判 例(法人税)3

2000年7月31日

更新2000年8月25日

[11]税務上の支出とはどのようなものか。利益を計算するとき支出とされないもの(3)(最高裁の判決5124/仏暦2531西暦1988原告は法人、被告は国税局)

 長い期間、原告のために仕事を行ってきたマネージャーである役員の功績に対する報酬のため及びその相続人の支援のため、その相続人に支払ったお金は、必要性及び支払うべき理由があるとみなされる退職金としての性質をもつ。国及び多くの法人において、このような性質を持つお金の支払をすることは根拠があるとみなされる。それは、義務として一般的に公務員及び従業員に対して支払う意志があること及びこのようなお金は、原告が設けた規程と役員会での決定に従って支払われるからである。原告は、国税法65条の3(3)(贈与又は寄付)の規定に該当するような支払をしていない。たとえ原告がstaff ritirement benefitとして会計処理をしていても、税務上支出とされる。この原告の支出は65条の2、65条の3に従って支出とされないものとする必要はない。
 原告は2520年5月26日に仕事の開始の日、2520年9月10日を終了の日とする契約により、建物の修理をした。このように、2520年に生じたその会社に対して支払をしなければならない原告の義務及びその会社の請求権がその会計期間に生じ、発生主義を適用する原告は2520年の会計期間に建物の修理費用を計上しなければならない。原告がその費用を2519年の支出として計上することは、法に適合していない。65条の2、65条の3(9)に従って支出とされない。
 

解説
 法人税を納付するため利益の計算については、65条、65条の2、65条の3の規定に従って行わなければならない。会計期間において生じる収入から収入に関連する支出を控除することにより、通常12月の会計期間で計算しなければならない。その結果が納税するとき基礎となる利益である。しかし、収入から控除する支出は、65条の3により税務上支出とされない支出ではない。
 たとえ実際支払っていても、もし税務上の支出とされない支出であるときは、利益を計算するとき収入から控除できない。もし利益を計算するとき収入から控除したならば、課税係官は、支出とされないものを会社計算上の利益に加算して利益を調整する。納税者は、加算税、延滞税といっしょに増差税額を納付しなければならない。課税係官が支出とみなされないものと考えている支出が、本当に支出とみなされないものなのか否か。この裁判のように争うことになるかもしれない。この裁判では課税係官が支出とみなさないものが2つある。
 1つめの支出、即ち原告が、原告のマネージャーである役員の相続人に支払った486,000バーツのお金。課税係官は支出とみなされないものと考えた。なぜならそのお金を支払うことは65条の3(3)の規定の性質を持ち、確かな規程はなく原告の役員会で決定した金額を支払ったからである。また原告は、その金額を報酬(退職金)の科目で会計処理し、実際に支払わなければならないが、原告はstaff ritirement benefitとして会計処理をした。しかし、最高裁は、その支出は65条の3(3)の規定に該当する性質を持たないと考えた。なぜならマネージャーである役員の功績に対する報酬のため及びその相続人の支援のため、その相続人に支払ったからである。必要性及び支払うべき理由があるとみなされる退職金としての性質をもつ。
 2つめの支出、即ち原告が、1,004,000バーツを支払って、2519年の会計期間の支出として記帳した修理費。課税係官は、次のように考えている。建物の修理の契約が2520年の5月16日にされ、修理の開始日と終了日が2520年内であることが明らかである。原告が2519年の会計期間の支出として記帳することは、法に適合していない。また新たに価値を付加する契約内容から判断すると、原告の修理は以前の状態を維持するための修理ではない。従ってこの支出は国税法により支出とされないものである。最高裁は、「原告が建物修理会社に注文した修理の契約は2520年の5月16日にされ、2520年の5月26日修理の開始日、9月10日終了日がであることが明らかにされている。建物の修理の注文を受けた会社の修理費の請求権は2520年に発生し、原告の支払わなければならない義務は同様に2520年に生じた。発生主義を適用している原告は、2520年の会計期間においてその支払を記帳しなければならない。原告が支出を2519年の会計期間の支出として記帳することは、法に適合していない。国税法65条の2、65条の3(9)に従って支出とされない」と判決した。この最高裁の判決は、2つめの支出は、2519年の会計期間の支出とされないものであるとしている。そこで次に考える問題は、2つめの支出が、2520年の会計期間の支出とされるものであるかどうかである。
 原告は2519年の会計期間の支出として記帳したが、それは65条の3(9)に従って支出とされないものである。課税係官は他の会計期間の支出であると証しただけでなく、課税係官は、その修理は新たに価値を付加した性質を持つものであり、以前の状態を維持するための修理ではないと証した。それは、投資としての性質のある支出又は資産の拡張、変更、移設もしくは価値を付加するときの支出で以前の状態を維持するための修理ではないものと規定している65条の3(5)に従って支出とされないものである。もし支出が課税係官が証したところに従って資産としての性質を有する支出であるならば、原告はその金額の全部を2520年の会計期間の支出として控除することはできない。(この種の支出は、損益計算書の中で収入から控除する項目である支出とは異なり、資産の科目に計上しなければならない。)しかし原告は毎年減価償却費という形で控除することになる。資産の減価償却費の控除について国税法の意味する所に従ってこの時点で強制されている勅令(2509年第22号5条5(1)。現在は2527年の勅令145号)の中で規定されている率に従って行う。もし支出が以前の状態を維持するための修理とみなされるならば、資産としての性質をもつ支出ではなく、収入から控除する項目の支出である。それは、65条の3(5)に従って支出とされない支出ではない。原告はその支出の金額を2520年の会計期間の支出とすることができる。
 その修理は、資産としての性質をもつ支出であるか又は収入から控除する項目の支出であるか言うまでもない。争っている会計期間の次の会計期間である2520年の会計期間において、原告の利益を計算することに対して影響を与える。即ち2520年の会計期間の利益の総額の減額となる。多く又は少なく減額となるかは、支出がどのような性質に該当するかにより自然に決まって行く。もし収入から控除する項目の支出としての性質に該当するならば、資産としての性質をもつ支出としての性質に該当する場合より多く減額することになるだろう。なぜなら収入から控除する項目の支出は、全額を支出として控除できる。しかし資産としての性質をもつ支出は、全額を支出として控除できない。勅令の中で規定されている率に従って、毎年減価償却費という形で控除できるのみである。2520年の会計期間の利益の調整(減価償却費の計上)だけでなく、2521年以後の会計期間において、利益を調整しなければならない結果となる。(現在の65条の2(3)は補足されている)

