判 例(法人税)1

2000年3月1日

更新2000年5月12日

 

 

[1]無料で車両を使用することは、経済的利益(収入)が発生しているとみなされるか(最高裁の判決1708/仏暦2536西暦1993原告は法人、被告は国税局)

 原告は、A会社のために調味料やその付随製品の委託販売を行っており、売った商品の価格の総額ではなく販売数量により、契約で決められた率に従って毎月販売手数料を受けている。
 原告は、A会社から商品の運搬用に1月あたり60〜70台の車両の貸与を無料で受けた。もしA会社が無料で車両の貸与をしていないならば、原告は事業遂行上運搬用の車両に係る支出をしなければならない。そうなると、原告の受ける販売手数料を上げなければならないだろう。
 A会社が無料で車両の貸与をすることは、A会社が原告に契約に規定された販売手数料以外の販売手数料に相当するものであり、原告が受けた経済的利益とみなされ、第39条(課税されるべき所得の定義)に従って課税すべき所得となる。これは、65条(法人税の課税所得)により法人税を支払うため課税所得を計算しなければならない会計期間内の原告の事業上の収入である。
 また、79条により事業税(付加価値税導入前の税をさしていると推定される)の収入とみなされ、78条により事業税も支払わなければならない。

解説
 個人所得税及び法人税は、所得又は収入という同一の源泉から徴収される税である。相違する事項は、税率を適用して税金を計算する基礎となる課税所得を算出する方法にある。個人所得税については、所得又は収入から経費及び所得控除を控除した金額が課税所得とされ、法人税については、所得又は収入から経費又は支出を控除した金額が課税所得とされる。そして規定された税率を適用して税金を計算する。ただし次のような例外がある。
1.経費等を控除する前の所得又は収入を課税所得として規定された税率を適用して計算する。例えば、大蔵大臣の公告する公益法人でない収益事業を行う財団又は社団があげられる。
2.外国の法律により設立された会社又は法人格を有する組合に一定の所得を支払う際、税を徴収し申告書を提出すると共に、その税額を納付しなければならない。これは、支出を控除する前の収入という源泉から税を支払うことである。
 個人所得税及び法人税が同じ源泉から徴収される税であるとき所得又は収入の意味は同じである。39条で定義されている「賦課すべき所得」は、個人所得税だけでなく法人税にも適用するので、65条の「所得」という言葉は、39条及び70条の「賦課すべき所得」と同じ意味となる。 A会社が原告に無料で車両の貸与をすることは賦課すべき経済的利益とみなす判決は、正しい判決である。また、事業税の対象となる収入とみなした判決も同じく正しい判決である。なぜなら79条の収入の意味と39条の所得又は収入の意味は同じであるから。

コメント
 原告が経済的利益を受けているので課税されるというのはタイでは問題にならないようだ。日本の場合、原告については、受ける経済的利益と賃貸料が相殺され課税関係はなく、逆にA会社ついては、賃貸料に相当する金額を収入に計上し、同額を原告に対する寄付金とみなして課税される。A会社も同様に課税を受けたかどうかわかりませんが、付加価値税も課税されてしまうということにおいても相殺としてしまう処理はせず収入は収入として計上し、経費は経費として計上する。もちろん日本においても上記の理由だけでなく消費税の仕入税額控除を受けるためにも別々に計上すべきである。

課税所得の計算(基本的に日本と同じである)
   法人  収入−支出=利益(課税所得)
   個人  所得−経費−所得控除=課税所得
     

[2]概算経費率を使って売上高を見積もることはできない(最高裁の判決7310/仏暦2539西暦1996原告は法人、被告は国税局)

