判 例(法人税)2

2000年6月1日

更新2000年6月30日

[6]収益の計上基準の変更(最高裁の判決1293/仏暦2531西暦1988原告は法人、被告は国税局)

 国税法は、法人税を納付するため利益を計算するとき発生主義又は現金主義を適用しなければならないと規定していない。しかし、国税法65条の規定において強調される「行う事業」というのは、金銭、財産その他の経済的利益を所得として得ることを行う事業を意味すると考えられている。すなわち将来において金銭、財産その他の経済的利益を得ることを請求する権利ではなく、受け取ってしまったものでなければならない。現金主義を適用して利益を計算することは法に適合している。
 会計基準に従って一の基準を適用しているとき、もう一つの基準へと変更することができないという禁止項目はない。原告が生命保険料収入の受領について、発生主義を変更して2520年の会計期間から現在まで引き続き現金主義を適用することは法に適合している。変更後の会計期間については、原告の会計処理方法は同一の基準を適用するものとみなされている。それは、一般的に公正妥当と認められている会計原則に従っている。原告は、まだ受け取っていない生命保険料収入を納税のため他の収入と合算して利益を計算する必要はない。

解説
 旧国税法は、法人税の納付のため利益を計算することについては、発生主義又は現金主義を適用しなければならないと規定していない。そこに問題があった。最高裁は法人税の納付のため利益を計算することについては現金主義を適用しなければならないと判決した。しかし、国税局は同意せず旧国税法65条を補足し、利益を計算することについては、他の基準を適用することについて国税局長の許可を受ける場合を除き、発生主義を適用させることにした。この補足は勅命によって行われ、2528年1月1日から発生主義を強制適用させることになった。
 2520年の会計期間の生命保険料収入に関して裁判で論争になった。原告は、利益を計算することについて現金主義を適用した。すなわち、税金を納付ため利益に算入される生命保険料収入は、支払を受けたものであることを意味する。2520年の会計期間内に原告は、31、109、507バーツの生命保険料をまだ受け取っていない。それゆえ原告は、たとえ以前利益の計算ついて発生主義を適用していたが2520年の会計期間において現金主義に変更しても、生命保険料収入を合算して利益を計算する必要はない。2520年の会計期間において利益を計算するため原告に生命保険料収入を含めて利益を計算させる理由を探す。いや探せない。なぜならそのとき国税法は、一の基準からもう一つの基準へと変更することを禁止していなかった。もう一点は、原告は2520年の会計期間だけ現金主義を適用することはできないが、現在までの会計期間において引き続き適用している。それは一般的に認められている継続性の原則に従っている。原告に納税するため生命保険料収入を含めて利益を計算させるという課税係官の賦課及び控訴審議委員会の控訴判決は、法に適合していない。税務裁判所において賦課及び控訴判決を取り消す判決があった。最高裁は、税務裁判所の判決が法に適合しているとして支持した。発生主義は、2528年1月1日より強制適用されているが、問題は2528年の会計期間以後も原告が現金主義を適用することができるかということである。答えは原告は現金主義を適用することができる。なぜなら国税局長が、2528年8月28日に国税局通達(1/2528)を出している。それには、生命保険会社は、納税するため利益の計算について現金主義を適用することを許可している。

コメント
 他の基準を適用することについて国税局長の許可を受ける場合を除き、発生主義を適用しなければならない。もし一の基準からもう一つの基準へと変更する場合には、一般的に公正妥当と認められている会計原則である継続性の原則に従ってみだりに変更してはならない。従って会計原則はタイの法人税の利益の計算に影響を与えていることがわかる。
 日本の場合は所轄税務署長に減価償却の変更申請するが、原則として3年間継続適用した後でなければならない(法基通7−2−6)。適正な原価計算をおこなうため等の理由があれば期間の経過により一般的に認められる。タイの場合、国税法65条には会計処理方法(例えば定額法、定率法などの減価償却方法)を変更する場合には、国税局長の許可を受けなければならないとなっているので変更するのはかなりの理由と手続時間が必要ではないか。

 

[7]未払利息(最高裁の判決3452/仏暦2538西暦1995原告は法人、被告は国税局)