コメント
1.退職金に関する経過
@2518年10月27日の役員会で、12年を超えて働いている長(フゥアナーとなっているので管理職でなくても班長などでも良いのでは)については、法律に従って補償を支払うことを決めた。
A2518年12月6日の役員会で、10年を超えて働いている従業員については、辞めるとき報酬を支払うことを決めた。
B2519年7月8日の役員会で、役員の退職金として486,000バーツを支払うことを決めた。
原告は税金を回避する意志はなく、その後も上記に従って継続して支払っている。(規程を設けることにより、恣意的な利益操作を排除している)
C退職金の計算
30,000バーツ(最後の月額報酬)×60%×27年(勤続年数)=486,000バーツ

 支給金額自体は問題になっていない。役員の退職金と言っても算定基準となる勤続年数も長いことからどちらかというと使用人分の退職金ではないのか。タイでは役員分、使用人分とを分けて計算しないのか。日本では一般的に使用人分については従業員退職規程に従って計算し、役員については役員退職規程に従って計算する。

2.減価償却費
 タイの簿記の本を見ると期中取得の場合は年間の償却費を月数按分となっている。

3.staff ritirement benefitの意味はよくわからないが、対価性のない無償の寄付又は贈与ではないかと思う。重要なことは、形式的なタイで退職金を他の項目で記帳していても、中味から判断し退職金として税務上の損金とされたことである。

 

[12]資産としての性質をもつ支出(1)(最高裁の判決760/仏暦2534西暦1991原告は法人、被告は国税局)

