判 例(法人税)5

更新2001年5月17日

2001年4月23日

[21]個人的な性質をもつ支出(最高裁の判決3969/仏暦2532西暦1989原告は法人、被告は国税局)

 原告は、当座借越利息を所得を計算するとき損金とした。しかし、借越をした当座預金の口座所有者の名前を、会社の名前ではなく個人の名前を使ったときは、その当座借越は、個人の資格で行われたとみなさなければならない。これだけでなく、原告の損益計算書の中で、その口座残高を超える引出し利息を支払いの項目表示がされていなかった。それゆえ被告は、国税法65条の3(3)により個人的な性質をもつ支出として考えられることにより、原告がその利息を所得を計算するとき損金とみなすことを容認しなかった。これは法に適合している。
 2526年の会計期間の税として被告は原告に還付しなければならないということを口実にして、18、825バーツを法人税の支払い時に法人税から控除した。しかし、この裁判での課税は、2527年、2528年の会計期間の課税である。原告はその税金をこの裁判での税金から控除することはできない。なぜなら原告は民商法により債務の代償として控除することを引用したが、異なる会計期間の税金を控除するということであり国税法69条の2(源泉徴収された所得税をその支払いがされた会計期間の法人税から控除するということが規定されている)により控除できない。いかなる点においても原告は2526年の会計期間の課税の際、被告が債務を負う(税の還付がある)と考えさせるように伝えなかった。また、2526年の会計期間の原告の税金を調査する機会があったことを明らかにしなかった。結果がどうであれ、課税及び判決は、法に適合している。

 

解説
 
法人税を支払うため所得を計算するとき収入から控除する支出は、国税法65条の3(1)〜(20)に従って損金とされないものでないようにしなければならない。損金とされないものは、税金を支払うため所得を計算するとき控除したものを加えなければならない。
 個人的な性質をもつ支出も、法人税を支払うため所得を計算するとき収入から控除して計算することができない支出である。なぜなら、65条の3(3)は損金とされない支出とみなしている。しかし、個人的な性質をもつ支出は、どんな支出を意味しているのか。国税法は言葉の意味を説明していない。筆者は、個人的な性質をもつ支出とは、会社の取締役、株主、法人格のある組合の出資者、会社もしくは法人格のある組合の従業員、又はその他の人の個人的な性質の支出を意味しているが、会社又は法人格のある組合が事業に利益を発生させることなしに支払ったと考えている。しかしどのようなものであろうか。

1775/2522の最高裁の判決
 いろいろな形での顧客の接待費、たとえばスポーツ観戦のチケット購入補助、政府の重要人物の誕生日を祝うプレゼント、他の人の自動車のエアコンの取り付けは、同じ目的の支出である。すなわち幾人かの利益のためであり、会社の事業のための支出であることを示す事実関係はない。個人的な性質をもつ支出とみなされる。

2761/2524の最高裁の判決
 原告の会社の支出。@いろいろ開催されるチケットの購入費、たとえば、音楽会、演劇、Aいろいろな機会におけるプレゼントの購入費、たとえば、誕生会、結婚式、新年会でのもの、Bいろいろな行事の補助費、たとえば出家、托鉢、僧衣献上、これらは個人的な性質をもつ。もし、会社の名前や商品を広告する側面から代償があっても付随しただけである。行為のいくつかは公益性がない。65条の3(3)により所得を計算するとき経費として控除することはできない。

2951/2527の最高裁の判決
 出張を承認した会社の議事録のない及び帰ってきたとき出張の詳細な報告がなく、原告の事業に関して出張したという証拠として他の書類もない会社の取締役その他の旅費の支出は、その取締役その他の個人的な旅費の支出とみなす。特に利益のため、又は事業のための支出ではない。原告は、65条の3(3)(13)により所得を計算するとき損金として控除する権利はない。

 原告が顧客のための支出であると述べた接待費は、領収書には原告が支払人であると明らかにされていないし、誰の接待のために支払いどの事業に関して支払ったか証拠はない。原告はカーペットの購入費、冷蔵庫の修理代、靴代、服一式の仕立て代を接待費として支払項目に記入していた。真実と合っていない項目に記入したということを示している。もし、被告である税務調査の担当者が、帳簿と証拠を調査しないならば、正しくないことを見つけるのは不可能である。前述の支出は、個人的なものであるとみなすことができる。原告は、65条の3(3)により所得を計算するとき損金として控除する権利はない。
 この裁判では、原告が所得を計算するとき損金として控除した利息が65条の3(3)により個人的な性質をもつ支出とみなすかいなかという問題がある。
 筆者は次に該当するとき、その利息は所得を計算するとき損金として控除する支出とみなす。換言すれば、損金とされない支出とみなさない。