 課税係官は、原告に対し商品の帳簿残高より実地残高が少ないという理由によって、法人税と事業税(現在は廃止されている)の賦課を通知した。原告は、課税係官が原告の事務所において商品の帳簿残高と実地残高を調査し実際の商品が少ないことを見つけたが、意図的に実地残高を帳簿残高より少なくさせていない(少ない分を販売しているが、売上を計上せずかつその分を売上原価に計上していないわけではない)と控訴した。
 たとえ実際の商品が帳簿残高より不足している詳細な理由に欠けており訴訟人が加算税だけを減額するようにお願いしても、このような控訴は課税係官の賦課に反対しての控訴とみなされる。また、原告は控訴審議委員会に対する控訴に関することから増額賦課に反対する理由を引用して裁判に訴えることは法律に適合している。
 2526年の会計期間の未払利息は、たとえ原告が2527年の会計期間に支払日があると通知を受けていても、2526年の会計期間の利益を計算するときに支出として控除して計算しなければならない。それゆえ国税法65条の3(9)により2527年の会計期間の支出として控除することはできない。帳簿残高より不足する実際の商品は、販売されたものとみなされ、商品の価格は国税法79条の2(6)(現在は廃止されている)により事業税の収入とみなされる。この規定は事業税について適用されるが、法人税については適用するこのような規定を見つけることはできない。それゆえ課税係官が帳簿残高より不足する実際の商品の価格を法人税を計算することにおいて所得とみなし、販売されたとみなすことは法律に適合していない。

解説
 一般的に会社又は法人格を有する組合は、会計期間において計算される利益から法人税を納付しなければならない。この利益は収入から支出を控除して計算する。その利益を計算するのに使う収入及び支出は、受け取った収入及び支払った支出であるか否か、換言すると納税するための利益を計算することにおいて現金主義又は発生主義を使用しなければならない。これは正しい。
 現金主義と発生主義に関連する用語すなはち前受収益、未収収益、前払費用、未払費用はそれぞれ次のような意味を持つ。
@前受収益
 前受収益は、現在の会計期間において事業上受けた現金又は資産が次の会計期間の収入であるべきサービスの提供又は資産の使用に対する対価であるものを意味する。例えば金銭を受けてしまったがまだ現在の会計期間において顧客に対して対価を提供していない前受賃貸料、前受利息、前受サービス料をいう。
A未収収益
 未収収益は、サービスを受ける人に対してサービスを提供し又は資産を使用させることから生じた収入であるが、まだサービスを提供し又は資産を使用させることが完了した会計期間に対価として現金又は資産を受け取っていないものを意味する。例えば未収利息、未収賃貸料、未収サービス料をいい、簡単に言うと収入が生じてしまったがまだ支払を受けていないものをいう。
B前払費用
 前払費用は、サービスを受けるため支払ったが、現在の会計期間において役務の提供をまだ受けておらず次の会計期間において役務の提供を受ける権利があるものを意味する。例えば前払利息、前払保険料、前払サービス料をいう。
C未払費用
 未払費用は、サービスを提供し又は資産を使用から生じた経費であるが、まだ現金又は資産により支払をしていないものを意味する。例えば未払賃借料、未払給料、未払賃金、未払利息をいう。
 現金主義に従って、前受収益は支払を受けた会計期間の収入、前払費用は支払った会計期間の支出とみなされる。一方発生主義については、未収収益はサービスの提供又は資産の使用を完了した会計期間の支出とみなされる。しかし前受収益は支払を受けた会計期間の収入、前払費用は支払った会計期間の支出とみなされない。
 会社又は法人格を有する組合は、国税局長の許可を受けたとき他の基準を適用することができる場合を除き、発生主義を適用しなければならない。(国税法65条)

