*5月12日。女闘牛士のスペイン闘牛史上歴史的な正闘牛士確認式。

コリーダ・デ・トロス。牛ーロウルデス・マルティン。

      クーロ・バスケス、ダビ・ルギジャーノ、クリスティーナ・サンチェス。

      コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ。

 闘牛始まって以来の歴史的な事であった。それは”女闘牛士”が、始めてコンフィルマシオンを受けることだ。タキージャ(切符売り場)にはノー・アイ・ビジェテ(切符は売り切れ)と書いてあった。

1頭目。クリスティーナ・サンチェス。

 クリスティーナ。牛はゆっくりと出てきた。バンデリジェーロのカポーテの誘いに乗らない。1度ブルラデーラに行って、他のブルラデーラに行き角をたてた。ズブイ(競馬用語で、反応の悪いこと)牛だ。キーテの時、クリスティーナがピカドールの方に牛を持ってくると両前脚の膝を着いて倒れた。フェラの声が出ている。ピカは左肩の方に少しずれている。2回目のピカは肩骨より後ろの方に刺さった。

 バンデリージャが終わり、コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバの、剣とムレタと、カポーテを交換する儀式が終わる。拍手喝采の中、女闘牛士が認定された。闘牛の歴史に新たな1ページが加えられた。勿論、スペイン闘牛史上初。

 テルシオ・デ・ムエルテ。バンデリージャは6本刺さっている。クリスティーナはアレナの中央に行って、観客にブリンディース(牛を捧げること)をしてモンテーラ(帽子)を投げた。沢山の拍手の中、モンテーラがちゃんと上を向いた。どっと来る。それだけで闘牛場は興奮に包まれた。

 ラス・ベンタスといえども女には甘いようだ。腰は動く、足は止まらないのに観客は喜んでいる。クルサードしてパセをしていない。ナトゥラルの時、脇が開きすぎている。牛がパセの後止まらなくなってきた。クリスティーナは落ち着いて牛を置こうとしている。今までのパセがクルサードしていなかったが、最後の方はクルサードしようと努力している。

 剣刺し1回目はピンチャソ。去年のような刺し方で、腰が引けて体が左に逃げていく。2回目もピンチャソ。今度は左手のムレタの振り方が悪く牛の頭に両手をはらわれた。3回目は刺さったが肺の方に剣が入っていった。これは非道い剣刺しだ。口から血を吐いて牛が倒れた。物凄い口笛とブーイングだ。終わった後、クリスティーナが、挨拶をしようとしたがTENDIDOS7が凄い口笛を吹いて抗議し阻止した。

 2頭目。クーロ・バスケス。

 牛はゆっくり出てきて中央に行く。それからブルラデーラに行って逃げようとするが、バンデリージャがカポーテを振るとそちらに向かっていった。首を振ったがブルラデーラには当たらなかった。バンデリジェーロが、カポーテでパセを何回かしたが牛の動きが変だ。

 クーロ・バスケスがベロニカをするが、パラール(足を止めたパセ)が出来なかった。ピカドールが出てきてキーテに行こうとしたらカポーテを牛に持って行かれた。クーロ逃げる。ダビ・ルギジャーノが助けたが、その時に前脚の膝を着いて牛が倒れた。ピカは牛の少し左側に入った。左肩の少し前だ。馬から牛を離そうとしたら牛が倒れた。これで、牛が交換になった。

 牛はトリルから出てきて、ゆっくり右回りに移動する。クーロのベロニカはパラールになっていない。ピカは左肩の上に入ってしまった。これは良くないピカだ。ピカドールはさらにピカを牛に強く刺している。非道いもんだ。クーロはキーテを自分でやらずにバンデリジャに任せている。

 次にクーロは自分でやろうとしているが、自分は動かずにピカドールを牛の近くに来るように指示した。さっきから観ていると始めからやる気があるとは思えない。ピカをまた同じ所に刺す。やはり、肩と繋がっている腱が損傷しているようだ。前脚が破行している。