  1. 税金を支払う会社又は法人格のある組合が、利息の支払者である
  2. 当座借越金が、税金を支払う会社又は法人格のある組合の事業に使われる
  3. 税金を支払う会社又は法人格のある組合が、誰が利息の受取人であるか証明できる

 この裁判では、たとえ事実関係において銀行に対して当座借越利息を支払ったと信じても、その当座借越利息を支払った当座預金の口座所有者に個人の名前が使われていた。口座所有者として原告の名前が使われていない。それゆえ当座借越は個人の資格による個人の行為であるとみなさなければならないい。これだけでなく、原告は損益計算書でその利息の項目の表示がない。それゆえ65条の3(3)により個人的な性質をもつ支出とみなすことにより、原告の所得を計算するときその利息を損金とみなすことを承認しない。法に適合している。
 最高裁において、原告が当座借越利息の支払者でないと判決した。原告は所得を計算するときその利息を損金として控除できない。この判決は、この裁判だけの判決である。もし、口座名が税金を支払う人の名前でなく他の人の名前であるならば、その利息を損金とすべきではないということが絶対の基準とみなしていない。もし、税金を支払うものが、裁判所に他の人の名前がただ税金を支払うものの代わりであることを証明して信じさせることができたならば、正しくないとすべきである。税金を支払うものが、借越金を受け事業に使用し、利息を支払った口座の所有者である。支払った利息は所得を計算するとき損金として控除すべきである。しかし、この裁判で最高裁は、原告が実際当座借越をし、利息を支払った口座の所有者であると信じなかった。最高裁は、その口座が個人の口座であると信じた。このように最高裁が信じたとき、支払った利息は原告の支出ではなく個人の支出とされる。原告は、65条の3(3)により損金とされないことから所得を計算するとき損金として控除できない。
 
コメント
@口座が設けられないとか、よほどの理由がない限り他の名前を使うのはおかしいわけだから、やむを得ず他の名義を使う場合は説明しやすいように個人的なものと混ざらないようにしておく。

A最高裁の判決をみると、特定の人の個人的な行事に関する支出は、会社の事業のための支出とされず、個人的な性質をもつ支出とみなされる。また、広告宣伝的な効果があっても個人的な性質をもつ支出に関連する場合認められない。筆者も「個人的な性質をもつ支出」の定義がされていないので自分なりの解釈をしている。日本の会社では得意先の人が何らかの公的な賞を受賞したとき、お祝いの品を持っていったりしますし、保険の外交員は顧客の誕生日にお祝いをしたりすると聞きます。これらは交際費に該当し損金になる余地がある。しかし、タイでは個人的な性質をもつ支出は、「損金に含めない」とわざわざ規定してあるので損金になる余地はない。個人的な性質をもつ支出として例示が出ているが、「特に利益のため、又は事業のための支出」の判断基準がよくわからないので、もっと例示があればよいと思う。

 

[22]棚卸商品の評価と貸倒(最高裁の判決876/仏暦2535西暦1992原告は法人、被告は国税局)

 原告は、原告の基準に従って値下げすることにより、会計期間の終了の日における棚卸商品の評価をした。たとえば、長く使用できる商品は10%、18ヶ月以内に購入した工具、道具は値下げしておらず、もし購入してから2年を超えている場合には10%。しかし、事実関係において原告と同じ種類、型、品質、状態の商品が、原告の付けた価格に従って前述の期間に市場において売買された、又は原告は、原告が付けた価格に従って価格をつけた日以後に商品を販売したと聞くことはできなかった。原告が評価した棚卸商品の価格は、市場価格とみなされない。原価より低い価格を会計期間の終了の日における棚卸商品の価格とすることは、計算理由が65条の2(6)規定に適合していない。会計期間の原告の所得は間違っている。課税係官が、原価により会計期間の終了の日における棚卸商品の価格を計算することにより、新たに所得及び法人税を調整することは法に適合している。

