判 例(法人税)4

2000年10月25日

更新2001年3月25日

[16]受取人が誰であるか証明できなかった支出(1)(最高裁の判決2301/仏暦2531西暦1988原告は法人、被告は国税局)

 原告は課税係官により税務調査を受けた。原告は関係する種々の書類を提出し調査を受けた。しかし、原告が購入し顧客に月賦販売した商品の領収書を提出しなかった。従って原告が提出し調査を受けた書類が課税係官に認められないとき、原告の支出は受取人が誰であるか証明できない支出となる。原告は利益を計算するとき、収入から控除する権利はない。しかし、2519年、2520年の会計期間において原告は、賦課すべき所得から控除を認める経費の規定について、国税法に従って公布された勅令(2502年第11号第8条)に従って、収入の90%、80%の概算経費を控除する権利がある。課税係官が75%の概算経費を控除することは、法に合っていない。課税係官は、原告が控除する権利のある率で概算経費を控除することにより新たに課税しなければならない。
 

解説
 通常、会社又は法人格のある組合は、会計期間において生ずる収益及び費用から計算した利益より法人税を納付する義務がある。税務上の利益(課税所得)の計算においては、国税法に規定された条件に従い行わなければならない。たとえその条件が、一般に認められている会計基準と異なっていても従う(ここで会社計算上の利益と税務上の利益に差が出る)。特に益金から控除する損金は、国税法65条の3(1)〜(20)により損金とされない支出ではない。
 受取人が誰であるか証明できない支出は、65条の3(18)により損金とされないものとみなされ、利益を計算するとき益金から控除できない。
 原告が購入し顧客に月賦販売した商品の支出は、受取人が誰であるか証明できない支出であるとき、65条の3(18)により損金とされないものとみなされる。原告は税務上の利益を計算するとき益金から控除する権利はない。しかし、原告の事業において支出があるとき、課税係官は原告の商品の原価を明らかにするため、原告が提出した証拠から例を集めて支出を控除すべきである。原価が明らかになり、原告と顧客との間の月賦販売契約の中で明らかになった販売価格から控除して、平均利益率(原告の事業の経費をまだ控除していない)が24.46%であることが明らかになった。しかし、課税係官は、原告の事業の経費を明らかし平均利益から控除することに代えて、原告への課税に使う利益率を得るため、課税係官は国税法に従って公布された勅令(2502年第11号、個人所得税に適用される課税所得から控除することを認める経費を規定している)を使い、75%の概算経費を控除することにより増加税額と延滞税を課税した。その勅令を使うことを支持する法律がないだけでなく、勅令の中で明示している適用する率と合っていない。即ち勅令は2519年、2520年において、資産を月賦販売することによる所得は、75%ではなく順に90%、85%まで概算経費を控除すると規定している。筆者は、この場合、課税係官は原告の事業の経費を明らかにして、24.46%の平均利益から控除すべき(課税すべき利益を計算する)であり、、その勅令を使うことは法に合わないとすべきであると考えている。なぜならその勅令は個人所得税に使用される勅令であり、準じて法人税に使用することを許可する法律がないからである。

コメント
@筆者は日本と同様に原価、経費についてはわからなければ推定し、課税すべきであると考えている。

A判例では法人税についても概算経費を認めているが、筆者も言っているように「その勅令は個人所得税に使用される勅令であり、準じて法人税に使用することを許可する法律がない」し、また、国の政策として概算経費を認めるかもしれないが、課税の公平を考えた場合、概算経費の使用は例外とするほうがよい。ただし、企業にとって法律に規定された適当な概算経費の適用があることにより、労力とお金(税務と会計とのかい離が日本でも徐々に進んでおりますので、申告するときの調整に、より労力とお金が必要となってきている。特に公開企業でなければ、おおまかに会計処理及び税務申告ができるので、より労力とお金がより少なくて済む。)のかからない申告納税及び不当な更正の回避ができれば、税務の面でその国に投資するメリットが出てくるのではないかと思う。一般の人々に理解しがたい法律でがんじがらめになり、弁護士、公認会計士、税理士などの公的な資格者の商売が繁盛する社会は、必要性はあるが生産性があまりないので客観的にみていい状態とは言えないと思う。

