体 験 記

1999年6月1日

更新2005年2月28日

1999年6月1日

[1]プロローグ

 私はバンコクで約1年タイ語を勉強した後、1995年4月頃から語学学校で知り合った日本人の勤務する日系企業(タイ人従業員約15人)で、取材をすることになりました。その会社はちょうど工場をバンコクから地方都市に移したところでした。あるとき会社の備品を買うため家具屋へ行ったときのことです。「この台を下さい」と言ったら、店員から「税金(日本の消費税に当たりますが、タイでは付加価値税と言っている。基本的に同じ)をつけるか。税金を付けるのならこの値段、税金を付けないのならこの値段」と言われ一瞬なんのことかとポカーンとしてしまいました。そこで「税金を付けないものは脱税するのか」と聞くと微笑んでいた。またあるときレンタカーを借りたとき「領収書は普通のでいいか」と聞かれた。どんな領収書か見ると、日本では経費と認められる記載内容(受取人、その住所、支払人、金額、領収年月日、サービス内容はあったが、納税者番号はない)だったし、税金を付けない方が当然安く借りれるのであまり深く考えなかった。もちろん税額票(一般的には領収書と兼用となっている)を発行する会社から品物を購入したときは付加価値税が支払金額に加算される。その場合住所を聞かれるので、「なぜ支払人の住所が必要なんだ。会社名だけでだめなのか。」とめんどうだと思いながらいちいち名刺を持って行っていた。しかし小さい商店や市場では安いのだけど領収書はないとか、もらっても金額が書かれているだけなので、さすがにこれらを会社でどう処理するのか気になった。
 月初にバンコクにいる社長へ前月分の収支報告(現金出納帳の写しと領収書等をバンコクへ送付)を行っていましたが、それについてこちらの事務員とバンコクの事務員のやりとりを聞いて愕然とした。付加価値税の仕入税額控除に使用する税額票の「支払人の住所記入欄」がバンコクの住所になっていないので使えないという(事業場の移転変更届がされていなかったからであるが、日本なら当局に説明すれば認容される程度なのに)。さらにタイ人の事務員が「あら、そんなことも知らなかったの」というような顔をして当然のことのように法人税法上損金として認められるのは領収書としての法定要件を満たしている税額票である(印紙税法に領収書の要件が規定されているが、税額票が兼用となっていないものをまだ見たことがない)ということを告げた。裁判官から予想外の有罪判決を言い渡されたときは、こういう気持ちになるのかなあと思った。


 前提条件
現金売上100 現金支出80(うち正式領収書すなわち税額票のあるもの10)法人税率30%

@現金支出すべてが経費と認められた場合
a.収入
 100
b.支出
 80
c.税金
(a−b)×30%=6  租税負担率6÷20(a−b)=30%
d.現金残
a−b−c=14

A税額票のあるもののみが経費と認められた場合
a.収入
 100
b.支出
 80
c.税金
 (100−10)×30%=27 租税負担率27÷20(a−b)=135%
d.現金残 a−b−c=▲7

上記のようにAの場合、表面上の利益は出ているのに現金残がマイナス(実質租税負担率が高い)すなはち元手の食いつぶしになってしまう。

 

[2]具体的事例

@地方都市のタイ企業

業種 修理業(主に官公庁の仕事を受けている。最近は支払いが遅れ気味だが貸倒の心配がなく堅実)

年商 約100万バーツ(1バーツ約3.3円)