 勅令11号8条(25)では、他に規定されている場合を除き、製造者でない販売者の販売による所得については収入の80%を概算経費として控除することを規定している。ところでこの勅令は個人の所得を計算するために適用する規定であり法人の所得の計算に使用しない。法人の所得の計算を規定している国税法の中にも、この勅令の中にも法人の概算経費控除の規定はない。また、この勅令は個人所得税の納税義務者が、控除すべき経費を計算することに関する規定であり、法人税の納税義務者の収入を見積もるために適用できない。それゆえ、個人所得税の場合に強制的に適用するこの勅令を法人税の計算に強制して適用することはできない。なぜなら、法人の所得の計算は、国税法65条、65条の2、65条の3の規定に従って行わなければならないからである。強制的にこの勅令を適用し、80%の概算経費があることから逆算して収入を計算することは適正ではない。査定官吏や控訴審の審議委員会は、原告の書類、証拠書類、その他の書類、帳簿を調査しなければならない。もし、原告の書類等が国税法65条、65条の2、65条の3(法人税の課税所得)の規定に従い不十分であるときは、国税法71条(1)(認定課税)より税金を賦課することが法に合っている。この勅令を使って売上高を計算することはできない。

解説
 国税法65条に従い法人税を支払わなければならない所得とは、65条の2、65条の3の規定する条件に従い会計期間において事業から又は事業に関連して生じた収入から支出を控除した利益である。問題は、もし支出を計算できないならば、個人所得税の納税義務者の経費を控除するのに強制的に使う法律である勅令11号を法人税の計算に適用できるかということである。
 この問題については2531年の最高裁の判決(A)がある。判決は「原告が査定官吏の調査を受け調査に関係する書類を提出した。しかし、原告が購入して顧客に月賦販売した商品の領収書を提出しなかった。原告が提出した関係書類が信用できないとき、支出は、誰が受領したかということは言うまでもなく原告が証明したものだけである。従って原告は、利益を計算するとき証明の無いものを収入から控除する権利はない。しかし、2519年、2520年の会計期間において勅令11号に従ってそれぞれ90%、85%の概算経費を控除する権利がある。査定官吏は75%だけ概算経費を控除して税金を賦課した。それは、法に従っていない。査定官吏は90%、85%の概算経費を控除することによりあらためて税金を賦課しなければならない。」というものである。この他2536年の最高裁の判決(B)がある。判決は「たとえ勅令11号が個人の所得の計算に強制的に使用されることになっていても、国税法40条(8)により賦課すべき所得とされる運送業又は交通手段を使用しての請負による所得から勅令11号8条により80%の概算経費を控除する。しかし、被告が、法人である原告の法人税を賦課するためにこの規定を使用しているときは80%の概算経費を控除しなければならない。」というものである。
 2539年の最高裁の判決の問題点は、最初の段落で説明した問題点と異なる。なぜなら前者の問題点は売上高又は会社もしくは法人格のある組合の所得の総額がわからない場合、勅令11号を使えるかということである。答えは使えない。2つの裁判で使われたこの勅令を使用できない。しかし、法人において2つの裁判のように勅令11号に従って概算経費率を強制的に使用して控除することもあるが、これは、法に合っている。それゆえ、2539年の最高裁の判決は、他の2つの裁判と矛盾しない。

コメント
 日本の裁判の解説を読んでも理解に苦しむこともありますが、この解説を読んでもどうも理解に苦しい所があります。ここでわかることは、勅令11号を使って逆算して収入を求めることはできないが、法人の収入に概算経費を使っている判例があるということです。しかし、Aの判例は「概算経費を控除することによりあらためて税金を賦課しなければならない。」Bの判例は「査定官吏が、法人である原告の法人税を賦課するためにこの規定を使用しているときは80%の概算経費を控除しなければならない。」となっており、法人の計算に勅令11号が使えない方向に向かっているのではないかと思う。また、法人の所得の計算は、国税法65条、65条の2、65条の3の規定に従って行わなければならない。書類等が不備であれば国税法71条(1)より収入の5%相当額の税金、さらに延滞税、加算税を賦課される。また、会計帳簿の作成不備となれば刑事上の罰金も科されるだろう。