 新しい鉱山の許可証(期限切れのため)を得るための準備に係る支出は、鉱山の許可の権利に係る支出である。原告がお金を支出したとき、許可証を得た後に、支出したことによる経済的利益を得るだろう。従って原告の資産とみなすことができる。鉱山の以前の状態を維持するための修理の支出ではないので、65条の3(5)により利益を計算するとき税務上支出とみなさない投資としての性質を持つ支出である。原告は、利益を計算するとき、その支出を経費とすることができない。
 たとえ原告が加算税の賦課をやめることを裁判所に控訴しても、裁判所が加算税を減額する権限があっても、原告の請求を超えてまで審議しない。

解説
 支出は2つの種類に分けられる。1つは利益を明らかにするための支出(収入から控除する項目)、もう1つは投資としての性質を持つ支出である。利益を明らかにするための支出は、支払った会計期間において利益を計算するとき収入から控除できる支出とみなされる。例えば月給、水道代、電話代、郵便代、新聞代である。一方投資としての性質を持つ支出は、資産とみなされ、支払った会計期間においてその支出を支出として控除することはできない。多くの会計期間において減耗費及び減価償却費という形で控除しなけれけばならない。例えば事業において購入して使用する机、椅子、タイブライター、コンピューター、機械、建物、自動車の購入費。
 どの支出も、利益を明らかにするための支出又は投資としての性質を持つ支出になるか審議するときの原則、最高裁は所有権の原則としている。即ち支払ったとき、事業上の資産の所有者になるかどうか。もし所有者になるならば、投資としての性質を持つ支出とみなされる。もし所有者にならないならば、利益を明らかにするための支出とみなされる。これは949/2519の最高裁の判決からも考えられる。「65条の3(5)により投資としての性質を持つ支出は、会社が支出から経済的利益を得る支出だけを意味していない。しかし会社の資本を増加させるものとして生じる支出でなければならない。即ち会社の資産である。会社の資産とならない港、交差点、道路を建設することにおいて原告が支払った支出は、65条の3(5)により投資としての性質を持つ支出ではない。」と判決した。
 国税局にとって、支出が投資としての性質を持つ支出であるかという審議の中で1つの原則だけを使うことはできない。経理の専門家が使うのと同じく3つの原則を使う。即ち所有権の原則だけでなく、経済的利益の原則及び重要性の原則も使う。どのような支出も、もし支払をして事業主体が資産の所有者になるならば、その支出は投資としての性質を持つ支出とみなされる。しかし、もし支払をして事業主体が資産の所有者にならないならば、その支出を利益を明らかにするための支出として急いで結論を出すことはまだできない。経済的利益の原則によりその支出が一会計期間を超えて、事業が経済的利益を受けるか審議しなければならない。もし事業が一会計期間を超えて経済的利益を受けているならば、その支出は投資としての性質を持つ支出とされるのは当然のことである。いずれにしても従わなければならない。ただしどのような支出も、たとえ1つめ又は2つめの原則に該当しても、まだ投資としての性質を持つ支出とみなすことはできない。もしその支出が500バーツ未満であるならば、3つめの原則(重要性の原則)により審議する。例えば事業において管理者が事務所で使用するため、価格が100バーツのあし植物を購入することは、たとえ事業主体があし植物の所有者となり1つめの原則に該当するとみなされ、又は一会計期間を超えて経済的利益を受けて2つめの原則に該当するとみなされても、500バーツに満たない100バーツの価格のあし植物であるときは、その支出は投資としての性質を持つ支出とみなすことはできない。3つめの原則により1つ500バーツ未満の金額は、利益を明らかにするための支出とみなさなければならない。もし事業の規模が大きいならば、その金額を増やすことができる。例えば5,000バーツ未満の金額を、利益を明らかにするための支出とみなすことができる。
 期限切れにより新たに鉱山の開発願いのための準備費用は、支払って原告に許可を得させるための支出である。鉱山の開発の許可証を得た権利は、1つの資産である。所有権の原則でこの支出を捉えると投資としての性質を持つ支出である。最高裁は投資としての性質を持つ支出と判決した。これは法に適合している。
 調査において課税係官に協力的であるときに、加算税を減額できる適切な理由がある場合だけ減額できる。たとえ原告が加算税の賦課をやめることを裁判所に控訴しても、裁判所が加算税を減額する権限があっても、原告の請求を超えてまで審議しない。原告の請求を超えて加算税の減額することは、民法142条に適合していない。