解説
1. 製品を製造する又は商品を購入し販売する事業は、最初の段階の利益(売上総利益)を計算するため会計期間に販売された商品の原価を計算する必要がある。そして、次の段階の会計期間の利益を計算するため販売及び管理における経費を控除する。会計期間において販売された商品の原価の計算は、その会計期間における商品購入価格に、会計期間の期首棚卸商品の価格に加えて、会計期間の終了の日の棚卸商品の価格を控除することにより算出できる。たとえば2514年の会計期間において前の会計期間からの棚卸商品が5、000バーツあり、会計期間の終了の日までに20、000バーツ購入し、2、000バーツの棚卸商品がある。会計期間内に販売した商品の原価は5000+20000-2000=23000バーツとなる。会計期間の終了の日の棚卸商品の価格は、会計期間内に販売した商品の原価を計算するために重要な数字であると考えられる。もし、会計期間の終了の日の棚卸商品の評価をしないならば、会計期間内に販売した商品の原価がわからないし、付随して利益もわからない。
 これだけでなく、次の会計期間の利益もわからなくしてしまう。なぜなら、現在の会計期間の終了の日の棚卸商品の価格は、次の会計期間の開始の商品の価格でもある。もしこの棚卸商品の価格がわからなければ、次の会計期間内に販売した商品の原価がわからないし、利益もわからない。
 会計期間の終了の日の棚卸商品の価格又は評価することは、現在の会計期間及び次の会計期間の利益を計算するために必要性がある。会計期間の終了の日の棚卸商品の評価をすることは、どのようにしても避けることができないし、正しく行わなければならない。なぜなら、誤った棚卸商品の評価は、現在及び次の会計期間の利益に当然影響を与える。すなわち、もし現在の会計期間の棚卸商品の評価が高すぎるならば、その会計期間の商品の原価が低くなり利益が多くなりすぎる。そして、次の会計期間の商品の原価を高くし、利益が低くなりすぎる。反対の場合、もし現在の会計期間の棚卸商品の評価が低すぎるならば、棚卸商品の評価が高すぎる場合と反対に、現在及び次の会計期間の利益に反対の影響を与える。従ってどのように棚卸商品の評価をしなければならないかという問題がある。
 答えは、原価又は市場価格のいずれか低い方により評価しなければならない(65条の2(6))。原価による棚卸商品の評価に関して、65条の2(6)は基準を規定していない。ただ会計学の基準に従って計算し、その基準を以後継続して使用することになる。ただし国税局長から承認を受け、基準を変更できるときを除く。会計基準に従って使われる棚卸商品の計算方法には

@個別法

A先入先出法

B後入先出法

C総平均法

 一方、市場価格で棚卸商品を評価することは、基準として国内における会計期間の終了の日において販売できる同一の種類、型の商品の価格を使って評価することである。もし国内の価格がわからないならば、世界の市場の価格に、会社に届くまでの船積料、保険料、輸入税、付加価値税、移動費、保管料、輸送費を加えて市場価格として使う。この市場価格で棚卸商品を評価することについて、ただ基準となる商品の市場価格が下がったという事実だけを使うべきではない。品質の低下、時代遅れ、破損又は長く保管して古くなった商品は安くなるべきであるということは、より低い市場価格を付けることを支持する原因となる。なぜなら、原因となるこれらの事実により商品の価格が低下したからである。
 この裁判では、原告は期間を考えて、商品の種類、型に従って原価を値下げする方法により棚卸商品の評価をした。たとえば長く使う商品10%、3年以内に購入した一般的に消費される商品は50%、5年を超えるものは全部。値下げした価格を市場価格として使い利益を計算した。たとえばこの方法に理由があっても、長く保管した商品は当然品質が低下し、時代遅れになり価格を下げることができても、原告の付けた価格は市場価格と同一ではない。原告は市場における価格を調査した原告の販売部門の従業員に証明するため証言させなかったし、市場の中の他の物品の販売者に原告を支持することを証言させなかった。原告が評価した棚卸商品の価格が、市場価格であると認めるには証拠がまだ十分ではない。それゆえ最高裁は、原告が評価した棚卸商品の価格は市場価格でない。原告が原価より低く評価した棚卸商品の価格は、会計期間の終了の日における棚卸商品の価格とすることはできない。原価を基準として新たに会計期間ごとに所得及び法人税を調整しなければならないと判決した。
 この裁判では原告は負けた。なぜなら所有期間を考慮して商品の種類や型に従って原価を値下げする方法により棚卸商品の評価をしたことについては、明確であると思わせ、評価した価格が市場で売買される価格であると主張しなかった。もし原告が明確であると主張したならば、例えば、原告は市場における価格を調査した原告の販売部門の従業員に証明するため証言させ又は、市場の中の他の物品の販売者に原告を支持することを証言させたならば、裁判の結果は、原告が勝つことができる方向に変わったかもしれない。