例示
a会社の会計期間は暦年である。次のような2535年の会計期間の収入及び支出がある。
@建物賃貸料として2535年11月1日に6月分120万バーツ(1月当り20万)を前払により現金で支払を受けた。従って2535年の会計期間の収入は40万バーツ、前受収益は80万バーツとなる。
A契約により2535年7月1日に貸し付けた。(借入金額500万バーツ、年率12%、借入期限2536年6月30日、借入期限に利息支払、1年間の支払利息は500万×12%=60万バーツ)従って2535年の会計期間において未収収益30万バーツ(60万×6÷12)を受取利息として計上しなければならない。
B2535年5月1日に一年間の資産の損害保険料12万バーツを前払した。従って2535年の会計期間の支払保険料は8万バーツで、前払保険料は4万バーツである。
C2535年6月1日に銀行から借入した。(借入金額600万バーツ、年率9%、借入期限2536年5月31日、借入期限に利息支払、1年間の支払利息は600万×9%=54万バーツ)従って2535年の会計期間において未払利息31.5万バーツ(54万×7÷12)を支払利息として計上しなければならない。
 ここで解説している最高裁の判決に従う場合、債務のある期間、原告は利息を支払わなければならない義務がある。原告が暦年に従った会計期間である2526年の初めから終わりまでに発生した利息があるとみなすとき、たとえ2526年の会計期間に利息を支払っていなくとも発生主義に従って利息を2526年の利益を計算する中で支出として控除する。原告が2527年の会計期間において支出として控除することはそれゆえ間違った会計期間に支出として控除することになる。結果としてその利息は国税法65条の3(9)に従って2527年の会計期間の支出とすることができない支出である。控除した利息を加えて2527年の会計期間の利益を増加させることによって、課税係官が2527年の会計期間の利益を調整することは法に適合している。納付しなければならない税金は増加することになる。また原告は2526年の会計期間において利息を支出として控除して利益を減少させることにより、納付しなければならない税金は減少しその減少する税金を返してもらう権利がある。

コメント
1.日本では例えば前受収益と前受金は分けて使っているが、タイ語では分けて使っていないように見受けられるので前受収益という言葉を使うのは適切ではないかもしれない。また日本では短期前払費用(法人が、前払費用の額でその支払つた日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払つた場合において、その支払つた額に相当する金額を継続してその支払つた日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。法基通2−2−14)の特例があるが、一年分前払することはタイ人になじまないので実務的にはあまり出て来ず問題にならないのではと思う。

2.実地残高と帳簿残高との差額の処理、加算税の減額請求について
@賦課通知前 2527年の中間申告の利益104,844、確定の利益333,699
A賦課通知後 確定の利益463,679=333,699+101,063(支払利息の否認分)+28,917(帳簿残高より不足する実際の商品は、販売されたものとみなされるので、その商品の価格が売上計上洩れ)
B賦課による法人税の増加税額51,992、過少申告加算税51,992(国税法22条)、延滞税31,195(国税法27条)を加え、2526年の会計期間における還付税額9,810を控除した金額125,369と中告納付額不足分に係る延滞税4,960(国税法67条3)を納付しなければならない。
C裁判の結果、中告納付額不足分に係る延滞税は国税法67条3により適切な理由があるので免除、125,369は99,372に減額された。免除、減額理由については具体的に述べられていなかった。また実地残高と帳簿残高との差額については会社はまだ損失にも計上していないので法人税法上の具体的な処理方法については述べられていなかったが、事業税の賦課については、差額は製造過程において生じた試作品の損失も含まれるとして原料の10%を損失として控除した。

3.付加価値税の場合
国税法77条の1(8)により商製品、原材料台帳の帳簿残高より実地残高が不足する場合には、その市場価格により販売されたものとみなして付加価値税が課税される。例えば付加価値税が100とする。
会社計算上(雑損?)100(未払付加価値税?)100
この雑損については、収入に関して相手から徴収しなければならないものであるので債権の貸倒とみなされるのか。とにかく支出の相手先が特定されないので法人税の計算上支出として認められないことになるのではと思う。「タイ国税法」の中で私見として原因が明らかで証明できるものは販売とみなされないと考えると記載されていた。従って上記のような場合には、試作品に使用した原料が明らかになるような製造データを用意しておく必要がある。

4.法人税について
「法人税については適用するこのような規定を見つけることはできない。それゆえ課税係官が帳簿残高より不足する実際の商品の価格を法人税を計算することにおいて所得とみなし、販売されたとみなすことは法律に適合していない。」とされているので不足分は法人税の課税対象とされない。

 

[8]利益を計算するときの収入又は支出(最高裁の判決1876/仏暦2533西暦1990原告は法人、被告は国税局)