 

[17]受取人が誰であるか証明できなかった支出(2)(最高裁の判決1678/仏暦2532西暦1989原告は法人、被告は国税局)

 原告は、綿をつむぎ、綿を織り、それを販売する事業を行っている。原告は2519年、2520年において多くの県の栽培業者及び協同組合から綿や紡いだ糸についての定期刊行物の中で明らかになっている価格と近い価格により順に、48百万バーツ余、47百万バーツ余で綿花を買ったことを参照した。しかし、原告が提示した領収書は、原告が自分で印刷したもの(日付、原告に綿花を販売した人の名前、数量、金額を明らかにする項目があり、また受取人のサインがある)である。原告はこれらの印刷した領収書に記入でき、簡単に真実と相違させることができる。審理の段階において、原告は、領収書に受取人としてサインした人を連れてきて一項目も審問させなかった。原告は3人の証人を連れてきて、原告に綿花を販売した者であるか審問させた。証人は、領収書が真実の金額を明らかにしていると証言しなかった。さらに、すべての証人は、領収書に受領者としてサインしていないと認めた。綿花の価格の審問に関連して審問した受領者の窓口としてサインした証人の運転手である原告の証人については、事実関係があやふやである。参照された価格で綿花を購入したという事実は認められない。被告が、月ごとの領収書に従って綿花の価格例を積み上げ、綿花の価格として平均した価格を使うのは根拠がある方法とみなされる。綿花の平均した価格が、原告が最初に参照した綿花の価格より低いときは、平均した価格に従うものとみなす。

解説
A.利益又は損失の計算は、国税法65条の2、65条の3で規定された条件に従って行われる。65条の2は、資産及び負債の計算の条件について、65条の3は、税務上支出とされないものについて即ち利益又は損失の計算に含まれない支出について規定している。

B.65条の3(9)(実際支払わないのに、自分で支払金額を決めた支出)について次のような判決がある。

2646〜2649/2516の最高裁の判決
 タイにおいて事業を行っている外国の商業銀行の支店は、外国にある本店と同一の法人である。2505年の商業銀行についての勅令は、タイの中に資産がある外国の商業銀行の支店に強制される。別個に貸借対照表を作成させる。銀行に対してタイでの事業を行うとき確固とした意味がある。本店から分離した法人という状況があることを明らかに保証するものではない。
 外国にある本店又は外国にある支店が、顧客から預かったお金を送金しタイにある支店に投資する。そのお金は銀行の本店又は支店の資産となる。本店又は支店は投資者である。たとえ外国にある本店又は支店が従わなければならない制約があっても、預金者に利息を支払わなければならない。利息は外国にある本店又は支店は本当の費用であり、タイにある支店の直接の費用ではない。タイにある支店が外国にある本店又は支店に利息を送ることは、外国にある本店又は支店の負担を軽減するための支出であるとみなすことができる。国税法65条の3(9)(10)により実際支払わないのに、自分で支払金額を決めた支出であるとみなすことができるし、会社又は法人格のある組合が所有者である資産に係る報酬であるとみなすことができる。これらは65条の2により利益を計算するとき支出とみなされない。65条により法人税の納付のため、利益に含めて計算しなければならない。前述の金額は利益の一部とみなされる。タイにある支店が前述の金額を外国にある本店又は支店に送金することは、利益処分をすることと同じである。従って70条の2(利益送金税)によりさらに所得税を支払わなければならない。

3773/2531の最高裁の判決
 原告は賃金の支払をしたと会計処理した。お金の受取人及び支払人のサインが明らかでないし、お金を支払ったという証拠は原告が作ったものであることが明らかとなった。それゆえ支出とみなされない。65条の3(9)により実際支払わないのに、自分で支払金額を決めた支出であるとみなされた。また、賃金の支払をするとき50条(1)により所得税を控除しておらず、52条によりそれを納付していない。原告が責任を認めて損益の賃金勘定の金額の3%の率で税金を納付することを申請し支払ったが、控除する税金は人それぞれ違う(例えば超過累進税率であるから、給料の高い人は税率も3%より高くなるし、給料の低い人は税率も3%より低くなるので、3%という一率ではない)。この裁判において原告が納税しなければならない及び国税局が税の支払を承認した法人税は、賃金を支払ったという証拠を決して認めていない。課税係官が課税すること及び控訴判決は法に適合している。

