甘くない。


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