 法人格のある組合が原告から木材を購入すると勘違いして764,268バーツを原告の口座に入金した。原告がこのことを知ったとき同額の小切手で返却するように指示した。その組合のマネージャーという人に渡した。しかし、組合は受け取っていないという。そこでその支出は誰が受け取ったか支払者が証明できない支出とされた。従って利益を計算するとき支出として控除できないとみなされた。それゆえ原告は、この金額を収入から控除する権利はない。

解説
 
事業の経営成績の計算、換言すれば事業について経過した会計期間にどれぐらい利益又は損失を生じたのかの計算については2つの方法がある。
1.純資産法
 この方法は増加した純資産に株主等が引き出した金銭(例えば利益の分配又は配当)を加えて、株主等が増資した金銭及び税金を除き受け取った金銭(例えば国税法65条の2(10)の規定に従ってタイの証券取引所の上場会社が受ける配当金)を控除した計算の結果が、その会計期間の利益又は損失である。
 増加した純資産は、期間の終わりの純資産から期間の初めの純資産を控除して計算する。一方純資産は、資産から負債を控除して計算する。
 この方法で計算した利益又は損失は、2の方法で計算したものと同じになる。
2.損益法
 この方法は会計期間内に生じた収入し支出を比較して計算する方法である。もし収入が支出より多いならば利益があり、もし収入が支出より少ないならば損失がある。
 この方法によって利益又は損失を計算する。なぜなら会計専門家でない人が見て、資産から負債を控除したものがどうして利益と関係するのか疑問に思ってしまう1の方法で計算するのとは違って、この方法により作成した損益計算書を見ると、どうして利益が生じたのか理解できる。
 法人税を納付するとき重要な点は、2の方法を使わなければならない。なぜなら国税法65条の第一段落において「この節(法人税に関する規定のある節)に従って納税しなければならない所得とは、すなわち会計期間において行われる事業又は事業に関連して生じる収入から65条の2、65条の3の規定の中で明記されている条件に従った支出を控除して計算した利益をいう。」と規定されているからである。
 この裁判に関連して法人格を有する組合が原告の銀行口座へ764,268バーツを入金した。もしその組合に木材を売るというのが本当であるならば、その入金した金額は原告の収入とみなされる。しかし、木材を買うというのが本当でないならば、その組合が原告から木材を購入すると勘違いして原告の口座へ入金したことになる。入金額は合算して利益を計算しなければならない収入とみなされない。この金額は収入に関することであり支出に関することではない。国税法65条の3(13)により支払人が受取人が誰であるか証明できないので、組合に返却したという金額を支出とすることはできない。

コメント
 
組合のマネージャーという人に小切手で返却した。領収書にサインをもらった。さらに小切手の裏面にもその人のサインがあったが、本当のマネージャーのサインと違っていた。このような詐欺にあった場合、警察の証明があって相手が返却できないと認められるものも支出として認められないのか。

 

[9]税務上の支出とはどのようなものか。利益を計算するとき支出とされないもの(1)(最高裁の判決2951/仏暦2527西暦1984原告は法人、被告は国)

 会社の役員であるマネージャーが他の人と個人的な旅行に行ったときの支出。顧客を接待するための支出であるが、領収書によって原告が支払者であることが明らかにならないものや誰のために、どのような事業のために支払ったか証拠のない不明瞭に続けた支出。贈り物のための支出。会計期間終了後利益から支払うことが定められているボーナス。これらは、税務上支出とみなされるものと異なって、税務上の利益を計算するとき支出とみなされない。

解説
1.通常会社又は法人格のある組合は、会計期間において生ずる収入及び支出により計算される利益から法人税を納付する義務がある。その利益を計算することについて一般に認められている会計基準によらなければならないだけでなく、国税法の規定の条件に従って行わなければならない。特にその収入から控除する支出については、たとえ会社計算上においてその支出が支出とされていても、65条の3に規定される支出でないようにしなければならない。もし65条の3により支出として認めないならば、税務上支出として認められない。従って法人税を納付するため会社計算上の利益に加算しなければならない。
 利益の計算に含められない支出、換言すれば税務上支出とみなされる支出は、利益の計算に含められる支出である。含められない支出として65条の3は、(1)〜(20)の20種類を規定している。特にこの裁判の問題点は、65条の3(3)(13)(19)の3種類の支出にある。
@65条の3(3)の支出。個人的な支出、贈与又は寄付。ただし利益の1%(判決の争点となっている会計期間)を超えない公共的な寄付を除く。
A65条の3(13)の支出。特に利益を発生させるため又は事業のための支出でないもの。
B65条の3(19)の支出。会計期間終了後、利益から支払うことが定められている支出。