概算経費控除
タイ(個人所得税が主) 
国税法40条の各種所得((4)の利子配当等を除く)について強制的に使用する概算経費控除が規定されている。ほとんどの所得に概算経費控除が適用されるため経費については帳簿等がなくてもよいのではないかと思う。ただし、付加価値税の納税義務者は、税額控除を受けるため税額票を保存し、所定の台帳を作成しなければならない。

日本
給与所得から控除する給与所得控除が上げられる。給与所得者については、経費がいくらかかっていようが強制的に適用する給与所得控除が規定されている。

 

[3]発生主義と現金主義(1)(最高裁の判決443/仏暦2530西暦1987原告は法人、被告は国税局)

 原告は、歩道を均し道路を作る公共事業を請負った。この請負は2516年の11月に完成し、2517年の1月に請負金額の支払を受けた。原告はこの請負金額に係る収入を2517年の会計期間に含めて利益を計算した。査定官吏及び控訴審議委員会が、この請負に係る収入を2516年の会計期間に含めて利益を計算することは正しいとして税を納付することは当然であるとした。しかし、それは正しくない。なぜならその時は、利益を計算することにおいて発生主義を適用しなければならないことは強制されていなかったからである。

解説
現金主義
会計期間中に現金を受け取った又は支払ったとき、収入及び支出が発生したとすることにより収入及び支出を計上しようとするものである。もし、会計期間中に信用取引で商品を販売及び役務の提供があったならば、それはその会計期間中において発生した収入とみなされない。しかし、現金で精算される会計期間において収入が発生したとみなされる。支出も同じである。もし、会計期間において商品代、サービス代として現金を支払ったならば、たとえ商品の全部を販売していなくとも、その支払った会計期間において支出が発生したとみなされる。

発生主義
会計期間中に発生した収入及び支出を、収入及び支出として計上しようとするものである。金銭で精算を受けた又は支払ったかどうかということでなく、発生主義に従ってその会計期間の収入及び支出を計上する。もし、信用取引により商品を販売したならば、事業から収入が発生したものとみなされる。支出も同じである。まだ支払をしていないが、会計期間において支出が発生した又は経済的利益を受けたならば、これらはその会計期間の支出とみなされる。

例示
暦年による会計期間をもつ会社が、2525年に顧客に10万バーツで商品を掛売りした。2526年に代金の支払を受けたことが明らかになった。もし現金主義により収入を計上するとしたならば、会社は代金の精算を受け取った2526年に商品販売による収入があるとみなさなければならない。しかし、もし発生主義により収入を計上するとしたならば、会社は商品を販売した2525年に収入があるとみなさなければならない。