2.信用取引で商品を販売することは、当然、通常貸倒があるだろう。会計上、その会計期間の利益又は損失のため、貸倒の疑いのある債権をもっとも実際に近くするように評価することがある。この見積もった貸倒金額は、「貸倒のための費用」又は、いくつかの教科書では「貸倒のの疑いのある債権」と呼んでおり、仕事を行う上での経費とみなされ、損益計算書で表示しなければならない。しかし税務上、見積もった貸倒金額は、税金を支払うため所得を計算するとき損金とみなされないだろう。なぜなら、まだ実際貸倒が発生していない支出であり、65条3(1)により損金とされない。貸倒が実際発生したときにおいて、税金を支払うため所得を計算するとき損金とみなされるだろう。重要な点は、債務の返済を受けるため貸倒の発生に従ってより適切に行うことができないかもしれない場合を除き、適切に行わなければならない(65条2(9))。この基準は古い法律に従った規定である。2526年1月1日以後に開始する会計期間からは新しい法律に従う。
 新しい法律は、貸倒が実際発生しなければならない他、省令で規定された基準、方法、条件に従って行わなければならない。そして税金を支払うため所得を計算するとき損金として貸倒処分することができるだろう。最初の省令即ち第159号(2526年)、2番目の省令即ち第181号(2532年)、3番目現在の省令即ち第186号(2534年)。現在の省令おいては、損金とみなされる貸倒処分は、債務者が債務を返済する財産があるかないかにより、裁判所に訴えなければならないものと訴える必要のないものがある。いくつかの場合には、裁判所に訴えるだけではまだ十分ではない。裁判に勝って裁判所の命令がなければならない。2526年の会計期間前における貸倒処分は、裁判所に対して訴える必要性がなく、債務の返済を受けるため適切に行うだけで、債務の返済を受けなかったことにより行うことができた。現在と違っている。それゆえ、この裁判の場合、損金として貸倒処分するには十分である。もし現在の法律が適用になるならば、貸倒処分はできないだろう。 

コメント
1.「現在の法律が適用になるならば、貸倒処分はできないだろう。」なぜ、どのような点でなのか、現在の省令についてまだよく知らないので、現在の私のレベルでは説明できません。


2.「適切に行う」というのはどういうことをいうのか。
 最初に集金係の従業員が債務者から集金を行うことから始まる。もし問題があるなら販売部門に当たらせる。それでも集金できないならば、総務部門が債務者に催促の書状を送る。なお債務の返済を受けられないときは、法律的な処置を行う。法律部門が債務者に催促状を送っても返済されないならば、取締役は、適切に債務者を訴える又は訴えないことを審議することになる。もし取締役が審議し、たとえ訴えても債務の返済を受けることができないかもしれないし、効果なく多くの経費を支払う又は、元が取れなく債権の金額を超えて経費を支払わなければならないと考えるならば、債権勘定から貸倒処分を行わせるだろう。販売部門の従業員は、債務の返済のため何度も債務者の住所や事業所を追跡した。多くの案件については弁護士に督促状をつくらせた。次のことが明らかになった。いくつかの案件は、債務者が事業をやめ追跡したが会えなかった。いくつかの案件は、債務者の店が火事になった。いくつかの案件は、債務者が死亡してしまった。いくつかの案件は、債務者が収監された。債務者の一人は破産したが債務の平均の30%を返済するようにお願いした。いくつかの案件は、債務者は催促を受けた金額は値引き部分であると反論した。
 原告は貸倒処分したが、後日債務の返済を受けた他の案件については、原告は返済を受けた年の収入として計算した。事実関係は、債務者が事業をやめ追跡したが会えなかった又は死亡した又は収監された又は店が火事になったということである。債務者は返済させるため、まだ財産があるということは明らかでない。債務者の多くは他県におり催促するため追跡し、次に財産を調査するためには、当然経費を支払わなければならないし、困難である。前述のいろいろな状況のとき、債務者が債務の返済をすることができないし、いくつかの債務の金額は何千バーツもせず訴訟に関して弁護士を雇うときの経費に値しないということを示している。被告は、販売部門の従業員が取締役が貸倒処分を命じるようにお願いする報告になったいろいろな理由が、事実ではないという反論はしていない。
 それゆえ、取締役が販売部門の従業員に何回も債務者を追跡し催促した後及び高額の債権については弁護士に催促させたが返済を受けなかった場合に、債権勘定から貸倒処分をするときこれらを判断に使うことは当然債権の返済を受けるために適切に行ったとみなすことができる。国税法の規定に適合していることから債権勘定から貸倒処分をすることができる。被告の説明に従って最後まで控訴する必要性はない。なぜなら法律は適切に行うことを規定しているだけである。この項目の税務裁判所の判決は法に適合している。被告の控訴は却下された。
 債権回収方法が説明してあり日本と変わらないと思うが、貸倒の計上時期の取り扱いが国により違いがあると思う。現在の省令を日本と比較するとタイの方が貸倒処分については厳格であるが、逆により貸倒要件が明確であると思う。回収作業についての報告書や証拠となる裁判関係の書類を残しておくことは言うまでもない。