C.65条の3(18)により受取人が誰であるか証明できなかった支出について、法律は証明するための領収書がなければならないと規定していない。それゆえ他の証拠書類又は証拠品又は証人により証明することができる。証拠の信用性がどれだけあるかにより重みが違うであろう。

1050/2524の最高裁の判決
 米を商う団体では、習慣として精米所で米を購入するだけでなく、行商人からも購入する。この種の行商人は米を購入して販売(81条により非課税取引)しており、国税法105条により事業税(付加価値税導入前であると思われるが、現在は「事業税」が「付加価値税又は特定事業税」になっている)の登録をする必要がなく、販売者が購入者に対して領収書を強制的に発行する必要がない。もし領収書を発行するならば、105条の2の規定による項目(領収書の記載事項)が無くても良い。事実関係により、領収書が会社の証拠書類とするために会社が作成し準備したものである。裁判において原告が45人に達するまでの証人を連れてきて審問させた。証人は本当に領収書にサインをしたものであることを証言した。従って原告は本当に行商人から米を購入して、お金を支払ったとみなすべきである。領収書の金額を、利益を計算するとき支出として控除する権利がある。

D.支払人が支払を証明する領収書を持っていることは、常に領収書に従ってお金を支払ったということを認めなくてはならないということを意味していない。証明する領収書がどの程度認められるか否かは、当然支払の内容により審議される。次の最高裁の判例を考えてみる。

1600/2529の最高裁の判決
 原告は貿易センターを建設する事業を行った。いくつかの支払について領収書がなかったり、領収書の受取人の名前がなかったりしたが、支払についての重要書類はある。原告がいかに本当にお金を支払ったかということを証明する証拠書類がないとき、わずかな金額であるということにより認めるべきであるということは、全く法律に適合していない。土地を固める砂の購入費用の支払について、当初原告は費用として記帳しなかった。調査担当者が見つけたとき、原告は疑わしいと思われる領収書を持ってきて示した。しかし、受取人が証明できない支払であるとみなされ損金とみなされなかった。

3171/2531の最高裁の判決
 原告はゴムを商っている。原告がゴムを購入するときの経費に関する領収書から記帳することにより経費として控除した。ただし領収書には、販売者の名前はあるが姓名及び家の番地がない。しかし、原告はゴムの販売者及びお金の受取をひとつも証明できなかった。従ってその領収書は、経費として記帳し控除することができないものである。なぜなら誰が販売者であるか及び誰がゴムの販売のお金を受取ったか、わからないからである。それゆえ誰が受取人であるか証明できなかった支出であり国税法65条の3(18)により利益を計算するとき損金とみなされない支出としなければならない。
 被告は2526年の11月8日付の国税局の文書1810/18163に従って、原告が販売したゴムの原価を(売上の)95%と決定した。たとえ2526年11月8日前に原告が販売したゴムの原価を決定するとき使うことができなくても、原告に適合し及び効果が多い原価を決定することにあった(2526年11月8日前に原告が販売したゴムの原価にも95%を適用したのではないかと思う)。課税係官の課税、控訴審議委員会の控訴判決は、法律に適合している。