 バンデリージャ1回目は1本しか刺さらなかった。その後二人のバンデリジェーロが3回続けてバンデリージャを外す。観客は呆れている。闘牛士が闘牛士なら、バンデリジェーロもバンデリジェーロだ。最低の闘牛になりそうだ。4回目も駄目だ。何も出来ない。コーニョ。バンデリージャは結局4本しか刺さっていない。ようやくテルシオが替わる。もう呆れる。

 クリスティーナからクーロに、ムレタと剣が返され、カポーテがクーロからクリスティーナに戻された。これで、コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバが完了した。

 テルシオ・デ・ムエルテ。クーロ・バスケス何も出来ない。何もない。パラールがどうのとか、そう言うレベルの問題じゃない。

 話にならない。コリーダ・デ・トロスじゃなくて、コリーダ・デ・クーロだ。

 クーロは牛から逃げる為に走り回っている。今の彼は男じゃない。恐怖から逃げる逃亡者だ。彼の懐に入っているのは、命より価値のないものだ。それは、コラソンでもなく、正義でもない。冷や汗と懐から溢れ出んばかりの”恥知らず”が沢山詰まっている。男の中の女。クーロ・バスケスここにありぃー。イホ・デ・プータ。

 剣刺しもピンチャソだ。何も出来ない。何もしない。剣刺しの時に、完全に体が左に逃げていく。又ピンチャソ。次も又ピンチャソ。隣のおっさんがこんなに逃げていると仕草して笑っている。又ピンチャソ。同じ。又同じピンチャソ。今度はメディア。牛の肩に刺さった剣の角度が直角に近い角度で刺さった。全て最悪。物凄い口笛とブーイングが闘牛場に鳴り渡った。

 断言しても良い。これも闘牛だ。そうこれが、クーロ・バスケスだ。これはハイレベルだ。最低のマックスだ。全てハイレベルで最低を記録した。素晴らしい日だ。この闘牛を観ている自分が今までよりずーと素敵に思えるのだからクーロ・バスケスはありがたい。

3頭目。ダビ・ルギジャーノ。

 牛は逃げてばかりでなかなかパセが出来ない。ダビが3回良いベロニカをやった。ピカは、右肩前の首に刺さった。刺しなおして真ん中首の上に入れた。キーテで牛が転びそうになったが転ばなかった。観客が牛を替えろと言っているが、これはピカドールの刺す場所が悪いから牛が駄目になったものだ。

 テルシオ・デ・バンデリージャ。牛が落ち着かなく止まらなくなった。TOROパサードでバンデリージャを刺す。ブリンディースは国王の母親バルセロナ侯爵夫人に捧げられた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ダビは自分の美学の中で闘牛をやろうとしている。今の1番始めのパセは、ちゃんとクルサードしてムレタを前の方に出してやっていた。右手のパセは、足を開いて手の低いパセで良かった。アジュダード・ポル・アルトをやろうとしたが、牛に突かれそうになって堪えきれずに体が動いた。

 ナトゥラルは、脇が凄く開いている。物凄い口笛が吹かれた。牛を誘う時ムレタを横に出したまま牛に近づいていく。彼の体は角の間に入ってクルサードしているが、ムレタはずっと出したままなので同じ事だ。スエルテ・コントラリアでピンチャソ。又ピンチャソ。前脚が揃ってない状態で後ろ足も前後に開いている。剣刺しが決まらない。落ち着いてやればいいのに何を焦っているのだろう。剣は刺せなくてデスカベジョを持ってきた。刺す前に牛が座った。

4頭目。クーロ・バスケス。

 ブルラデーラの前で牛を何回かパセするがパラールになっていない。おまけにカポーテを牛に持って行かれてコヒーダされそうになった。クーロはタブラを越えて逃げた。今度も駄目そうだ。牛は何度かブルラデーラの所で角を突き上げている。パセで右前脚の歩様がおかしい。