.市場価格と原価いずれか少ない価格で評価することになっているが、ただ市場価格が一時的に下落又は少し下落の場合にはそのまま原価を使って評価することになるのではと思う。従ってあまり神経質になる必要もないと思う。

 

[23]棚卸商品の評価(最高裁の判決4012/仏暦2536西暦1993原告は法人、被告は国税局)

 棚卸商品が減価する資産で原価の15%の市場価格であるとき、原価より低い市場価格に従って、会計期間の終了の日における棚卸商品の評価は、65条の2(6)の条件に従って行われる。

解説
 
会計期間の終了の日における棚卸商品の評価については、65条の2(6)は原価又は市場価格いずれか少ない金額により計算し、新しい会計期間において、この価格は期首棚卸商品の価格とみなすと規定している。
 この裁判で最高裁は、時代遅れ、品質低下、破損した商品が残され販売できないことは、市場価格が原価の15%だけ残っていると説明可能であるとき、その商品の市場価格を低下させる結果となる。原価の15%で棚卸商品の評価をすることは、65条の2(6)の規定に適合している。

コメント
 「
説明可能であるとき」というのが一番知りたい。
原告はトヨタ車の販売、部品の販売、修理を行っている。購入して3年を超えた棚卸商品を原価の15%とする基準を使って評価した。課税係官より法人税、延滞税、加算税を30日以内に支払わせる更正通知書を受け取った。問題は、適正な市場価格で棚卸商品の価格を計算したか否かである。
 会計士は原価又は市場価格のいずれか少ない金額により計算しなければならないと通知し、原告に市場価格を調査させそれに基づいて計算させた。従業員は次の証言をした。「原告はトヨタに電話して尋ねた。棚卸商品は原価の15%の価格であろうと連絡を受けた。3年を超えていない部品は原価で計算し、時代遅れ、品質低下、破損した商品又は販売できが残った部品は会計上も分け明細書を作った。」棚卸商品の計算について税務調査があった後、原告はトヨタに残っている商品の価格表を作ってもらうように依頼し、受け取った。また、課税係官が原告の計算を認めなかった後、ストックの中にある争いとなっている商品を調査してくれるように書面で頼んだがしなかった。少なくともまだストックの中にある争いとなっている商品を調査できたかもしれない。裁判でトヨタの価格表の作成者が証言した。「販売代理人から返却を受けたときの価格であり、販売の統計学による計算の方法から価格を決めたものである。」原告が定めた基準ではない。トヨタは長年販売しているし、国内に多くの販売代理人がいるので、1つの客観的な価格であると認められた。
 公的な相場があればよいが適正な市場価格を見つけるのは、困難であろう。この裁判のように明らかに原価よりかなり価格が下落して回復の見込みがない場合には、市場価格で評価することになるのであろうが、適正な市場価格をいくらにするのか難しい。

 

 

[24]支払うときに控除した税はどの会計期間の法人税から税額控除しなければならないか(最高裁の判決4924/仏暦2533西暦1987原告は法人、被告は国税局) 

 原告は、外国で原告の商品を販売する代理人を捜すこと、原告の従業員の訓練をすること、低い利率の借入れ場所を捜すことに関する管理業務について、a会社からアドバイス受けた。従ってa会社に対してサービス料を支払わなければならないと主張した。しかし、原告の証言や裁判所に提出した書類によると、a会社にどのような費用として支払ったか全くわからないかもしれない。これだけでなく、原告が例証したサービス料は、外国の会社でありタイでは事業を行っていないa会社が仕事を受けたことによる所得であり、課税すべきである。所得を支払うとき、原告は前述の所得から税(源泉税)を控除しなければならない。しかし、原告が支払うとき、どのように税を控除したか明らかではない。これらのことは、お金はa会社のサービス料ではないということを支持し、また原告の事業のサービス料としてa会社に支払ったお金であるという原告の主張を受け入れられない。それに特に原告の利益のため又は事業のための支出ではないし、特にタイでの事業のための支払でもない。利益を計算するとき損金とみなされない。
 課税係官は、支払うとき控除された税金196,719.08バーツを、所得を計算するとき損金とみなさず原告の所得(損金不算入)とみなし、原告に対して増加法人税及び延滞税合わせて70,818.88バーツを支払うように計算した。しかし、控訴税務審議委員会は、所得とみなし税を計算したその金額は正しくないと考えた。なぜなら、原告が69条の2の規定に従って支払のとき控除された税であり、原告は控除された会計期間に税額控除する権利がある。この金額が、2516年の会計期間前に控除された税金であるということが明らかであるときは、原告は当然2516年の会計期間に税額控除する権利がない。控訴税務審議委員会は、原告に196,719.08バーツの金額内で税を支払わせることを判決した。この金額は、課税係官が原告に支払わせようと課税した金額より多い。この196,719.08バーツの金額の税金は、課税係官が課税した段階から控訴税務審議委員会の段階まで争いとなっている税金である。ただ課税係官は税を計算しただけである。正しくない。控訴税務審議委員会は、法律に従って正しく計算した。税を徴収するためいかに他の所得を加算して計算したかではない。増税する場合、他の項目の重要問題について増税し徴収することではないし又は、課税係官の権限を使いいかに税を課税し徴収するかではない。控訴税務審議委員会は、当然増税する権限がある。                    

