[プロフィール]
分子素材工学を学んでいた大学時代から「情報産業」への興味を持ち、情報を扱う会社を中心に就職活動を行う。会社説明会で先輩社員の話を聞き、「仕事に納得できる」ことに憧れ同社に入社。現在は、全国の中古車取扱会社やディーラーなどに提供している中古車基準価格ガイド「ブルーブック」の制作に携わっている。

[プロローグ]
「ブルーブック」と呼ばれる一冊の本がある。これは、全国のオークション会場での中古車売買価格などを基に算出された情報が掲載されている「中古車基準価格ガイドブック」。プロトコーポレーションでは、市場動向、ユーザー評価、販売台数、モデル、色、年式など、クルマに関する様々なデータを常時収集・分析し、毎月このブルーブックを作成している。全国の中古車取扱会社、ディーラー、損害保険会社、リース会社などに提供された基準価格は、中古車を各企業が売買する時の基準とされており、市場の円滑な流通を支援する役割を担っているのだ。それだけに、車について膨大な知識を持つ専門家たちでなければ決して作れない、難易度の高い制作物である。

2003年４月。ブルーブックの制作を行うセクション、データシステム部に、ひとりの新卒社員が配属された。彼女の名前は服部恵理子。学生時代に分子素材工学を研究してきた服部は、クルマに深く関わる人生を送ってきたわけではない。自身で所有するクルマのことは知っているが、他のクルマについての知識はほとんどなかった。そんな服部が短期間でプロとして市場を動かす人材に成長する過程を追ってみる。

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