 ピカは左肩の骨の上に刺さっている。キーテで馬から牛を離したら、左脚が完全におかしくなっていた。左肩の腱が損傷した。ピカドールが悪い。そうする事をクーロが指示したとすれば1番悪いのはクーロだ。今度のピカは左肩の前の方に刺さっている。ますます左脚が悪くなる。牛を替えろと観客は訴えているが、牛が悪いのじゃない。ピカドールが悪いのだ。

 テルシオが変わる。ムレタで何も出来ない。出来なくしたのはピカドールだ。左脚の球節に力が入らない。ぶらんぶらんの状態だ。クーロのパセに又口笛とヤジの嵐。それにもめげないのがクーロだ。クーロ・ロメロと同じだ。

 剣刺しは、又逃げるような剣刺しだ。早く家に帰りたいと、腰から下が言っているようだ。手だけの剣刺し。当然ピンチャソが続く。ようやくはずみで剣が半分入った。でも背骨の右側から入り、左側に向かって刺さっている。カイーダだ。横から見ると直角に刺さって見える。こういう剣が入ると牛は口から血を吐いて倒れるが、そう言う風になった。非道い剣刺し。

 TENDIDOS7からプレシデンテに牛を替えなかったことに対して、抗議の口笛が吹かれる。しかし替える必要はなかった。プレシデンテは正しかった。牛が悪いのではない。牛を駄目にしたピカドールが悪いのだから。

5頭目。ダビ・ルギジャーノ。

 牛はゆっくり出てきてバンデリージャの出すカポーテにこだわっている同じ場所にいる。ブルラデーラの所から動かない。ダビは上手くパセが出来ない。ピカで首を1回突いたが外れて、肩の後ろの中央に刺した。ちょっとだけ後ろだ。次のピカは両肩を結ぶ線と背骨が出会う所に入った。ここだノルマルで、基本になるところ。

 一対目のバンデリージャはTOROパサードで刺す。次は逃げながら1本首の上に刺す。最後もTOROパサード。

 テルシオ・デ・ムエルテ。牛をタブラから中央に持っていった。手の低いパセをすると牛がすぐ倒れる。牛に気を使いながらのパセだ。手の高いパセだと倒れないが、良いパセにはならない。ダビの体の線も綺麗に反らない。右手の低いパセが何回か決まって最後は左手のパセ・デ・ペチョ。脇が開いているが拍手を受けている。手の低いパセを何度かやったがそれだけだ。

 ナトゥラルはピコだ。ダビは興奮しているがそんなに良いパセではない。パセ・デ・ペチョをしようと刺そう時、脇が開いている。牛にムレタを踏まれてパセをやり損なった。スエルテ・コントラリアで立って体が動いた。刺した剣がずれて肺に入った。角度がある。カイーダ。かなり口笛を吹かれている。牛はもんどりうって倒れて苦しがって血を吹き出している。

 牛は拍手で退場したが、ダビはいっぱい口笛を浴びる。ダビは首を振って理解できないでいる。彼に対して送られた少しの拍手に、手を挙げて応えた。

6頭目。クリスティーナ・サンチェス。

 牛がゆっくりトリルから出てきた。頭を左右に振るわせながら走り出した。クリスティーナはベロニカの時、腰が動く。しかし観客はオーレの声を上げ拍手を送る。が、そんなに良いパセではない。牛をアレナの真ん中に持っていった事は良い。チクエリーナをするが足を一歩横に引く。観客は本気で喜んでいるようだ。

 これが本当にラス・ベンタス闘牛場だろうか。女には甘い。大甘だ。信じられない。くだらないパセばかりなのに。これがもし男だったら、そこら中から口笛が吹かれている筈だ。スペインでは女は甘やかされているのだろうか。こんなのじゃ上手くなれないよな。ピカは右背の上に入った。牛が前脚の膝を着いてしまった。今度は左肩、首よりに刺さった。牛又倒れる。牛交換。