 旧国税法は法人の利益を計算するとき、現金主義か発生主義のどちらを適用するか規定されていなかった。それが国税局と納税者の対立の原因であった。国税局は法人税の支払のため発生主義により所得を計算しなければならないと考えている。なぜなら、国税法と会計基準とを一致させようとしているからである。しかし納税者は、現金主義を適用しなければならないと考えている。なぜなら、税金を支払わなければならない所得は、金銭等を受領してしまったものでなければならないからである。このような相反する問題について裁判所の判決を決定付ける裁判がある。次のようなことが明らかになった。580/2506の最高裁の判決の中では、「国税法39条の意味は、税金の計算対象となる所得は受領してしまったものでなければならなく、会計期間の終了時において39条によりまだ所得とされないが旧65条により事業から生じた利益として計算される将来受け取ることを請求する権利ではないということである。原告は、2496年に道路を作り終え代金を請求し2497年に代金を受け取った。従って原告は2497年に収入があったとみなさなければならない。」793/2523の最高裁の判決の中では、「39条の賦課すべき所得は受け取った財産、又は経済的利益を含むことを意味し、すでに受領してしまったものでなければならないことを示している。会計期間の終了時までに代金を受け取った仕事ではなく、2512年の会計期間に終え2513年に請負金額の支払を受けた仕事である。それゆえ2512年の利益を計算するための所得ではない。」2052/2527の最高裁の判決の中では、「65条は会計期間において事業又はこれに関連して生じた利益から法人税を徴収することを規定している。一方39条の賦課すべき所得は、本章(個人所得税、法人税の規定を含んでいる)においては賦課すべき所得をいい、金銭で計算できる財産その他の経済的利益を含めている。税金の計算の対象となる所得は、金銭、財産その他の経済的利益により受け取ったものでなければならない。39条により会計期間の終了時までに所得とされない将来において受け取るであろう権利は含まれない。ただしこの権利は65条により事業から生ずる利益として計算される。65条により原告の事業からの利益として計算される計上したがまだ実際に精算されていない利息は、たとえ支払期限が到来しているものでも39条によりまだ所得とされない。」
 最高裁が、法人税を支払うため利益の計算については現金主義を適用しなければならないと固く主張するので、国税局は法律の修正案を提出し通過させることができた。2527年12月31日に勅命第13号を公告し、国税法65条の規定を補足し問題を解決した。勅命第13号20条は、2528年1月1日より法人の利益の計算については発生主義を適用しなければならないことを規定した。所得のある人は、会計期間に生じた収入をたとえその会計期間内に代金を受け取っていなくても収入とし、その収入に係る支出をたとえその会計期間内に支払っていなくとも支出として計算する。これに従わなければならない。所得がある人で必要な場合、収入及び支出の計算についての発生主義や会計処理の変更の承認を国税局長に求めることができる。国税局長の承認を受けたとき、国税局長が認めた会計期間から変更されたものとみなす。
 国税法65条を補足して問題を解決する以前に、会計期間内の利益の計算についてこの裁判で争われた。それゆえ前述の3つの裁判に従って裁判所は判決を行った。

コメント
法人の利益の計算
@65条改正前
 収入及び支出の帰属時期については、39条により現金主義により計上
A65条改正後
 収入及び支出の帰属時期については、65条により発生主義により計上

 39条は現金主義により収入及び支出を計上すると解されている。また、39条は個人所得税、法人税に関する規定の総則として規定されているので、改正前は法人の利益の計算に影響していた。

 

[4]発生主義と現金主義(2)(最高裁の判決2231〜2234/仏暦2532西暦1989原告は法人、被告は国税局)

 原告は経理処理については発生主義を適用している。従って原告は継続して発生主義を適用しなければならない。しかし、原告は商品の購入については発生主義により経理処理しているが、商品の販売については現金主義を適用し支出を多くし収入を少なくしている。このような経理処理が正しくないのは当然である。
 原告は、燃料の油代に関する支出については経理処理ができない。なぜなら証拠を示すことができないからである。原告が証拠である領収書を見せることができない理由が明らかになった。原告は、油の販売者に原告のいろいろな部署に配達させていた。しかし、それらの部署は原告に受け取った領収書を渡していなかった。これは原告の従業員に遺漏があった。従って原告は、燃料の油代に関する支出を経費として控除することはできない。
 加工した木材の評価額は、丸太のままの評価額より高くなるべきである。なぜなら、加工料が含まれなければならないからである。会計期間終了のとき、商品として残った加工材の評価額を1立方メートルあたり80バーツ、丸太の評価額を1立方メートルあたり900バーツとして評価した。それゆえ査定官吏は、加工材の評価額を1立方メートルあたり1,300バーツ、丸太の評価額を伐採費を含めて1立方メートルあたり400バーツとして評価した。