税額票を発行したものは、絶対売上計上する。最終的な申告売上は経費として認められる金額とのバランスを考えて本当の売上の70%ぐらい。会計事務は日本でいう会計事務所(弁護士がやっていることが多い)の職員に会計事務を依頼、月300バーツ。法人税申告時に税務職員から1000バーツのリベートを要求されるがうまく逃げてくるという。「大丈夫か」と聞くと「タイ人の小さな会社だから大丈夫」と答えた。「ある脱税もしていない日系企業がなぜ税務職員からリベートを要求されるのか」と聞くと、「タイ人は、納税者が脱税していないはずはないとみており、特に理由がなくとも日本人だからお金をもっているはずだと。(例えば日本人が当局に所得証明を出したら、担当者がその所得が高いのでびっくりしていたと)近くの工業団地にある多くの日系企業が、脱税しているということを聞くと」(工業団地に進出してくるような会社の現地の責任者はサラリーマンであるから、大々的に脱税をして懐に入れると言うことは考えにくく、日本でもあるような見逃してくれればもうけものという意識から生じているものであろうと思う)。約束の時間にルーズなタイ人ではあるが、付加価値税の申告期限日に税務署に行かなくてはとあわてているのを見るとおかしいし、胸がスカットするが、それだけ罰金が高いからであろう。日常的なトラブル(あくまで法律適用前)は自分で処理する。自分の力ではどうしようもないとき初めて超法規的な手を使う。それだけ相手も計算するし高くつくのであろう。タイ人が公務員の中で一番嫌っているのは警察官で、警察官とは知り合いになるのはいいが、仲良くなってはいけない。頼みごとをしてはいけない。するならほんの少しという。またタイ人に贈り物をしたとき「これはいくら」と聞かれたことがあると思うが、リベートをサービスで提供する場合も、サービス提供者に「いくら支払いを受けるか」聞くから口裏を合わせる(もちろんサービス提供者にも接待する相手から利益を受けることがあるのでメリットがある)と言う。

 

A地方都市の日系企業

資本金200万バーツ

a.売上は、100%日本の親会社へ 売上代金は銀行振込のため100%申告

b.経費については、地方にあるため税額票又は領収書の入手はバンコクと比較して難しい。特に原材料の領収書が手に入らなかった。また緊急時の道具類の仕入先に「領収書 を発行してくれ」と言っても「うちには領収書はない」と言われた。

c.会計事務所(弁護士が経営している)には月5000バーツ支払い、会社では金銭出納と材料受払を行う程度 税務調査時に材料の受払をチェックされ年5000バーツのリベートを要求された。調査担当者も税金のかからない収入が入るからチェックに力が入るだろう。製品をインボイスを通さず、日本へ帰る用事があれば直接持っていったりすることがあるので支払った。ただ実質責任者の方が金銭に厳格な人であることやこういうリベートを会社が払うことを日本の親会社では容認してはくれない、下手をすると管理能力を問われてしまうことを怖れてか自腹を切っていた(別に会社も責任者の方も脱税するつもりはないのだが)。どの企業でも完全に法律をクリアしていることはないので罰金(法律上違反内容によっては懲役が併科される)を払うかリベートを払うかの選択になる。

 

Bバンコクの日系企業

業種 内装工事

外国人がタイで仕事をさせてもらう以上脱税するつもりはなく、収入支出すべてを申告した。しかし、税務調査において税額票のないものはすべて否認、さらに税額票のあるものでも必要記載事項が一字でも違っていたら否認、結局これでは生活費も残らないのでタイの会計事務所に申告を依頼。税務調査は来なくなったが、毎月の支払、臨時の支払と会計事務所のいいなりになってしまった。また、リベートを払ったからといって税務当局の賦課決定を免れる保証はない。儲かるのだが、だんだん怖くなり廃業(登記上は休業)。経理のできる人がほしかったと言われていた。

 

Cバンコクの日系企業2

業種 新聞業 従業員 タイ人4人 日本人1人 98年設立

売上、仕入先のほとんどが日系企業なので、85%〜90%ぐらいは税額票が集まる。税額票のないのは交通費とか、顧客との食事代ぐらいと言っていたが、日本語の新聞の作成に欠かせない日本人の給与は、ワークパミットがないため経費として認められないし表に出せないだろう。

 