E.ここに解説している1678/2532の最高裁の判決は、たとえ支払人が証明する領収書があっても、常に領収書に従って受取人に対して支払があったと認めなければならないということはないことを示している1つの例である。
 この判決において、最高裁は原告が示した領収書を認めない2つの理由を挙げている。最初の理由は、原告が示した領収書は、原告が自分で準備し、作成した印刷したもの(日付、原告に綿花を販売した人の名前、数量、金額を明らかにする項目があり、また受取人のサインがある)である。原告はこの種の印刷したものに記入し、簡単に真実と相違させることができる。次の理由は、審理の段階において、原告は、領収書に受取人としてサインした人を連れてきて一項目も審問させなかった。原告は3人の証人を連れてきて、原告に綿花を販売した者であるか審問させた。証人は、領収書が真実の金額を明らかにしていると証言しなかった。さらに、すべての証人は、領収書に受領者としてサインしていないと認めた。証人の運転手が受取人の窓口としてサインをした人である。
 お金の受取人は、お金の支払者に領収書を発行する義務がある。いくつかの職業の受取人(105条により領収書を発行する義務がないもの)は、支払人に発行する領収書を持っていないという事実を認めなければならない。例えば労働者、農民、野菜の栽培者、果樹栽培者又は行商人である。事実がこのようであるとき、もし支払者が領収書を作って受取人にお金を受取ったとサインをさせるならば、裁判所及び国税局は直ちに否認しその領収書を認めないとすべきではない。そして、裁判所及び国税局は、その領収書に従ってお金の受取があったかどうか審議すべきである。その審理においては、裁判所又は国税局は、支払者が証拠として提出したその領収書に従って受取人がいなければならないと重々しく遵守すべきではない。なぜならいくつかの場合、その受取人を証人として連れてくることは難しい。例えば受取人が固定住所を持たない労働者又は行商人である場合、捜しても会えない。しかし、もし受取人が捜すのが難しくない人であるのに、支払人が証人として連れて来ない又は、裁判所に証人として呼び寄せるように召喚状を出すことを要請するならば、ここに解説している最高裁の判決のように、支払人は誰が受取人であるか証明できないお金を支払ったとすべきである。原告に綿花を販売するものは、商人、栽培者だけというのではない。まだ協同組合もある。原告は、領収書に受取人としてサインした人を連れてきて一項目も審問させなかった。原告は3人の証人を連れてきて、原告に綿花を販売した者であるか審問させても、証人は、領収書が真実の金額を明らかにしていると証言しなかった。それゆえ最高裁はその領収書を認めなかった。裁判における判決理由は正当である。

F.国税法65条の2(1)は、65条の3の中で明らかにしている項目は損金とみなさないと規定している。この規定に従って審議するとき、65条の3(18)により誰が受取人であるか支払人が証明できない支出は、当然全額損金とみなされない。全額を利益又は損失を計算するとき益金として戻し加算しなければならない。このように重々しく遵守することは、納税者に対して正当ではない。なぜなら販売する商品又はサービスには原価がある。国税局や裁判所は、法律の言葉に従って重々しく遵守せず、場合場合により原価を控除することを審議していくことになるだろう。

具体例
2301/2531の最高裁の判決([16]参照)
勅令2502年第11号第8条の概算経費率適用

3171/2531の最高裁の判決(上記D参照)
2526年の11月8日付の国税局の文書1810/18163の概算経費率適用

 ここに解説している裁判も同様である。綿花の購入費用に係る支出は、原告は誰が受取人であるか証明できない支出である。しかし、国税局は、月ごとの領収書に従って綿花の価格例を積み上げる方法により綿花の価格を決定した。そしてその価格を使って平均の価格を決めた。最高裁はこの方法には根拠のある方法であると考えている。

 

コメント
@月ごとの領収書に従って綿花の価格例を積み上げ、綿花の価格として平均した価格を使うのは根拠がある方法と認めている。また領収書の金額は適正な金額であると認めていることになる。

B「領収書がなければならないと規定していない。それゆえ他の証拠書類又は証拠品又は証人により証明することができる。」。従って正式な領収書がもらえない場合、社内で作成した領収書にサインをもらい代用する方法も認められることになると思う。ある日系企業ではこれにタイ人の身分証明書のコピーを添付しているとのこと。ただしタイ人は会社を移ったり簡単に移動してしまうので、裁判となった場合証人として使えるか。社員に対しての旅費の支給についても、調査のときその社員が在籍しているか。とはいえ社内の管理のためにも、必要であると思う。給料については、銀行口座を開くとき身分証明書がないと開設できないので銀行振込にすれば問題はないと思う。