2.65条の3(3)の個人的な支出は、事業の利益のために支払うのではなく、特定の人の利益のために支払われる支出を意味する。この種の支出は65条の3(13)の支出と一致し、同じ意味と行為であるとみなされ、並行して引用される。
 1775/2522の最高裁の判決がある。「いろいろな形での客の饗応や接待費用に係る支出。例えばスポーツ観戦のチケット購入の補助、政府の重要人物の誕生日を祝う贈り物、他の人の自動車へのエアコンの設置、これらは特定の人の利益のため同じ目的を持つ支出である。特に原告の会社の事業のために支払ったことを示す事実関係のない65条の3(3)に規定する個人的な支出であるとみなされる。」
 この他2761/2524の最高裁の判決がある。「原告の会社が音楽や演劇会のチケットなどいろいろな寄付としてチケットを買う費用、誕生日、結婚記念日、新年のパーティーなどのいろいろな機会の贈り物の購入費用、出家、饗応、僧衣献上などのいろいろな儀式の補助費用は、個人的な支出である。もし原告の名前や商品の広告としていくらかあっても、それはただの副産物である。公共性を持たないいくつかの寄付は、利益を計算するとき65条の3(3)に従って支出として控除できない。」
 裁判の中の旅行費用は、特に原告の事業と関係がなく、原告の会社の役員であるマネージャーの個人的な支出である。贈り物の費用と顧客の接待のための支払であるが領収書では原告が支払者であることが明らかでないし、いつ支払ったか、どの事業に関して支払ったか証拠がないので不明瞭な支出と同じように65条の3(3)(13)に従って支出とみなして利益を計算をしないようにしなければならない。税金を納付するため、ここで述べている支出は会社計算上の利益に加算しなければならない。
 顧客を接待するための支出又は接待の費用は、旧国税法により特に適切な金額を超えない部分を支出としてみなして収入から控除する。しかし、現在では省令(143号2522年)により規定された基準に従って認められた特定の部分を支出とみなして容認している。(65条の3(4))
 この裁判では2515年から2517年までの法人税について争いになった。もし接待費を支出として控除するならば、その時に適用される古い法律に従って特に適切な部分を超えないものは控除できる。しかし、顧客を接待するため支払があったという事実関係がない(領収書では原告が支払者であることが明らかでないし、だれのために支払ったか、どの事業に関して支払ったか証拠がない)ときは、裁判ではその支払ってしまった接待費が適切な部分を超えているかどうか審議する段階に来ていない。

3.国税法65条の3(19)の規定に従って、会計期間の終了後利益処分により支払うことを定めている支出については、例えば会社は役員に対して利益の1%のボーナスを支払うことを了承している場合、このボーナスは会社の支出でないとみなされる。なぜならもし支出とみなすことが認められるならば利益を減少させることを認めることと同じである。(利益が出た場合たくさん支給したり、利益が少ない場合すこし支給したりと利益を恣意的に操作することを防ぐ)そして利益を減少させることは、支払わなければならない税金を減少させる。納税を回避する機会を与えるのと同じである。
 949/2509の最高裁の判決がある。「配当の10分の1を超えない又は利益の5/100を超えない所得を支払うことを規定した会社の役員への賞与そしてその利益の0.1%から2%まで個々に会社が支払う義務のある賞与の支払は、利益から支払うことが定められている金銭である。たとえ利益から支払うことについて明文化されていなくとも、利益から支払うことについて明文化している場合と同じである。それゆえ65条の3(19)の規定に従った支出である。」
 この他2361/2524の最高裁の判決がある。「契約書には、原告が酒の製造販売事業から得る利益の25%以内で賃貸人に対して利益を分けることを認めるという明白に明文化された項目がある。65条の3(19)により、会計期間終了後得た利益から支払を規定されたどの支出も利益の計算において支出として控除させないので、原告はその金額を利益の計算において支出として控除することはできない。その金額が賃貸料又は報酬の一部であるかどうか、どちらが支払う金額を決めたものであるか、これらだけでなく会計期間の終了前又は後に合意したかは重要なことではない。」
 ここで解説している裁判の事実関係は、ボーナスについては原告の会社は会計期間終了後利益から支払うことを定めている。それゆえボーナスは65条の3(19)に従って税務上の利益の計算に含まれない支出とみなされる。従って納税するため会社計算上の利益に加算しなければならない。
 (現在の65条の3(3)は「個人的な支出、贈与又は寄付による支出。ただし公共のため又は大臣の承認により国税局長が定めたところに従った公益のための支出は、利益の2%を超えない部分の中で控除できる。大臣の承認により国税局長が定めたところに従った勉学のため又はスポーツのための支出は、利益の2%を超えない部分の中でさらに控除できる」と規定している。これは2535年1月1日以後に開始する会計期間より会社又は法人格のある組合に適用される。)