D取材先の日系企業

資本金300万バーツ 社長は、タイで長年事業を行っている

会計事務申告は、バンコクの会計事務所に依頼 年間顧問料約10万バーツ 別途決算料1〜2万バーツ 法律事務所(日本人担当者がいる)年間顧問料約10万バーツ 案件1件ごとに別料金

a.日本人の給料について源泉税は払っているということだが、ワークパミットはなく経費として認められるのか

b.工場の電話代、水道代、電気代の請求は、家主名義になっており経費として認められるのか

いろいろ興味の尽きないことばかりでしたが、答えが得られなかったことが残念

 

 私は小規模な企業しか知りませんが@Dを除き共通しているのは、「仕事を始めよう。後はなんとかなるだろう」という気持ちで始めたと思うが、タイの経理税務がどうなっているかと言う前に基本的な経理知識がないので余計に混乱している感じがします。それなら経理のわかる信頼できる人を雇えばいいのだが、日本人だと給料が高くて採算が合わずとても雇えない。タイ人で税務までわかる人材はなかなか供給が追いつかないと聞く。結局会計事務所に丸投げ。ボクシングで言うなら、相手はガードが固いのにこちらはノーガードで打ち合っているようなものだ。もちろん日本でも会計事務所に全部任せている所も多いが、タイと日本では状況が違う。

 

[3]対策

 こうすればいいという方法が残念ながら見つかりません。会社内でできることは法律要件に合うように一歩一歩着実にこなして行く一方、最新の情報を常に集めて状況の変化に対応していくことぐらいか

@中国人のやり方が合っている。

小規模な事業では、自分自身又は血族で経理を管理する。証拠は残さない。現金取引

どうしても正確な経理の状況を知りたい場合には、タイの会計ソフトはわからないが、ノートパソコンを使用して4、5万円の会計ソフトを使い経理を行う。全部で30万円ぐらい。ソフトは簡単な初期設定を行いあとは多少の簿記の知識があれば入力も簡単。税法のように毎年変わらないのでソフトのバージョンアップも必要がない。ただ一つの欠点は、証拠になってしまうことです。(タイの税法に外国語の帳簿等をタイ語訳することを命ずることができると規定されている。)

Aリベートも経費科目の1つと考える

あってはいけない項目ではなく経常的な必要経費として、内部管理を考える。

B本線を知っていてこそ、バイパスがより生きてくる。

過去の経験(間違いなく事実でその時は正しいが、今は法律が変わってしまっていた場合)が今も正しいと信じている人や結果は同じだが過程が間違っている人の話を聞くと、少しでも変化球が来たら危ないなあと感じますが、よく勉強している人は、98年の横浜の佐々木がマウンドにいるときと同じように周りに安心感を与えてくれます。

 

[4]エピローグ

 タイと日本では、行政側、納税者側の相手の見方及び取扱が違う。日本ではある程度まで行政と納税者が信頼関係をもっており、名義にかかわりなくあくまでも実質所得者課税の原則により、誰が利益を受けたかが重視される。一方タイでは、行政側は納税者というものは脱税するものだと考えいるし、納税者は税金というものは不当に取られていくものというお互いの不信感がある。また、実質誰が利益を受けたかではなく形式上の書類の名義を重視する。実質主義も度が過ぎると説明に無駄な手間がかかるので、日本のやり方がよいと言っているのではない。私が日系企業で取材を始めた当初「脱税ではなく節税の仕方を教えてくれ」と日本ではあたりまえの事を言ったら、怪訝そうな顔をされしばらくたって「正直に全部申告するのはバカだ」と言われてしまった。今度はこちらの方が怪訝そうな顔になってしまった。タイの行政側はもっとタイの状況を考えて経費認容の許容範囲をひろげてほしいし、納税者もきちんとした領収書を発行してほしい。行政側は、今の現状を考え将来を見据えて法律の適用を厳格にしているのか、それとも故意に表面上厳格にしているのか。とにかく経費としてかかったものは、かかったもの(例えば安くて質のよい仕入先を開拓してもそこが領収書を発行してくれない場合、経費として認められない)として認めてもらえ、さらに正規の手続きを採りたくても日常的なことでさえ、手間や時間がかかったり高くついたりすること(例えば携帯電話を個人が購入する場合は簡単であるが、会社名義で購入する場合手間や時間がかかる)が改善されれば適正に申告できる。それにより全体の会計レベルの向上につながり、会計担当者が育つ。バンコク日本人商工会議所では99年3月に「タイ語(英語なら理解できるが)によるタイ人経理担当者向け簿記検定試験(会計帳簿の作成)」を実施したことからも一定レベルの会計担当者の採用は難しいことがわかる。まず権力のある行政側の既得権益を縮小し、次に納税者の納税意識を向上させる。日本の税理士は法律に従って所得を算定し、税金はこれだけかかりますと言えますが、タイでは難しい気がします。しかし決まった答えがない分おもしろみもあります。特に行政とつながりの薄い中小企業の経営者及び会計担当者並びに個人事業者は、そのときの状況に応じ臨機応変に対応していく必要があります。また、ここで述べた事がこれから他の発展途上国に進出しようとする場合の1つの参考になればよいと思います。ベトナム・中国は、もっと日本人の常識を覆してくれる国だと聞いています。旅行者は新鮮な驚きを感じても、仕事をする人は、頭が痛いと思います。最後に、タイにおいて法律が法律として機能してしまうようになると個人的には魅力がなくなってしまうかもしれませんね。