コメント
 日本では、会社規模は関係なく20万未満の繰延資産、資本的支出とされる修理費、10万円未満の少額減価償却資産などは一時に損金算入できる。3つめの重要性の原則については、タイでも実務を行う上で金額の基準が必要であると思う。ただ解説で述べているように事業の規模が大きくなると基準金額も大きくすることができるとなっているが、何らかの基準があるのか。

 

[13]資産としての性質をもつ支出(2)(最高裁の判決2735/仏暦2532西暦1989原告は法人、被告は国税局)

 原告は、映画の購入、制作、新たに映画フィルムを複写する事業を行っている。収入の大部分が、映画フィルムの賃貸及び原告が輸入しもしくは自分で制作した映画又は新たに複写した映画を上映し、映画館と利益を分けることから生ずる。新たに複写したフィルムとして原告が外国から輸入又は自分で制作した映画は、民商法第99条に従って原告の商品ではなく資産とみなされるべきである。外国から映画を輸入するときの、映画を制作するときの及び映画フィルムを複写するときの原告の支出は、投資としての性質を持つ支出である。又は資産は、65条の3(5)により利益を計算するとき支出とみなされない支出と解釈される。

解説
1.会計原則に従って事業の支出は、利益を明らかにする支出と投資としての性質を持つ支出に分けられる。利益を明らかにする支出とは、支払う会計期間において利益を計算するとき収入から控除する支出とみなす。投資としての性質を持つ支出とは、支払う会計期間において全部を支出として控除できない資産とみなし、多くの会計期間にわたり減耗費及び減価償却費の形で控除しなければならない。支出が、利益を明らかにする支出又は投資としての性質を持つ支出に該当するか審議するとき使う原則が3つある。
@経済的利益の原則
 一会計期間を超えて事業に対して利益を与える支出かどうか判定の基準になる。この原則は経理の専門家が長く根拠としている原則である。
A所有権の原則
B重要性の原則
 この原則は、基本的な会計の概念からきている。それは、どのような情報を公開すべきか審議するときにおいて、特に重要な情報を審議して公開する。重要な情報は、決定に影響を与える。従って重要でない情報は、公開すべきではない。なぜなら重要なものを逆に不明確にしてしまうからである。

2.この裁判では、原告が支払った争いになっている支出が、投資としての性質を持つ支出であるかという問題がある。原告は、その支出を商品として考えており投資としての性質を持つ支出でないと考えている。原告は、支払う会計期間において全部を支出として控除した。しかし、国税局の課税係官及び控訴審議委員会は、投資としての性質を持つ支出であり支払う会計期間において全部を支出として控除できないと考えている。この時点で強制される法律として、2509年の第22号において資産の減耗費又は減価償却費の控除について国税法に従って発令された勅令(現在は2527年勅令第145号による)により一会計期間当り20%の率により減耗費及び減価償却費の形で控除しなければならない。最高裁の税裁判部門は「原告が支払った争いになっている支出が、投資としての性質を持つ支出である」と判決した。
 原告が支払った争いになっている支出すなわち
@輸入するときの権利及び使用料からなる原告が外国から輸入した映画についての支出
A映画を制作するときの支出
B新たに映画を複写する支出
この種の3つの支出は支払により、一会計期間を超える利益を得ている。原告が制作又は新たに複写する映画フィルムの所有者として5年間外国映画の著作権の使用権を得た。このような支出は、500バーツ未満の支出ではないので重要性の原則に該当しないが、経済的利益の原則及び所有権の原則に従って投資としての性質を持つ支出である。
 原告が映画フィルムは商品であると言っているのは正しくない。なぜなら映画フィルムは、売却するためのものではない。上映して映画館と利益を分け、又は利益のため貸与するものである。原告が上映又は貸与して長期間利益を得た後、古いフィルムとして売却する部分。原告が画像の無いフィルムを購入しそれを売った場合と異なる場合、後で当然フィルムが商品とみなされる場合、又はもし原告が映画フィルムを新たに複写し、上映して映画館と利益を分けないでもしくは利益のための貸し出ししないで売ったならば、映画フィルムは商品とみなされるべきである。たとえ商品としても、複写するときのフィルム代及び使用料を支払う会計期間において全部支出として控除できない。どの程度控除できるだろうか。おのおのの会計期間による。商品の売上総額すなわちフィルム又は映画フィルムはどれくらいあるか。売り上げた商品の原価を明らかにし、関連する原価及び所得を対にする原則に従って行う。売り上げた商品の原価を明らかにするときは、会計期間の終了の日に残っている商品に価格を付ける方法(前期末の商品+当期の仕入−当期末の商品=原価)により計算できる。国税法65条2(6)において、原価又は市場価格のうち低い価格に従って価格を付けることを規程している。それゆえ、たとえ3種類全部の映画フィルムが商品(実際は違う)であっても、3種類のフィルムのための経費を支払う会計期間の支出として全部控除することができるが、まだわからない。会計期間において売上金額を審議しなければならない。そして残った商品の価格を付ける方法により原価を明らかにしなければならない。