コメント
1.接待費
 税務上支出とみなされる部分があるので、正式な領収書(支払人、日付が明らかなもの)はもちろんであるが、誰のため、どのような事業に関連するかを書類で残しておくのがよい。
2.海外旅費
 この裁判の中では、出張を承認した会議録、また詳細な帰国報告がないとされている。日本でも国内旅費と違って海外旅費は金額が大きくなるので頻繁に海外出張することのない会社では、取締役会において出張理由、出張者の決定、帰国報告(文書)をしていましたので変わりないように思います。なおこの裁判では出張そのものが個人的なものとされたため旅費の金額については問題は出てきませんでしたが所得税が非課税とされる日当を支給するため等旅費規程をそなえていなければならないでしょう。
3.個人的な支出
@日本
 個人的な支出は個人の給与とみなされる。従って個人所得税については当然増額される。一方法人税については、個人が役員の場合、役員賞与損金不算入(税務上損金とされない)により法人税が増額される(俗にいう所得税、法人税のダブル課税である)。役員でない場合、給与とされ税務上損金となり法人税はそのまま。
Aタイ
 65条の3(3)の規定が設けられていること、法人税について裁判で争いになっていることから個人的な支出は個人の給与とされず、ただ法人税の利益の計算において支出とされないだけで完結してしまうのか。

※翻訳の解説を読み返すと頭が凍ってしまいそうですね。

 

[10]税務上の支出とはどのようなものか。利益を計算するとき支出とされないもの(2)(最高裁の判決2510/仏暦2530西暦1987原告は法人、被告は国)

 商品の販売において実際に支払をした代理人費用は、利益を計算するときに支出として控除することができる。
 販売した商品が品質が低く成立した商談に違反していることを原因として損失を補償する費用は、利益を得るための費用である。従って利益を計算するとき支出として控除できる。
 実際に支払わないで自分で支払い金額などを定めて支出とした輸送費用(架空の輸送費用)は、国税法65条の3(9)の規定に従って支出とみなされない。従って利益を計算するとき支出として控除できない。
 土地の購入代金は、65条の3(5)の規定に従って投資とされる。従って税務上の支出とされない。また土地の譲渡における手数料も、利益を計算するとき支出として控除できない。
 床を装飾するブロックを敷く請負費用の支出は、資産の価値をあげるための支出である。前の状態を維持するための修繕の支出ではない。従って65条の3(5)の規定により支出とみなされず、利益を計算するとき支出として控除することはできない。