解説
 
所得を支払う人が、支払をするときに所得税を控除する。所得を有する会社又は法人格のある組合の控除された所得税は、控除された会計期間内において法人税を計算するとき、控除税額とみなされる(69条の2及び69条の3)。もし所得のある会社又は法人格のある組合が、会計期間を間違って税額控除したならば、その税額控除を間違って控除した会計期間の法人税に加算しなければならない。結果として、支払のときに控除した、すなわち間違って税額控除した税額と同じ金額の増加法人税、延滞税及び加算税を支払うことになり、そしてその支払のときに控除した税をその控除があった会計期間の法人税から税額控除する。
 この裁判での支払うとき控除された196,719.08バーツ所得税は、正しくは2515年の会計期間の法人税から税額控除しなければならないだろう。しかし、原告は2516年の会計期間の法人税から税額控除した。すなわち会計期間を間違えて税額控除した。課税係官は、前述の金額を支払うとき控除した税を2516年の会計期間の法人税として加算することにより2515年と2516年の会計期間の法人税を新たに調整しなければならない。結果として原告に前述の金額を支払うとき控除した税額と同額の増加税額、同時に延滞税を合わせて216,391.09バーツ(控除税額の10%(減額してある)の延滞税を加算した金額)を支払わせなければならない。しかし、課税係官はこのように行わなかった。前述の金額を支払うとき控除した税を2516年の会計期間の益金(損金不算入)として加算し、新たに所得を計算し70,818.88バーツの増加法人税、及び延滞税を支払うように課税した。原告が課税に対して控訴したとき、控訴税務審議委員会は、前述の課税は正しくない。正しいのは、控除税額に相当する金額を2516年の会計期間の法人税として加算しなければならないと考えた。結果として、前述した支払のとき控除した税額と同額の増加税額と同時に延滞税を合わせて、課税係官の課税したところより多い216,391.09バーツの金額を支払わなければならないとした。問題は、控訴税務審議委員会が控訴人に対して課税係官の課税したところより多い税金を支払わせる判決をする権限があるかないかである。
 国税法第31条第2段落は、「税を増加させる控訴判決がある場合において、控訴人は前段落と同一の期限内に支払わなければならない。」と規定している。この規定は、控訴税務審議委員会が控訴人に対して課税係官の課税したところより多い税金を支払わせる権限があることを示している。どのようであれ判決によりこの増加した税を支払わなければならないとする権限に従う。特に課税係官の課税した税にのみ使うことかできるとすべきである。もし課税係官の課税した以外の税であるならば、控訴税務審議委員会は控訴人に対して税を支払わせる権限がないとすべきである。なぜなら課税係官が他の税を課税していないとき、その他の税は争点以外のことである。たとえば課税係官が納税者に法人税を支払うように課税した。納税者が控訴税務審議委員会に課税に対して控訴した。控訴税務審議委員会は納税者に法人税を支払うように課税することは、法に適合していると考えた。しかし、納税者が個人に賃金の支払のとき税金を控除しなかったので、納税者に対して控除税額と同時に延滞税も支払うように判決した。納税者に対して課税係官の課税したところより多い税金を支払わせなければならない結果となった。このような控訴税務審議委員会の判決は、法に適合していないとすべきである。なぜなら課税係官は、納税者に支払のとき控除すべき税金を支払うように課税しなかった。控除すべき税金と関係する論点ではない。控除すべき税金は論点以外のことであるとみなした。
 この裁判で課税係官が課税した税すなわち控訴税務審議委員会が原告に同様の法人税を支払うように判決した法人税について、ただ控訴税務審議委員会は、支払うとき控除した196,719.08バーツの所得税額は、所得を計算するとき益金であるとする課税係官の考えに同意しなかった。控訴税務審議委員会は、正しいとするのは前述の税は原告が税額控除した2516年ではなく、2515年の会計期間の法人税から税額控除しなければならないと考えた。そこで原告に支払うときに控除した税と同額の増加法人税額と同時に延滞税を支払うように判決した。この判決は、原告に課税係官の課税した税のほか、他の税を支払わせる判決ではない。