C裁判において自分でできる範囲のことは努力する必要がある。捜せることができる証人は連れてきて証言させる

D概算経費率を適用することが認められる場合でも、まず納税者の実態にあった率がわかれば、それを使うことが優先する。

EFにおいて概算経費率が適用されているが、古いので現在も同じ率が適用されているかわからない。

 

[18]受取人が誰であるか証明できなかった支出(3)(最高裁の判決2213/仏暦2535西暦1992原告は法人、被告は国税局)

 たとえ原告が、船積み倉庫からの移動を監督する関税担当者、商品規格担当者、商品検査担当者にサービス料を支払っても、事業への効果があっても、原告のその経費が誰に支払われたか明らかでなく記帳されただけであるとき、誰が受取人であるか証明できない支出とされる。65条の3(18)により誰が受取人であるか支払人が証明できない支出として損金とみなされない。
 原告は顧客からトウモロコシを乾燥させ一定の湿度に保つことを受けた。トウモロコシの重量が、乾燥した後、保管中のトウモロコシの湿度が下がったこと及び運搬中に落ちたことを原因として損失した。原告は顧客に対してトウモロコシを購入して重量の損失した部分を補償することにより責任を取らなければならない。トウモロコシを購入して補償に充てた費用は、実際支払わないで自分で支払い金額を決めた支出ではない。原告はその経費を利益の計算に算入することができる。

解説
 
利益を計算するとき収入から控除する支出は、損金とみなされない国税法65条の3の支出に該当しないものである。受取人が誰であるか証明できなかった支出は、損金とみなされない65条の3(18)の支出である。この受取人が誰であるか証明できなかった支出は、たとえ本当に支払っていても、もし受取人が誰であるか証明できないならば、損金とみなされない支出であることを意味する、又は本当に支払っていない支出としなければならないというという問題がある。どちらにしても損金とされない支出とみなされる。この裁判のように、原告は船積み倉庫からの移動を監督する関税担当者、商品規格担当者、商品検査担当者にサービス料を支払い、記帳したが、誰に支払われたか明らかでない。その支払ったサービス料は、65条の3(9)の実際支払わないで自分で支払い金額を決めた支出により、損金とみなされない支出とみなされるかどうか。このように65条の3(9)が規定されているとき、本当に支払っているならば、65条の3(18)はどのような支出を意味するのか。もし本当に支払って、受取人が誰であるか証明できないならば、その支出は65条の3(18)により損金とみなされない支出とみなされる。なぜなら本当に支払っていないならば、どの支出も65条の3(9)が適用されるからである。それゆえ最高裁が、サービス料は65条の3(18)により損金とされない支出であると判決したことは、正しいとすべきである。
 国税法65条の2(1)は、65条の3で明らかにしている項目は損金とみなさないと規定している。このように規定しているとき、65条の3(18)により受取人が誰であるか証明できない支出は、全額損金とみなされない。全額を利益を計算するとき、益金として戻し加算しなければならない。しかし、その販売した商品又はサービスを原因として、当然原価や他の経費がなければならない。国税局及び裁判所の執行において、法律の文言により厳格に遵守せず、国税局及び裁判所は、次の最高裁判決から考えられるように、場合場合により原価及び他の経費を控除することを審議していくだろう。

2374/2532の最高裁の判決
 原告は会社であり、2518年から2520年までの会計期間において、食事を提供する事業を行っていた。国税局の調査のとき、食事の材料の購入費用として支払った支出を証明する証拠がなかった。従って65条の3(18)により損金とされない支出である。もし被告が厳格に法律の文言を根拠とするならば、利益を計算するとき損金とみなされない。被告は原告に対して食事の材料を購入するときの経費を控除しないという権利がある。しかし、被告は売上総額の50%に相当する食事の材料購入費を控除した。なぜなら原告に本当に支出があったと考え、原告にとって多くの効用があると思ったからである。これだけでなく被告は、水道代、電気代、炭代、電話代なども含めて控除した。売上総額の76%から78%に相当するまでの経費を控除した。課税係官の課税及び控訴審議委員会の控訴判決は法律に適合している。