コメント
 日本でも商品に原価又は市場価格のうち低い価格により価格を付けることができる低価法が認められているが、実務上市場価格をいくらにするか難しいし、多大な労力を必要とするので原価で計算している所が多いと思う。日本は選択性だがタイの国税法は強制である。低い価格を使うと課税利益が減ることになるので原価で計算しても問題ないのではと思う。
 解説において明確な答えが出ていないが、これは契約等の条件により取扱が変わるためである。しかし、この裁判では明らかに投資としての性質を持つ支出としている。またタイでは5年間の外国映画の使用権の場合は、無形固定資産として年率20%で償却して経費に算入となる。

 

[14]警察署を建設するための土地を寄付したが、支出としてどれだけ控除できるか(最高裁の判決319/仏暦2527西暦1984原告は法人、被告は国税局)

 原告は土地の分譲を行っている。警察庁に対して警察署を建設するため、又は一般の人の利益のため、分譲する土地の一部分を寄付した。他の目的はなく、慈善の寄付である。また、特に収入から控除するため(収入に対応するもの)又は原告の事業のためではない。利益の1%を超えない範囲で、利益を計算するとき支出とみなすことができる。

解説
 
一般的に会社又は法人格のある組合は、会計期間において発生する収入及び支出から計算することができる利益から法人税を納付する義務がある。
 利益を計算することは、一般に認められている会計の基準及び方法によらなければならないだけでなく、国税法に規定する条件にもよらなければならない。特に収入から控除する支出は、利益を計算するとき税務上の支出とされるものでなければならない。利益を計算するとき税務上の支出とされないものは、国税法65条の3において20種類規定されている。
 利益の1%を超えない範囲の慈善の寄付(65条の3(3))を除き、個人的な支出、贈与又は寄付の性質をもつ支出及び特に収入から控除するため又は事業のための支出でないもの(65条の3(13))などは、利益の計算に含めない支出とみなさなければならない。換言すると収入から控除できない。
 一般的に寄付のための支出は、利益を計算するとき支出とみなされないということに注目して下さい。もし慈善の寄付のための支出であるならば、国税法は利益の1%を超えない範囲で支出として控除することを認めていることにより、全部を支出としないということはない。
 この裁判で問題は、原告が警察署を建設するため警察庁に寄付した土地が利益を計算するとき税務上の支出とされないものであるか、どれだけ支出とされないものがあるかということである。原告は「高い価格で他の土地を購入させるため」という寄付するときの原因を挙げ、もし事実が原告の言う通りであるならば、原告の寄付は特に利益のため又は事業のために行われていると考えるべきである。65条の3(3)により利益を計算するとき支出とみなさないようにすべきではない。しかし、事実は原告が言うようではない。なぜなら事実は、原告から権限の委任を受けた人(税務代理人)が、税務調査係官に対して「他の目的はなく、一般の人の利益のため土地を寄付した」と陳述したことが明らかとなったからである。他の目的はなく、一般の人の利益のための寄付の場合であるときは、原告の寄付は特に原告の利益のため又は事業のために行われているとみなさない。ただ、慈善の寄付のための支出であるとみなされる。原告は利益の1%を超えない範囲でのみ支出として控除する権利がある。(現在の65条の3(3)は改正され1%が2%になっている)