コメント
@争点となる課税係官が課税した税以外の税について新たに課税されない。従って裁判において他の税の納付不足が明らかになっても裁判の争点ではないので新たに課税されることはない。

A原告は2515年に税額控除(法人税の前払)すべきであったのに、2516年の法人税から税額控除した。従って2516年の法人税について、税額控除した金額に相当する法人税、同時に延滞税も支払うように判決があった。課税係官は支払金額から控除税額を控除した残額のみを損金として計算した。

B否認されたサービス料の内容については、「外国における仕事の事務所経費、タイにある原告の事務所と何も関係がないとすべき税金、電気代、暖房費である。提出された書類を読んでも何のサービスかわからない。たとえ原告が例として証言した人的損害保険料であっても、いかなる点で原告のためのサービス料であるのか詳細がないとされた。」具体的にどのような書類を提出したのかわかりませんが、事務所経費を請求額を計算するときの基の一部に使っただけなのかもしれません。特に当事者間の価格の決定の方法が慣例とは違った方法を使う場合には、第三者が請求書等を見て、この支払が何の支払なのかより明瞭にしておかなければならない。(的外れなことを言っているかもしれない)

C控訴税務審議委員会の判決ということで、216,391.09バーツと196,719.08バーツという数字が出てきて戸惑いましたが、前者は延滞税を含めた金額、後者は延滞税を含めない金額です。

 

 

[25]課税係官の調査に会計帳簿を提示しなかった場合の課税(最高裁の判決1283/仏暦2526西暦1980原告は法人、被告は国税局)

 国税法83条の3は、事業場又は他の場所(もし他の場所で保存するならば事業者が書面で前もって課税係官に知らせる)で、事業者に会計帳簿及び書類を保存させることを規定している。原告が会計帳簿及び書類を事業場ではなく他の場所で保存し、83条の3で規定されているように書面で前もって知らせていないことは、83条の3の規定に故意に違反しており、92条に従って間違いであるとみなされる。
 法律に従って義務のある原告は、自己の事業場で会計帳簿及び書類を保存しなければならないが、会計帳簿及び書類を原告の事業場でなく他の場所で保存したことにより法律に違反した。その後、会計帳簿及び書類を燃やしてしまった。原告は事業場で会計帳簿及び書類を保存しなかった者であり、会計帳簿及び書類が焼失したという理由を、法律違反をしたことを原因として焼失したので、原告は召喚状に従って課税係官の調査に会計帳簿及び書類を提出できない理由として主張することはできないとすべきである。課税係官は、当然71条の(1)の規定に従って支出を控除する前の売上高の2%以内で原告の法人税を課税する権限がある。