 前述の裁判が、最初に課税係官の側から経費を控除することを始めたものとしてはすべてである。裁判所は控除する経費が少なすぎるかどうかを審議した。2301/2531の最高裁の判決([16]参照)のように、もし少なすぎると考えるならば、正しいと考えられる金額に従って増やす。1678/2532の最高裁の判決([17]参照)及び2374/2532の最高裁の判決(上記参照)のように、もし控除した経費が十分で適当な金額であると考えられるならば、訂正しないだろう。しかし、この裁判において課税係官は、経費を全く控除しなかった。経費を控除するかどうかは当然課税係官の裁量によるものではない。裁判において控除した経費が十分で適当な金額であるか審議する争点はなかった。この場合、正しいであろうか。
 筆者は、課税係官が実際に経費があるということを認めた事実関係において全く経費を控除しないという場合、裁判所は十分に経費を控除することを審議すべきでこれに関する争点はないということを厳格に遵守すべきである。納税するかどうか、どの程度支払うかということは、まず最初に政府と国民の両方の支払の部分に突き当たる。どの程度経費を控除することができるかということは、納税に突き当たる結果となる。これは国民の安定に関する問題である。
 裁判所はたとえ裁判において経費の控除に関する争点がなくとも、経費の控除について初めに審議に出すことができるようにすべきである。

コメント
@最初読んだときサービス料は、ワイロでそのため否認されたのかと思った。例えば関税担当者に通関を円滑にするためワイロを払うということを聞くし、正式の立ち会いであれば当然証拠書類もあるだろうし、ないというのもおかしい。かといってわざわざ判例として出して来ているし、ワイロ性が問題になっているわけではないので、やはり必要なサービス料であったのであろう。支払があったが、それが誰に支払われたか明らかでないということで否認された。日本では、金額の多寡、支払の事実の認定(税務当局はなかなか認めないと思う)の問題は出てくるが、支払があったと認められ必要不可欠なものであれば認められる経費であると思う。

A課税係官は顧客が負担すべき通常の損失であり、顧客に責任を押し付けられたものである。従って実際に支払わないで自分で支払い金額を決めた支出とみなした(購入についての証拠書類がなかったと思われる)。しかし、乾燥による重量減はあらかじめ考慮してあるし、保管によることなど原告に責任があることを原因とした補償費用なので、最高裁はこれを認めた。

B「受取人が誰であるか証明できなかった支出」についての判例や解説は、実務においてどうすればいいのか、どういう取扱がされるのか疑問に思っていたことをいくつか教えてくれたと思う。自分の中でも表面の一部であるが晴れ間が見えた気がした。事業全体の経費がわからない場合は推定により課税又は概算経費の適用が考えられるが、この裁判のように個々の取引について問題にされる場合、証拠書類がないときは否認されるだけになると思う。解説で「法律の文言により厳格に遵守せず、国税局及び裁判所は、次の最高裁判決から考えられるように、場合場合により原価及び他の経費を控除することを審議していくだろう。」となっているが、「たとえ裁判において経費の控除に関する争点がなくとも、初めに審議に出す」ことになっても、日本と同じように裁判官の中に法律はわかるが会計税務の専門家がいなことが予想されるので何を審議するのかさえわからない(私も税法を勉強する前は、どこがわからないのかもわからないので質問すらできなかった)と思いますので、実際上は難しいと思う。日本の場合、税理士がなんらかの形で裁判に参加できれば良いと思う。

 

 

 

[19]飲食業の所得を計算するときの支出(最高裁の判決2374/仏暦2532西暦1989原告は法人、被告は国税局)

 原告は株式会社である。2518年の会計期間において飲食業を行っていた。原告は、被告の調査において証明となる食事の材料の仕入代金を支払った証拠がない。従ってその支出は、国税法65条の3(18)の規定により損金とされない支出である。もし被告が、厳格に法律の文言を根拠とするならば、被告は食事の材料の仕入代金を全く控除しない権利がある。しかし、原告のため売上高の50%の材料費を控除した。なぜなら、原告には実際に支出があるとみなされたからである。原告にとって多くの益がある。この他に被告は、水道代、電気代、電話代などの経費を控除した。被告は合わせて売上の76%から78%の経費を控除した。課税係官の賦課、控訴審議委員会の控訴判決は法に適合している。