解説
 発生主義を適用して利益を計上するということは、たとえ会計期間内にまだ支払を受けていなくてもその会計期間内に生じた収入をその会計期間内の収入として計算する。また、たとえ会計期間内にまだ支払をしていなくても収入に関連する支出全部をその会計期間内の支出として計算する。収入に関連する支出は、直接的な支出と間接的な支出に分けられる。収入に直接関連する支出とは、もし収入を会計期間内に計上したならば同一の会計期間内に、その支出を計上しなければならない。その支出の支払期限が到来したか、又はいつ支払ったかということは、関係ない。例えば商品を販売するとき、収入に直接関連する支出は販売する商品の原価である。そこでたとえ販売した会計期間前に購入し支払が終わっていても又は支払期限がまだ到来していなくても、商品を販売した同一の会計期間内に支出として計上しなければならない。一方収入に間接的に関連する支出とは、もし会計期間内に支払わなければならない義務が発生したならば、その会計期間内の支出として計上しなければならない。例えば管理費用である管理部門の給料はその給料を支払わなければならない義務が生じた会計期間の支出として計上しなければならない。いつ支払うかは関係がない。一の会計期間内の給料は、たとえ次の会計期間に支払っていても当初の会計期間の支出とみなされる。長い期間例えば3年の賃貸料については、たとえすべてを前払していても、それぞれの会計期間の支出としてその賃貸料をそれぞれの会計期間ごとに分けなければならない。
 発生主義は、支出は収入に関連すること又は収入と支出を対にすることを基準とみなすとき、まだ支払期限が到来していない又はまだ支払っていないが会計期間内に生じた収入と関連する支出はその会計期間内の支出とみなされる。
 一方現金主義を適用して利益を計算することは、金銭を受け取った又は支払ったとき収入及び支出が生じるという理由から、会計期間内に商品の代金又は前もってサービス料を支払ったとき、たとえその商品をまだ売っていなくても、もしくは全部売っていなくても又はまだサービスを受けていなくとも、その会計期間内において支出が生じたとみなされる。
 利益を計算するとき、行っている事業の特徴によりどの基準を使用するか選ぶであろう。もしサービスの提供に関連する事業、例えば旅行業、弁護士、その他の自由業、小規模事業又は利益を目的としていない事業、例えば基金、協会、クラブであるならば、現金主義の適用を選択するであろう。なぜならこれらの事業は、未収の収入、未払の支出があまり生じないからである。しかし、もし製造、商品の販売に関する事業、中規模大規模事業であるならば、発生主義を適用するだろう。なぜならこれらの事業は未決済の収入及び支出が多いからである。
 旧国税法では税の納付について、利益を計算するときどの基準を適用させるか規定はない。最高裁は法人の利益の計算において現金主義を適用する判決をした。しかし、国税局は同意せず旧国税法65条を補足する勅命により、法人税の納付のため利益の計算について発生主義を適用させることを規定した。歳入局長の承認を得て他の基準を適用することを除き、2528年1月1日より利益を計算するため強制的に使用させる結果となった。
 この裁判の争点は2521年の会計期間において原告が利益を計算するのに発生主義又は現金主義どちらを使わなければならないということではない。原告が収入及び支出の記帳について発生主義を適用しているとき、記帳された収入及び支出はどのような意味を持つのか。それは、精算がされているかを問わず記帳された収入は、発生してしまっていることを意味する。一方記帳された支出は、費用収益対応の原則に従ってその会計期間内の収入に関連する支出を意味する。それゆえ商品を販売することは、現金又は信用で販売したか考慮せず原告に収入が発生してしたとみなされる。従って金銭の受領があったときに収入として記帳することは正しくない。
 原告は、油の販売者の帳簿を提出した。2521年の原告が領収書を無くした部分のみではなく、購入した全部が記載されている。この帳簿では、なくした領収書に相当するものが特定できないため経費として認められなかった。また原告の帳簿は客観的に誰が支払を受けたか、その内容を証明するものにならない。

コメント
 領収書がない場合経費として認められないが、取引先が領収書の控えや領収書の記載内容と同じものを保管していた場合経費として認められる可能性がある。しかし、現実として領収書を正しく発行していない所からの購入の証明はできないだろう。従って領収書の不備の防止及び保管を強く意識(日本の場合は領収書をもらって保管という意識があれば神経をとがらせる必要がないと思うが)してきちんとしておかなければならない。
 