 

 

2002年6月現在(2002年7月7日)

 タイで会社経営している日本人の方a、日系企業で働いている現地採用の日本人の方bとビールを飲みながら話しをする機会がありました。aが、「タイ人まかせになっている経理のことをよく知りたいんだ」。私はてっきり今日本で、はやっている財務諸表の読み方を言っているのかと思っていたら、そうではなく、タイ人の経理担当者の言いなりになっているようで、正しい経理処理(税務に関することが中心)を知っておきたいということであった。aはタイ語の読み書きも日常的には問題ないレベルであろうから、タイ人のスタッフに聞けばいいのにと一瞬思ったら、bから「タイ人は人に教えないので、タイ人よりわかっていないと仕事を進められないからね」とのお言葉。現在、aの会社では、他の会社の経理、法人税申告、付加価値税申告の仕事(付随的)も請負している。タイ国内で独力で仕事をして稼ごうとしている人は、経理申告事務でかなり苦労しているようなので、商売としての需要はかなりあるという。しかし、私がいた頃と国内状況はあまり変わっていないようだ「計算して出した会社の利益は、砂上の楼閣のようで、気の弱い私にとってとても怖い(タイの会計士でも、中小の会社の法人税の申告を保証できる人は、いないと思う。従ってタイでの経理申告業務受託については、頭を切り替え、特に経理申告業務受託のリスクをわかってもらう必要がある。)。かといってカチカチに法律どおりやっていられないのもわかる(利益に占める税額の割合がものすごく高くなってしまう)。当然まかせた会社は、安心してしまっているかもしれない。そのへんのギャップはどうするのか」。aはこれまで約5年タイで仕事をしてきた感触から、私が心配していることは、「現状、付加価値税の申告さえきちんと行っていれば、全くの杞憂である(そういえば、タイ人も付加価値税の申告には、気を使っていたなあ)。」といい、一蹴されてしまった。まるで、実務を知らない人間が実務家にピントの外れた机上の理論を説明しているように受け取られたと思う。例として、私がタイにいた頃、よく行ってた飲食店が付加価値税の申告を行っておらず、摘発されたと言っていた。しかし(自分のやっていることに有用性をもたせるため、もしかしたら単なる自慰行為かも)、平和時にはなんでもないことだが、一旦行政側が方針を変える(法律を新たに作る場合は、公告し施行まで期間が有るから問題はないが、法律があったが適用されていなかった、又はゆるやかに適用されていたものが急に法律どおり厳密に適用されるようになった)と、どのような法律があるか知っているだけでも、その後の対応に差が生じると思う。例えば日本で税務調査があった場合、問題となりそうなところについては、あらかじめ反論の準備をしているので、心に余裕をもって対応できる。しかし、予想外のところを指摘されると、すぐに反論もできず、慌ててしまう。心の余裕は大事であると思う。日本ではグレーゾーンで処理をする場合、損害賠償請求を起こさせないため、リスクを説明して具体的な数字の比較を出して、顧客に選択させるようになってきているので、タイでも顧客にリスクを説明して選択させるようにしなければならないと思う。振り返って考えると、口コミによると思うが、やはりタイ人もできるだけ合法的な節税方法も取るようにしていると思う。
 付加価値税については、インボイス方式(領収書と兼用になっている)を取っているので、日本のように、この分は仕入控除できるとかできないとかという問題は出てこない。専門家でなくても、課税事業のみの場合、インボイスに従ってもらった分と支払った分を合計して差引して、差額を納付し又は還付を受ける(インボイスの手に入らない経費については、当然インボイスがないので控除できない。)。日本の消費税の実額計算による申告については、不安を感じるので、日本もインボイス方式になればいいのにと思っている。
 また、タイ人の株主に仕事に来ないのに給料を払っている(名義代)というように、タイ人の株主に頭を痛めているようだ。bは新しく独立したタイ人と台湾人と日本人で作った会社で働くことになったが、私の想像としては乗っ取られるのではといったら、2人も乗っ取りの心配はないと即座に断言した。ただaは、かなり確信をもって「うまくやっていけないんじゃないか、そのうちに喧嘩になるよ」と言った。
 最後に、aは、「うまくやっているやつは、うまくやっているよ。バカみたいだ。俺はやっていないけどね。」いろいろなことが重なった心の叫びのようなものを感じた。以前タイ人から聞いたようなことを、今度は日本人から聞くことになった。
 それでも、aの会社は行くたびに少しずつ大きくなっていく。去年は一部屋だったのが、二部屋になっていたし、当初は一年も経たないうちに人が入れ替わっていたが、最近は、人も定着するようになったと言っていた。毎年少しずつでも、給料を上げているし、経理申告受託業務は、経理担当者が行うから一社あたりいくらというような歩合制にしているという。
 タイで実務をしている人にとって一番知りたいことは、現実にどういう処理を行っていけばよいのかということであろう。税理士会での研修において、現役の税理士や弁護士などの実務家の話は、現実に悩んでいる部分や重要なことを気づかせてくれたりします。一方、大学教授の話は、難しいことをおもしろくわかりやすく話はしてくれますが、今いち現実味がありません。私のホームページに現実味がないのと同じですし、残念ながら今はこれが限界であると思う。