 

解説
 
支払人が、誰がその受取人であるか証明できない支出については、国税法65条の3(18)の規定により所得を計算するとき損金として計算させない。問題は、その受取人を証明するために示す領収書がなければならないかである。
 答えは、受取人を証明するために示す領収書がなければならないという必要性はない。なぜなら、国税法には領収書を呈示しなければならないと規定されていない。他の証拠書類、物証又は証人により証明することができるのは当然である。一方その証拠にどれだけの重みがあるかは、その証拠の信頼性がどれくらいあるかによるのは当然のことである。
 この裁判では、たとえ原告が2518年から2520年の会計期間において材料の仕入の領収書がなくても、裁判所は原告が証人や原告から権限の委任を受けた専門家を連れてこさせた。課税理由に対する反論や調査審問の段階における課税係官に対して証言した言葉に反論した。しかし、裁判所は専門家の証言を受け入れず、原告が2518年から2520年の会計期間において所得を計算するとき控除した材料の仕入は、国税法65条の3(18)の損金とされない支出であるとみなした。厳格に法律の文言を根拠とするならば、被告は所得を計算するとき、その支出を控除させず、全部を所得に加えさせる権利を持つ。しかし、国税局は、控除することを承認した。なぜなら原告の飲食業は、実際に材料の仕入の支出があるのは当然である。これだけでなく国税局は水道代、電気代、炭代、電話代などを材料費と合わせて、売上高の76%から78%を控除した。国税局は適正に原告の税額を見積もったと思う。

 

コメント
 
課税係官は、2518年から2522年までの税務調査において支出の証拠書類はなかったが、売上の50%の経費を認めて法人税や延滞税を課税した。控訴審議委員会への控訴において2521年、2522年の領収書や証拠書類を集めて提出し認められたが、他の年については証拠書類がなく認められなかった。裁判において原告の委任を受けた専門家が、一皿あたり約70%の直接原価があり、これには他の経費は含まれていないと主張した。もしこれが本当であれば他の税金の支払いもあり原告には利益がないことになり事業を継続していけないので、被告の方に信頼性があると判断された。結局原告は証明できず、被告はこの事業の一般的な原価は50%であることからこれを基に経費を計算した。
 経費として認められるためには、とにかく証拠書類が必要とされる。

 

[20]接待費の支出(最高裁の判決2528/仏暦2531西暦1985原告は法人、被告は国税局) 


 
支払者である原告が、誰が受取人であるか証明できない製造の賃金の支出は、国税法65条の3(18)の規定により所得を計算するとき損金としてみなさない。
 2514年、2515年の会計期間に原告の支払いにより呈示すべき、帳簿記入した証拠があることにより本当に支払ったと考えられる接待費。これは十分に適切な経費であるように思われる。被告は「原告が本当に支払っていない」と反論していない。ただ原告が支払った接待費は、「適切な金額を超える高い金額である」と述べた。その支出は、65条の3による損金とみなさない支出ではない。原告は、2514年、2515年の会計期間の所得を計算するとき経費として控除する権利がある。                      

解説
 
法人税を支払うため所得の計算は、国税法65条、65条の1、65条の2、65条の3の規定に従って行わなければならない。すなわち、通常12ヶ月ある会計期間において生じた収入からその会計期間における支出を控除することにより計算しなければならない。計算の結果が利益である。しかし、収入から控除する支出は、20項ある65条の3の規定により損金とされないものでなければならない。以前の65条の3(4)の支出については、「次のものは所得を計算するとき損金とみなさない。過大な部分の接待費又はサービス料」と規定していたが、現在は、「次のものは所得を計算するとき損金とみなさない。省令により規定された基準に従って認められない接待費又はサービス料」と規定している。この新しい規定は、国税法を修正する勅命第5号、17条(2521年)により国税法を修正している。2522年1月1日以後開始する会計期間に適用される。接待費又はサービス料に関係する支出を控除するため確かな基準と率がある。古い法律のようにどのような場合適切な部分を超えるとみなされるかは、問題にはならない。新しい法律に従った省令、すなわち「国税法に従って発令された省令第143号(2522年)」は「国税法に従って発令された省令第150号(2523年)」により修正された。これらの省令によりこのような接待費又はサービス料に関係する支出を控除するときの基準を規定した。