コメント
 
@事業のため(日本的に考えると、警察署のための敷地を寄付しても、近くに警察署があればより安全に住むことができると考えられ、隣接する土地をより高い価格で販売できる。)であれば全額支出とされ、公共的な寄付であるならば上記のように一定の金額を支出とすることができる。

 Aタイでは税法は、公認会計士は監査が主で、弁護士が税務申告や会計事務を行っている。

 

[15]土地の購入のための借入金利息は支出とされるか(最高裁の判決2347/仏暦2536西暦1990原告は法人、被告は国税局)

 原告が資産として借入金により購入した土地について、土地の購入代価として支払ったお金は、国税法65条の3(5)により投資としての性質をもつ支出である。借入金の利息は、たとえ直接的に土地を得る支出でなくても、借入れて土地を購入したことから生じた支出である。結果的に金融機関からお金を借入れて土地を購入したことを原因とする支出とみなされる。原価として土地の価格の一部分とすべきである。商売を行うときの一般的な経費として収入から控除するものではない。また、他の人に貸すために借入れて土地を購入したことから生じた利息は、土地の購入価格と同様に投資としての性質をもつ支出である。国税法65条の3(5)により利益を計算するとき、経費として控除できないだろう。
 たとえ建物付の土地は、同様に不動産であっても、この2種類の資産の減耗損及び減価償却費を控除するとき、状態及び基準は同じではない。建物の状態は時間の経過に従って減耗及び減価償却すべきである。資産の減耗損及び減価償却費の控除について国税法に従い発令された勅令第145号(2527年第4条(1))は、建物の原価を基に法律が規定している率により、減耗損及び減価償却費を毎年控除することを認めた。一方土地は減耗及び減価償却を控除することはできない。勅令第145号第4条(1)は土地の原価を基に減耗及び減価償却を控除することを認めていない。土地を購入するための借入金利息は、建物を購入するための借入金利息と比較することはできない。土地を購入するための借入金利息は、利益を計算するとき経費として控除できない。