解説
 法人税の納付のため利益の計算については、国税法65条、65条の2、65条の3の規定に従って行わなければならない。65条は、利益は収入から支出を控除し、その収入と支出は発生主義を適用して計算する。65条の2は、利益を計算するとき、資産負債を調整する(減価償却、在庫の評価など)のに関係する条件を規定している。利益を計算するとき支出とされない20種類のものを規定している65条の3については、勅令により規定されたところに従って支出とされないとされているその20番目は、現在まで制定された勅令はない(判決の争点となっている会計期間)。それゆえ現在において、利益を計算するとき支出とされないものは19種類だけである。
 この裁判では利益を計算するため収入から控除した支出が、税務上の支出とされるかということで争われている。もし支出とされないならば、原告は利益を計算するとき支出として控除できず、税金を支払うため基礎となる利益の金額が増える。
 問題となる最初の支出、すなわち商品を販売するときの代理人費用の支出
原告は代理人費用を本当に支払ったと言っている。しかし、被告である国税局は支払っていないと言っている。もし被告の言う事実関係であるならば、代理人費用は利益を計算するとき支出として控除できない。なぜなら実際に支払わないで自分で定めた支出と同様に、65条の3(9)の規定により支出とみなされない。しかし、事実関係は被告の言っているものとは違い、原告は代理人費用を支払っている。それゆえ代理人費用は、65条の3(9)の規定により支出とされないものではなし、利益のため又は特に事業のための支出として、利益を計算するとき控除できる。
 2番目の支出、すなはち販売した商品が品質が低く成立した商談に違反していることを原因としての損失の補償費用は、利益を得るための費用である。65条の3(13)の規定により支出とされないものではない。従って利益を計算するとき支出として控除できる。
 3番目の支出、すなはち運送費用
事実関係は、原告は実際支払っていない。自分で支払い金額などを定めた支出であり、65条の3(9)の規定により支出とされないものとみなされる。従って利益を計算するとき支出とすることができない。納税するための基礎となる利益の金額を増やさなければならない。
 4番目の支出、すなはち土地の譲渡における手数料
投資としての支出であるかどうかという問題がある。もし投資としての支出であるならば、65条の3(5)の規定により税務上支出とみなされない。たとえ原告が支払っていても、利益を計算するとき控除できない。
 会計基準に従って事業上の支出は、利益を得るための支出と投資としての支出に分けられる。利益を得るための支出は、支出として支払うべき会計期間の利益を計算するとき収入から控除する。しかし、投資としての支出は、資産とみなされ支払った(現金基準適用)会計期間に全額を支出として控除することはできない。多くの会計期間に渡って減耗及び減価の費用を控除する。どのような支出が利益を得るための支出か又は投資としての支出かということを審議するための基準については、タイの会計士協会は次のどの基準にも従って審議すべきであると提言し、指導している。
@所有権の原則
 支払ったとき所有権又は資産の支配を得たか。もし得たのなら投資としての支出とみなされる。
A経済的利益の原則
 支払ったとき事業において資産の所有権を得ていなくとも、もし事業において一会計期間を超えて見返りとして経済的利益を得るならば投資としての支出とみなされる。
B重要性の原則
 たとえ@又はAの原則に該当しても、もし支出金額が500バーツ未満であるならば投資としての支出とみなされない。
 国税法は、「投資としての支出」という言葉の定義をしていない。
 949/2519の最高裁の判決がある。「65条の3(5)に従って投資としての支出は、原告の資産を発生させる支出でなければならない。原告の資産とならない交差点、道路、港の建設において原告が支払う支出は、65条の3(5)により投資としての支出ではない。」
 168/2521の最高裁の判決がある。「原告の資産として設置した無線局の設置費用及び原告の機械やかまどを設置するとき専門家に支払った支出は、原告が支払った支出である。原告は支出して資産として取得することにより経済的利益を受ける。従って65条の3(5)により投資としての支出とみなされる。」
 3381/2524の最高裁の判決がある。「原告は建物を建設した。原告が契約により建物と土地を11年間賃借する権利を得ることによりその所有権を贈与した。原告は建物と土地の賃借権を得ることにより経済的利益を受ける。従って建物建設費は投資としての支出である。65条の3(5)により利益を計算するとき支出とみなさないようにしなければならない。ただ原告は、国税法に従って公布された資産の減耗及び減価の控除についての2519年の勅令第22号の5(4)2段落目に従って、1を賃借期間の年数で割った割合によって計算した減価償却費を控除する権利がある。
 最高裁の最初の裁判について、国に帰属することとなる交差点、道路、港の建設における支出を、原告の法人税を納付するため利益を計算するとき支出として控除できる。なぜなら最高裁は投資としての支出とみなさないからである。それは、原告がお金を支払って建設した交差点、道路、港が、原告の資産とされず国のものとされると考えたからである。最高裁が支払った支出によって事業上の資産を得ることは結果として投資とみなすという考えと同じように、支出が投資としての性質があるかないかという審議において、所有権の原則を適用する。
 最高裁の2番目の裁判について、最高裁の最初の裁判に従って所有権の原則により審議し又は、経済的利益の原則より審議することは言うまでもない。無線局の設置、機械やかまどその他いろいろな費用は、投資としての支出とみなされる。なぜならそれらの資産は、原告に所有権があり、一会計期間を超えて経済的利益を与える。
 3番目の裁判も同様に所有権の原則、経済的利益の原則に従って審議することは言うまでもない。11年間の建物と土地の賃借権を得るため、建物を建設する支出は、投資としての支出とみなされる。なぜなら賃借権は1つの資産(2253/2524の最高裁の判決)である。賃借権を得ることは資産を得ることとみなされる。この賃借権により一会計期間を超えて原告の事業に経済的利益を生じさせる。これは、経済的利益の領域に入っている。
 さらに石油所得税の場合には、2514年勅命25条(1)がある。「投資としての性質がある支出」と言う言葉を次のように定義をしている。「資産又は経済的利益を得るため支払った支出を意味し、直接的又は間接的であるか、一会計期間を超えて事業にその資産又は経済的利益よる効果があるかは言うまでもない。」
 この裁判については、土地を買うためにお金を支払い、所有権を得た。従って支払ったお金は投資としての支出である。所有権の原則に該当している場合、土地の譲渡の手数料は土地の所有権を得るために支払ったお金の一部とみなし、その手数料は65条の3(5)により税務上の支出とみなされない投資としての支出とされる。原告は利益を計算するとき支出として控除できないし、減価償却費を控除することもできない。なぜなら土地は、国税法に従って2527年に公布された減耗及び減価の控除について規定された勅令第145号の第4条によって、減価償却費を控除することが認められていない。
 最後の支出、床を飾るブロックの費用
最高裁は、以前の状態を維持する修理のための支出ではなく、資産の価値を上げる支出であると判決した。65条の3(5)により税務上の支出とされない支出である。原告は塀の修理費用として会計処理した。もし事実が本当に塀の修理費用であるならば、利益を計算するとき支出として控除できる。なぜなら以前の状態を維持する修理のための支出とみなされるからである。しかし、事実は、その支出が塀の修理費用ではなく、資産の価値を上げる支出である床を飾るブロックの請負費用である。従って65条の3(5)により税務上の支出とされない。原告は支払った会計期間においてその金額を支出として控除できない。しかし、2527年の勅令第145号の基準、条件に従って建物の減価償却費としての形で控除できる。