  1. 所得を計算するとき損金とみなされる接待費又はサービス料は、2、3、4、5に規定している基準に従って可能とされなければならない。
  2. 接待費又はサービス料は、一般的に事業を行うため慣習に従って必要とされるものでなければならない。接待費又はサービス料を受ける人は、会社又は法人格のある組合の従業員であってはならない(社内接待はダメ)。ただし従業員が接待するときいっしょに参加する職務がある場合を除く。
  3. 接待費又はサービス料は、事業に効果をもたらす接待又はサービスと直接関係する経費である。たとえば宿泊代、食事代、飲み代、ショーを見る費用、スポーツに関する経費など。又は接待又はサービスを受けた人に対して与えた物品費である。接待又はサービス一回につき一人あたり500バーツを超えないもの。
  4. 接待費及びサービス料の金額は、支払わなければならない金額と同額を損金として控除する。しかし、合計金額が、会計期間において支出を控除する前の、利益を計算するとき含めなければならない収入金額もしくは売上高又は、会計期間の終了の日までに払込を受けた資本の金額に対して率を乗じたものを超えないようにしなければならない。このように収入金額もしくは売上高又は資本の金額を使うか選択することにより、より多く損金にできるであろう。
    1. 500万バーツを超えない金額 2.0%
    2. 500万バーツを超え2千万バーツを超えない部分の金額 1.0%
    3. 2千万バーツを超え5千万バーツを超えない部分の金額 0.5%

C5千万バーツを超える部分の金額 0.3%

(2523年省令第150号により修正され、2523年1月1日以後の会計期間に適用される。)

  1. 接待費又はサービス料は、接待費又はサービス料を承認し支払いを命じた取締役、株主、管理者、    又はこれらの者から委任を受けたものがいて、接待費又はサービス料として支払ったお金の受取人の領収書又は証拠がなければならない。ただし国税法により受取書を発行する義務のない受取人を除く(国税法105条参照)。
  2. この省令は、2522年1月1日以後開始する会計期間から適用される。

 この裁判の接待費は、2514年、2515年の会計期間の接待費である。そこで、判決において古い法律を使わなければならなかった。すなわち税金を支払うため所得を計算するとき損金として控除する接待費は、適切な金額を超えない部分である。適切な金額を超える部分は、所得を計算するとき損金とされない支出とみなされる。
 最高裁において、両年に原告が支払った接待費は、適切な金額を超えておらず、原告が支払った金額を所得を計算するとき損金として控除するという判決があった。
 もし、前述の接待費が現在の接待費とするならば、たとえ原告が実際支払っていても原告は全額ではないが控除できるであろう。原告は、新しい法律に従って発令された省令の中で規定された基準及び率により控除されるだけである。

 

コメント
@製造の従業員の賃金については、領収書に記載された住所の住民票にはいくつか受取人の名前がないし、いくつかは住所番号が存在しなかった。6人のうち一人も連絡がとれない。信頼性に欠ける。また原告は製造を行っておらず、販売のみである。これらのことから損金とみなされなかった。タイでは従業員を雇用するとき身分証明書や住民票のコピーを提出させている。
 接待費について、被告は、接待は1月あたり20日に達し、金額も年あたり100万バーツを超えているから適切な金額を超えていると述べている。具体的に何を根拠に適正な金額を判断しているか述べられていない(2514年の売上4300万余、接待費104万余、2515年の売上5300万余、接待費139万余である。)。適切な金額がいくらであるか。社会の状況、慣習、接待する相手の地位などの条件により違うのが普通であるが、税務執行時に一回一回判断が必要になり手間がかかってしまう。また判断できる程精通している人がどれだけいるか。納税者にもどこまでが適正であるか判断がつかないことから、簡便的に総枠基準を設けたと思う。

A現在省令143号は、2542年省令第222号により修正され、2542年1月1日以後の会計期間に適用される。

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