タイで会社を作るメリット
 出資額を回収できなくても、日本で出資額分の損失(個人では、原則として経費とされない)を計上することができるので、出資額を原価として計算しても、日本を含め他の国で作るより安くなれば、品質の問題はあるが、メリットがある。また、大会社が下請けをと共に進出する場合、単純に下請けとの取引だけにすれば、会計上の利益が税務上の利益に近くなるため、出資額を回収できなということは考えなくてもよいのではないかと思う。

 今のところ一年に一度ぐらいしか会えないが、3人でいっしょに飲んで楽しい時を過ごせた。彼らに、コ‐ハイチョークディー。

 

2003年6月訪タイ(2003年8月31日)

 書店を回ったが、税に関する新刊本は見当たらなかった。従来の本の改訂が少し。大規模な改正の前触れか。日本は、連結納税のおかげで法令本が一冊増え、気軽に持ち歩くことができなくなり、また検索のし易さ、改正の対応のため、ある人はノートパソコンに組み込んで持ち歩くようになったと言っていた。いずれタイも条文が増えていくのだろうか。
 日本の友人と何気ない話をしても法律の話にはなかなかなりませんが、タイで働く日本人たちと何気ない話していてもいろいろな法律のことが話題になります。法律があっても取り扱いが流動的なのかもしれませんし、特に外国人がタイで仕事を行うためにとって一つの身を守る道具になるためでしょう。