[5]収益の計上(最高裁の判決3143/仏暦2536西暦1993原告は法人、被告は国税局)

 2519年の会計期間において、原告はA会社から36百万バーツで土地及び建物を購入する契約をした。代金を全額支払って原告の資産として土地及び建物を記帳した。しかし、A会社は原告への所有権移転登記をせず、契約違反をした。それゆえA会社は、違約金15百万バーツを5年以内に支払うことに同意した。原告はA会社を債務者として同一の会計期間に会計帳簿に記帳(税務上は申告していない)しただけでなく、その会計期間の損益計算書と損失処理計算書の注記において、原告が5年以内に違約金の支払を受けることを注記し、A会社は損益計算書において5年以内に違約金の支払をすることを注記した。それゆえ原告が2519年の会計期間にA会社から15百万バーツの違約金及び36百万バーツに対する利息に係る所得があったという査定官吏の賦課及び控訴審議委員会の判決は法律に合っている。発生主義を適用している原告は、違約金及び利息を含めて法人税を計算しなければならない義務がある。

解説
 国税法65条第一段落に「法人税に関する規定に従って納税しなければならない所得とは、65条の2、65条の3の規定に明記された条件に従って会計期間において行う事業又は事業に関連して収入から支出を控除して計算される利益をいう」と規定されている。A会社が土地建物売買契約に違反したことにより賠償することに同意した違約金は、原告の事業に関連して生じた収入とみなされ、法人税の計算の対象となる所得とされる。1つの問題がある。もし現金主義を適用するならば、支払を受けた会計期間に含めて法人税の計算をする。例えば、もし2519年の会計期間に支払を受けたならば2519年の会計期間に含まれるが、もし2520年の会計期間に支払を受けたならば2520年の会計期間に含まれる。まだ支払を受けていないならば含めて計算する必要はない。しかし、もし発生主義を適用しているならば会計期間内に生じた債権は、その会計期間内に支払期限が到来したか否かを問わず債権に係る収入を含め法人税を計算しなければならない。例えば2519年の会計期間に商品を掛売りし、顧客が2521年の会計期間内に代金を支払った場合、たとえ2519年の会計期間内に支払を受けていなくともその商品の代金に係る収入を2519年の会計期間の法人税の計算に含めなければならない。
 この裁判の原告は発生主義を適用している。最高裁は、原告はA会社が支払うことに同意した違約金をたとえ2519年の会計期間において違約金の支払を受けていなくとも支払うことに同意した2519年の会計期間に含めて法人税を計算しなければならないと判決した。
 違約金が2519年の会計期間の税金の計算において収入とみなされ、その後もしA会社が同意した5年内に支払をしないならば、原告の損失救済のためどのような方法があるかという問題がある。違約金の債権を0とする貸倒処分する方法がある。すなはち処分し0となった債権を支出とみなし0として処分した会計期間の収入から控除する。国税法65条の2(9)の規定に従って債権の貸倒処分をする。以前は適切に行うことだけであった。しかし2526年1月1日以後開始する会計期間から省令(現在の2534年の第186号)に規定された規則、方法、条件に従って行わなければならない。それにより貸倒処分することができる。

コメント
 タイでは違約金の支払が確定した場合には、その確定した日の属する会計期間に収入を計上し、さらに36百万バーツに係る利息を計算してその分も収入に計上しなければならない。従ってこのようなケースで損害賠償金をもらう場合には、利息分と損害賠償金と分けて計上する必要があると思う。
 日本では、他のものから支払をを受ける違約金(損害賠償金)については、合意等で違約金の額が確定した会計期間に収入の額に算入するのが原則ですが、合意等が成立して違約金の額が確定したとしても,相手の支払能力その他の事情によって必ずしも合意の条件どおり履行されるとは限らない。そこで,税務の取扱いでは,現実に収受した段階で収入の額に算入する処理を認めています(法基通2−1−37)。(山本守之著「法人税の実務」より)

 

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