 牛がトリルの中で立ち止まっている。出てきてアレナの真ん中に止まった。ケレンシアが、そうゆうことなのかも知れない。パセをすると反応がおかしい。癖がある牛だ。これは右目がおかしいかも知れない。牛が又おかしいすぐ倒れる。ピカはちゃんと中央に入っている。又倒れる。牛交換。

 牛が出てきてブルラデーラに角を突いたら、ブルラデーラの左半分の木が取れた。どっと沸く。牛はカジェホンの中には入らなかったが、後ろにいた人が逃げた。ラス・ベンタスでブルラデーラが壊れたのを観たのは初めてだ。ここのは頑丈に出来ているからだ。牛は軽く首を振っただけだったが、丁度良いところに入ったのだろう。

 クリスティーナがベロニカ中に足を滑らせて転んだ。幸い牛は来なかった。この牛の角は上を向いている。ピカは左肩の後ろに入って、場所を変えて中央の首の後ろに刺した。ピカは左肩の上に入った。ピカドールは良くない。下手くそ。牛がすぐ前脚の膝を着く。この牛は出てきた時は良い牛だと思ったがどうも良くない。これはピカのせいかどうか今は解らないが、ピカドールの所まで牛を持っていくキーテの時からおかしいので、ピカのせいではないだろう。

 バンデリージャは変なところに刺さった。首、右肩とパセのやりにくい所だ。ブリンディースは彼女の母親に捧げられた。

又、さっきのブルラデーラが角の一突きで外れかけて場内がどっと来た。クリスティーナが牛を真ん中に持ってきてこれからファエナが始まる。2回目のパセで牛が膝を着いてしまった。ムレタが角ではらわれてしまう。近場で牛を誘っていたが来ないので、距離を取ってから少しづつ近づいて牛を誘う。方向を変えてパセしようとしている。ナトゥラルでクルサードして誘った。危ない。コヒーダされそうになる。

 ダビ・ルギジャーノは、クリスティーナ見たいにクルサードして体の後ろからムレタを持ってきてパセしなかった。そこの部分をクリスティーナはちゃんとやっている。牛の角の前に立って、体の後ろから右手でムレタを出して何度も誘うが動かない。角が動いて危ないのに、クリスティーナは堪えてからパセした。

 観客に大いにアピールした。立ち上がって拍手を送る人が結構いる。クリスティーナ逃げない。牛の前で角が動いても逃げない。1回1回丁寧にムレタを体の後ろに隠してから、牛の前のムレタを出している。やることをやっている。拍手を沢山貰う。

 まさかと思うが、耳が出そうな雰囲気だ。嫌な感じだ。牛が駄目でパセが出来ないでいる。それで、牛の前に立って見せたりして努力した。しかしこれは耳の価値はない。ブエルタもない。精々挨拶程度だ。

 剣刺さらない。3回ピンチャソで、デスカベジョ4回目で決まる。クリスティーナは口笛を吹かれたがブエルタを始めている。とんでもない勘違いだ。彼女は冷静に判断できないのだろうか。他の田舎の闘牛場で散々甘やかされてやって来たからしょうがないのか。女は駄目だ、とは言わないが、それを許す男が問題だ。そんなに良くなかったのにな。??????

 

===今日の一言===

 クリスティーナ・ティエネ・コーニョ、クーロ・タンポコ・ティエネ・コーニョ。

 

追記。

 後日聞いた話では、テレ・マドリーの闘牛アナウンサーで、TV中継の総責任者のミゲル・アンヘル・モンチョリが、アレナから引き上げてきたクリスティーナ・サンチェスに「どうしてブエルタ(場内一周)したんだ」と、質問するとクリスティーナは「だって私はそれだけの価値があると思うわ。お客さんだってそれを望んでいたわ」と言った。モンチョリはそれ以上質問しなかった。

 それ以上言えないよね。分かってないんだから、彼女は。

 ペーニャのメンバーの寿美さんは早めに闘牛場から出てきたのでブエルタしたことを知らなかった。「ブエルタした」と言うと、彼女は「嘘」と言ったきり絶句した。


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