コメント
1.代理人費用
 原告は、独占契約により代理人を必要とする事業を行っている。裁判において代理人報酬契約、領収書の写しを提出している。報酬については売上の1%であり他と比較しても適正な額である。契約書、領収書は残しておかなければならない。
2.運送費用
 原告所有のトラックの燃料費及び修理費の経費が10倍以上に増加したこと、直接メーカーのトラックで納入させていたこと、運送業者との運送代等の合意書がないことがあげられていた。
3.土地の譲渡に係る手数料
 具体的にどのような内容の手数料か記載されていなかったが、日本と同様に取得価額とされる。ただし日本の法人税では、不動産取得税、登録免許税などは取得価額に算入しないことができる。
4.重要性の原則
最高裁の裁判において所有権の原則、経済的利益の原則により、投資としての性質がある支出であるかどうか判定しているが、重要性の原則については述べられていない。「タイ国税法」において「日本のような取得価額10万円未満の一時に損金算入が認めらる例外規定はなく、耐用年数が1年以上のものは資産計上して償却」となっているが。
5.床を飾るブロックの請負費用
「建物の減価償却費としての形で控除できる」と訳したが、正しいとすれば建物の償却率を適用することになるのか。日本では造作として建物と違った耐用年数を適用できると思う。
6.支出は次のように分けられる。
@投資としての性質がある支出(資産計上されるもの)
A利益のための支出(利益を計算するため収入から控除されるもの)
 a利益のための支出(収入に直接対応する売上原価、販売費のような支出)
 b特に事業のための支出(直接収入に結びつかないが事業に必要な支出)

 

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