解説
 
通常法人税は、収入から支出を控除した利益から徴収する。しかし、支出を控除しないで収入から徴収するいくつかの場合がある。その一つの場合に、法人又は法人格のある組合が、納付するため申告書を提出しなかった、会計処理しなかった、会計処理したが規定されたものに不充分だった又は、課税係官の調査、審問に会計書類もしくは他の会計証憑を提示しなかった場合がある。この場合、課税係官は、会計期間の支出を控除する前の収入又は売上高のいずれか多い方の5%(以前は2%)の法人税を課税する権限がある。もし支出を控除する前の収入又は売上高が明らかでないならば、課税係官はその会計期間前の収入又は売上高と比較して課税する権限がある。もし前の会計期間の収入又は売上高が明らかでないならば、適切と考えられるものにより課税することができる。(国税法71条の(1))
 もし会計書類又は他の証憑を課税係官の調査審問のために、提示不可能な理由により提示しなかったならば、たとえば他の場所で火災が発生し納税者の事業場に延焼し会計書類又は他の証憑が燃えてしまったこと又は、納税者の事業場で急に洪水が起きたとき会計書類又は他の証憑の移動が間に合わず、なくなり読むことができないことなどの場合。課税係官は、支出を控除する前の収入又は売上高から課税し徴収する権限がないとすべきである。
 この裁判において、もし原告の店に会計帳簿及び書類を保存していたならば、火事になっても問題になることはなかっただろう。なぜなら原告は他の場所での保存が問題となっているからである。最高裁は国税法83条の3は、事業者に会計帳簿及び書類を事業場又は、他の場所(もし他の場所で保存するならば事業者が書面で前もって課税係官に知らせる)で保存させることを規定している。原告が他の法人格のある組合の事務所に会計帳簿及び書類を保存することは、たとえ原告の店の事務所と隣接し持分をもつ同一の管理者がいても、原告の事業場で保存していることにならないとみなすことができる。法律に従って義務のある原告は自己の事業場で会計帳簿及び書類を保存しなければならないのに、他の場所で保存することにより法律に違反し、その後火事で会計帳簿及び書類を焼失してしまった。原告は事業場で会計帳簿及び書類を保存しなかったので、召喚状に従って課税係官の調査のため会計帳簿及び書類を提出できない理由を上げることはできないであろう。課税係官は、71条の(1)の規定に従って支出を控除する前の収入のの2%以内で原告の法人税を課税する権限がある。
 事業者に会計帳簿及び書類を事業場又は、他の場所(もし他の場所で保存するならば事業者が書面で前もって課税係官に知らせる)で保存させることを規定している国税法83条の3は、事業税(現在は廃止)の徴収についての規定である。法人税の徴収については規定はなく、さらに法人税を徴収する場合に準用する規定も法律にはない。法人税を徴収する場合に使うべきでない。特に刑罰として使うことにより税を徴収することは、たとえ収入を国の管理に使うための目的があっても有効な影響を与える一方、国民には効果がなくやる気を無くしてしまう。どの状態のどの人から税を徴収するかは、徴収するため明確にすることにより、規定された法律があることを明らかにしなければならないし、法人税の徴収については国税法は、83条の3又は、83条の3の規定を法人税の徴収について使うことができない場合に83条の3を準用して使うというような規定はない。それゆえ最高裁に対する敬意を持って、筆者は最高裁が83条の規定を法人税の徴収に関する事案であるこの裁判に使用することに同意しない。
 さらに、2515年11月24日の革命委員会の第285号13項がある。事業場に会計帳簿及び書類を保存することを強制している。会計署長又は会計官の許可を得た場合を除き、他の場所で保存することはできない。許可願い及び許可は事業登録局長が公告により規定した基準及び方法により行われなければならない。国税局長は会計帳簿及び書類を許可して保存する他の場所について基準及び方法を規定した事業登録局第15号の公告をした。本店、支店の事務所、事業に係る書類を保管する場所、取締役である管理者、持分を有する管理者、管理者、もしくは所有者が場所を使用する権利のある人であるその場所を意味している。さらに事務所で保存の許可を願うこともできるであろう。もし会計事務所が事業場と同じ県にあるならば、会計帳簿及び書類を許可を受けないで他の場所に保存(会計処理のため会計帳簿及び書類を会計事務所に持っていってしまうことを意味しているのではないか)することになってしまう結果により違反となるため2000バーツ以下の罰金に注意しなければならない。
 この裁判において最高裁は革命委員会の公告をより多く参照すべきであった。どのようであれ、筆者は納税者が召喚状に従って課税係官の調査のため会計帳簿及び書類を提出しなかった場合、もし提出できない理由があるならば、課税係官は支出を控除する前の収入又は売上高から法人税を課税する権限がないとすべきである。たとえ会計帳簿及び書類が納税者の事業場ではなく、許可願いを出していない他の場所で保存されていても同様に権限がないとすべきである。なぜなら他の場所で会計帳簿及び書類を保存することは、まだ許可願いを出していないし、2000バーツ以下の罰金を受けなければならないという結果があるだけである。このような場合、課税係官は、支出を控除する前の収入又は売上高から課税する権限があるとみなさせる法律の規定は、それゆえたとえ革命委員会の公告を参照しても、筆者は支出を控除する前の収入から課税する権限がないとすべきであると考えている。なぜならこの裁判の事実関係のように、原告が事業場に保存しなかったことにより会計帳簿及び書類が燃えてしまった場合、課税係官の調査審問のため会計帳簿及び書類を提出できなかった理由があるとみなすべきであるからである。 

コメント
@提出できないやむを得ない理由については、裁判所と筆者に違いはないようだが、この裁判の場合判決と筆者の考え方が違っている。

A事業場と事務所の違い
事業場には事務所は含まれていない解説だったが、

B83条の3は、現在の87/3にあたると思われる。92条は削除されている。

C法律にないから課税されない(例えば頭のいい人は抜け道をうまく捜す)とか、法律があるからこの程度の税負担で済む(例えば株の源泉分離課税制度、どんなに利益が上がっていても譲渡対価の5.25%)とか、課税されないようになにげなく法律を作る(例えば銀行等の救済のため貸倒要件の緩和、欠損金の引継ぎ控除)とか。細部まで法律により規定されると息の詰まる社会になってしまうし、かといって法律のない世界、機能しない世界も権力者によりどうにでもなってしまうので怖いし。モラルで判断といっても人によって基準が違うし。結局法律をうまく使えず、利益を享受できないひがみだが。それにしても、法律法律と理由もなく先にいわれると法律アレルギーになってしまいそうだ。それでも、法律に関する翻訳をしている自分がいる。

 

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