解説
 
事業の支出は、利益を明らかにする支出(収入から控除)と投資としての性質をもつ支出に分けられる。もし減耗及び減価しない資産、例えば株、金、荷物運搬の家畜は、資産の購入又は取得に関連する支出を減耗損及び減価償却費という形で控除することはできない。換言するとその支出は経費として控除できない。これだけでなく、土地及び商品は、減耗損及び減価償却費を控除できない資産である。なぜなら資産の減耗損及び減価償却費の控除について国税法に従い発令された勅令第145号第4条(5)は控除を認めていない。それゆえ土地の購入又は取得のため支払う支出、換言すると土地の価格又は原価は、利益を計算するとき、経費として控除できない。建物は土地と違って、たとえ不動産で土地と同じように投資としての性質をもつ支出であっても、購入又は建設のために支払う支出、換言すると建物の価格又は建物の原価は、減耗損及び減価償却費という形で控除できる。なぜなら勅令は控除を認めているからである(第4条(1))。建物及び土地の価格又は原価がどのような経費から構成されているか問題がある。
 タイの会計士協会は、会計基準を公表した。建物及び土地に関する会計基準書、即ち「会計基準第9号11ページの土地、建物、器具備品のための会計処理について」は、土地、建物、器具備品の価格を規定している。輸入関税、購入に関係する他の税金及び資産を使える状態にするいろいろな直接的な経費の全部を含めた価格となっている。割引及び購入先からの値引のお金は、実際の購入価格を計算するため控除しなければならない。会計基準書の付編の中に、土地、建物、器具備品の価格は、購入代価、購入に関する税金及び資産を探し始めてから使える用意ができる状態になるまでの間に関係する他の原価、例えば設置場所の準備、運送費、最初の商品の運搬による移動の管理費用、据付費、資金調達におけるいろいろな原資の手数料(利息)、特に資産(購入又は自家建設)を探すことから仕事に使える用意ができる状態までに生ずる部分からなると述べられている。
 会計基準では、購入又は自家建設した建物については、建物の購入又は建設したときの原資としての借入金に支払った利息は、減耗損及び減価償却費を計算するときの基礎として使うため建物の取得価額に含めなければならない一部分であるとみなされる。しかし、この建物の取得価額に含められる利息は、事業の用に供される状態になる日までだけである。事業の用に供される状態後に支払った利息は、含まれない。国税法には「投資としての性質をもつ支出」と言う言葉を説明している章はないし、会計の専門用語である。従って国税法は、一般に認められている会計基準に従わせる意図があるということを示している。タイ国の許可を受けている会計士協会により会計基準が規定され、会計士はこれを遵守することを受け入れたとき、一般に認められている会計基準となる(これだけでなく会計基準書の第一号(会計の基本となる前提)の4ページにおいて会計基準とされるものについて述べられていて、それが一般に認められている会計基準とみなされる。)。利息は土地の取得価額の一部分として含めなければならないかという問題がある。会計基準に従って考えるべきである。もう一点税を徴収することがある。たとえ政府が行政を執行するときの支出に充てられる収入であっても、納税者の利益に影響を与え、一方国民は税を支払うことになる。それゆえどのような状況でどのような人から税を徴収するということは、明確に規定された法律があって税を徴収することができることを明らかにしなければならない。もし税を徴収するときに使う法律が明確でなく、不明瞭であり、いろいろに解釈できるならば、効果又は税を支払う国民の利益を考えて解釈しなければならない。悪い結果となるように解釈することはできない。最高裁が、土地を購入するための借入金に支払った利息は土地の取得価額の一部分であるとみなし、土地の購入代価と同じように投資としての性質をもつ支出であるという判決は、何年支払うか言うまでもなく、支払う利息を利益を計算するとき支出として控除できない結果となる。国税法が「投資としての性質をもつ支出」と言う言葉を説明している章はなく、土地を購入するための借入金に支払った利息は土地の取得価額の一部分であるとみなされ、投資としての性質をもつ支出であるかないかという問題がある。いろいろに解釈できる言葉と同じように異なった考えがある。言葉がいろいろに解釈できるときは、効果又は税を支払う国民の利益を考えなければならない。利息は土地の取得価額の一部分であり、投資としての性質をもつ支出であるという方向で解釈することは、税を支払う国民にとって悪い結果となる解釈である。前述の解釈の原則と一致しない解釈である。
 さらに土地を購入して事業に使う又は他の人に貸しつける場合である。もし土地を購入し他の人に売る場合には売却する用意ができる前に支払った土地の借入金の利息は、利益を計算するとき事業上の原価とみなされることになる。土地を売却するときは、変更ごと(利息の支払)に平均の土地の原価を計算し、それを利益を計算するとき支出とみなすことになる。
 一方土地を売却する用意ができた、又は売却してから支払った利息は、全部支払う会計期間において利益を計算するとき支出とみなすことができる。(国税局通達35/2536不動産売買業の利益又は所得の計算について)

コメント
@タイでは、建物を購入するための借入金利息で取得価額に含められる利息は、事業の用に供される状態になる日までだけである。しかし、土地の購入に係る借入金の利息は、取得価額に含めると言うものなので、借入金と土地の対応関係(どこまでを関係させるか。借入の理由が土地の購入と言うことになれば対応が明らかであるが、そうでない場合の取扱)で税務当局と解釈の違いが出そうだ。日本では法人は、固定資産(建物、土地など)の取得のための借入金利息を経費処理して損金とすることができる。

A荷物運搬の家畜、土地及び商品は、減耗損及び減価償却費を控除できない資産である。

B租税法治主義になっていることがわかる。

C不動産売買業の土地については、売却する用意ができた、又は売却してから支払った利息は、全部支払う会計期間において利益を計算するとき支出とみなすことができる。不動産売買業以外でも使えるのだろうか。本の書き方をみると使えそうだが。「売却する用意ができた」とはどういう状態をいうのか。国税局通達35/2536が手元にないので現状よくわからない。

 

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