友人との話

@日本人は細かいサービスを要求する。その分値段も高いが。例えば、日本人から最初の届先ではなく次の自分の指定場所まで運ぶことを要請されていたのに、タイ人に日本人の荷物を運ばせたとき、最初の届先のタイ人がOKと言ったら荷物を下ろして帰ってしまう。確認のため何度も帰るとき連絡をしてくれと言っていても連絡をくれない。尻拭いばかりと嘆いていた。

A領収書のない経費について、身分証のコピー、領収のサインをして領収書に代わる書類を残しているが、日本人は身分証のコピーは以前もらってあるから領収サインだけでいいのではないかと考えて、タイ人の経理担当者に言っても、「あのときはあのとき今度はまた別であるから必要」と言われる。日本人はイライラしてしまう。ただし、日本人が従うか従わないか別としても、そのように言ってくれるタイ人の経理担当者は貴重だと思う。なお、2つの会社の経理担当者の給料を聞くと両方とも20,000バーツ超とのこと。

B一方通行が多いので警察が待ち構えているそうだ。免許証の下側に200バーツ(バンコク)をいっしょして相手に渡す。チケットをきられてもいいけど、警察署へ行かなければならないので面倒だからと。

 

次のような広告が出ていた

1.労働許可証取得、1年ビザ取得費用15,000バーツ
 書類を全部揃えていてもなかなか一度で済まないし、言葉の問題(専門用語が使われるからであろう)もあるので、日本人がその都度対応していたら時間のロスが大きく、経理関係の書類も提出するということなので、タイ人の経理担当者にまかせるのがよいとのこと。なお、自力で取る場合約10,000バーツかかるとのこと。

2.月ごとの申告処理(会計事務所ではなく、会社の経理担当者が行なう。従って申告書に添付する財務諸表への公認会計士の監査証明代は別途) 
 日本料理店や従業員約20人以下の小規模会社 3,000バーツ
   源泉所得税の申告(翌月の7日まで)
   VAT申告(翌月の15日まで)
   社会保険処理(翌月の15日まで)

3.会社設立登記
 資本金300万バーツ(ワークパミット1人可能)  30,000バーツ
 資本金500万バーツ(ワークパミット2人可能)  40,000バーツ

 

 12月にアリア会計事務所グループの形部さん(公認会計士)から「タイ国歳入法典」を出版したので寄贈したい(多少私のホームページを評価し、がんばりなさいと言われているのかな)というメールをいただきましたので、喜んで1月にタイへの旅行のときにいただいて参りました。お忙しい中、暖かく迎えていただき、初めてお会いできました。形部さんは、動、一方、泉さん(アリア会計事務所の公認会計士)は、静という感じでよいコンビのようでした。タイ人の職員の方は、大部分の方は若く、雰囲気は私語もなく日本の会計事務所のようでした。職員とは、タイ語で打ち合わせされていましたが、英語の税務、会計のわかる顧問等と話しをする場合は英語を使っているということです。また、5年ぐらいの経験を積んだ税理士がほしいということも話をされていました。
 帰りに紀伊国屋に寄ったとき、「タイ国歳入法典」が販売されていましたが、7,500バーツでした。何回も値段を確認してしまいました。「会計事務所も増えており、情報も重複している」と言われていたことから推定すると、販売で利益を上げるというよりも、他の会計事務所との差別化(自分のレベルが相手にわかるので、自信がないと本は出せない)のため、広告のための販売というのがより強いのではないかと思います。また、「正確な情報には予算が必要であることを合点してください」と事務所案内にも書いてありますが、顧客が求めるのは、問題が発生せず、最小限のコストになるようにということでしょうから結果が重要ですし、こういうところが扱う事案は、法律を読めば解決できるというものではなく、複雑で金額的にも大きいと思います。従って、責任の重さを考えると相当の報酬を支払っていただくということになります。扱う顧客の規模の違いにより、最前線の現場の会計士と日本の末端の税理士(連結納税、移転価格、外国税額控除などは、使いませんので)との考え方、環境、個人のレベルの違いを強く感じました。(2005年2月28日) 

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