「立ちごけ」 しちゃいました


月日のたつのは早いもので、私がバイクの免許(中型)をとってから来月(平成12年10月)で5年になります。大型二輪免許をとり、憧れのハーレーに乗るようになってから3年と3ヶ月が過ぎました。
主人とほとんど一緒に走るのでいつも「事故」だけは起こさないようにお互いに気をつけて走っていました。おかげでこれまでに「事故」はありません。「事故」につながる「こける」ことも勿論ありませんでした。中型二輪免許で乗っていた頃は「立ちごけ」をしたことがありました。でもハーレーに乗るようになってからは不思議と立ちごけさえもしませんでした。
というのも、ハーレーはとっても重たいバイク(乾燥重量が320キロ!)なので、「こけたら最後・・・^_^; 」と思っていましたし、万一、こけたら起こすことが出来ないんではないかと思うと、自然と緊張して慎重になっていたんだと思います。

でも、とうとうやってしまいました・・・。「立ちごけ」を・・・。
その時のお話をしたいと思います。


の夏, 朝からお天気のいい、ある日のことです。主人と娘、それに娘のボーイフレンド(ドラスタ君)の4人でミニツーリングに行こうということになりました。
ハーレーに跨り、走り出すといつでもそうですが、「あ〜!気持ちいい。やっぱりハーレーって最高!この振動と排気音!」と思わず笑みがこぼれます。久しぶりのライディングで昂ぶる興奮を、主人とも無線を通じて話し合っていました。
ニツーリングのコースはいつもと少し変化を持たせ、奈良方面へと走りました。夏の日差しはきついですが、走っていると心地よい風を頬に感じ最高です。交通量も少ない国道から逸れ、やがて山越えの県道へと入るルートに入りました。
無線機の調子がおかしく、交信できなくなったのでバイクを止めてチェックしました。電池を交換しましたが、うまく繋がりません。どうやら配線に問題があるようだ・・・と主人。仕方なく、その後は無線で話すことが出来ず走ることになりました。
道は民家を抜けるとすぐに登坂となり、山に入っていきました。道幅も狭く、車では、あまり走りたくない道です。でも、対向車もなく、ハーレーは快調に走ってくれます。木立に排気音が染み込むようです。ドラスタ君の1100CCのドラッグスターもマフラーを替えているのでとてもお腹に響く重低音を轟かせています。先頭の主人のハーレーの排気音も負けずにドッドッド・・・と合奏しています。娘のレブルの音は可哀相にかき消されています。

がて道は登りがきつくなり、ヘヤピンカーブが続くようになってきました。道幅の広い大きなヘヤピンカーブと違い、狭い道でUターンするような感じでしかも登り坂です。スピードが自然と遅くなりゆっくりとローギヤに入れて上らねばなりません。
「こんな道は嫌だなぁ・・・、早く終わらないかなぁ・・・(汗)」と思っていました。ヘヤピンカーブを抜け、少しの間加速するとすぐに次のヘヤピンカーブです。丁度、左方向に曲がるヘヤピンカーブにさしかかり、サードからセカンドへシフトダウンしました。思ったよりも急勾配なので「ローギヤにシフトダウンした方がいいかな・・・」と思う間もなくカーブに入ってしまい、車速がグッと落ちてしまいました。そしてあろうことか、エンストしてしまったのです。

「しまった!」と思い、すぐにセルを回してエンジンをかけ、ローギヤに落として走り出そうとしたのですが、その場で速度がゼロになってしまい、足を着きましたが、登りのカーブの途中ということもあってバランスがとれずハーレーが傾きました。
「あ〜〜・・・!」と思う間にもハーレーの傾きがきつくなりました。「もうだめ〜!」とハーレーの重さを支えることが出来ず、まるでスローモーションのようにハーレーが倒れました。幸いハーレーの両サイドにはエンジンガードといって頑丈なパイプをつけていますので、ハーレーは完全な横倒しにはならず、45度くらい傾いた状態で止まっていました。

は倒れる間際に自然に飛びのいていましたので、怪我もありません。
私が最後尾だったので私が倒れたことを誰か気づいてくれればいいのにと思いましたが、前を見ても既にみんなの姿がありません。
排気音もなく静かです。クラクションを鳴らしました。こんな時に、肝心の無線機が故障とは・・・。
やがてドラスタ君が駆けつけてくれました。状況を見て驚いたドラスタ君ですが、とにかく二人でハーレーを起こそうとしましたが、簡単には起き上がりません。二人で姿勢を整えて、掛け声勇ましく「せーの〜!」と渾身の力をこめてようやくハーレーを起こすことが出来ました。そこへ主人と娘が駆けつけました。
主人も驚いていましたが、「やっぱり・・・。そんな予感がしてた。」と一言。
主人はそのカーブを過ぎてからバックミラーで皆がちゃんとついて来ているか気にしながら走っていたそうです。でも私の姿がいつまでも見えないので途中で止まって待っていたそうです。そこへ私のハーレーのクラクションが聞こえたので予感的中とばかりにドラスタ君たちに「こけたみたいだ!」と言って応援に駆けつけたそうです。
こし上げたものの、オイルがこぼれて路面が滑ります。跨ることも危険なので主人に代わってもらいました。主人が跨りエンジンをかけようやくその場を離れて真っ直ぐの登坂に止めてもらいました。
倒れて傷がついたんじゃないかな・・・とハーレーをチェックしました。でも頑丈なエンジンガードがほんの少しだけメッキが剥げたくらいで済みました。
ーレーに乗り出して初めてのアクシデントです。15000キロ走りこみました。この間、ローダウンして足つき性を良くしましたが、逆にそのためにコーナーではバンク角が浅くなりステップを擦りやすくなりました。コーナーでステップをガリガリと擦ると怖いので、どうしても急カーブではスピードを落としてしまいます。今回はそれが仇になりました。
急カーブになると「ステップが当たらないかな・・・、嫌だな・・・」と考えてしまい、スムーズに曲がれないことが多いのです。
ネガティブな考えではかえって危ないということがよく分かりました。
ただでさえ重たいバイクですから、こかしたくないという気持ちも強いのですが、意識過剰になると体が硬くなってスムーズさが失われてしまいます。
回の「立ちごけ」は、いい経験となりました。こけないのに越したことはありませんが、今回のエピソードを教訓にすべきだと思いました。
ただ、今回、もし一人だったとしたらハーレーを起こすことは出来なかったことでしょう。
お天気のいい日にガレージのハーレーを見て、「走りに行きたい・・・」と思うことはしばしばあります。でも、一人で走りに行く勇気はありません。いつも主人の背中を見て安心して走っているので、単独で走って、もしものことを考えると怖いのです。きっとこれからも私一人で走ることはないと思います。
主人もハーレーのソロツーリングは不安だといいます。こける、こけないだけではなく、その他のトラブル、例えば機械的なトラブルが起こった時に対応できる知識がないのならソロで人気の少ない所は走るべきではないと言っています。
やっぱり一人より二人、二人より三人・・・と大勢で走る方が安心ですものね。

それにしても、ハーレーって「いつまでも乗り続けたい・・・」と思う不思議なバイクです。
どうしてでしょう? 
あの独特な排気音、そして振動・・・。もっと楽に簡単に乗れるバイクがいっぱいあるのに、
ハーレーがいいのです。いえ、ハーレーでなければダメなのです。
ガレージのハーレーを眺めていると、「さあ、走りましょう!ご主人様。」と訴えているように感じるのです。