主人と中型二輪免許をとると、早速ツーリングの計画をたてました。
2泊3日で、紀伊半島一周ということになりました。私の家は奈良県の王寺の近くです。自宅から西名阪の香芝ICまで15分弱です。西名阪を使い、伊勢道に入り久居IC(当時はここが終点でした)で降りて、賢島から浜島に出てここで一泊、そして次の日は42号線で潮岬まで。そこから御坊、和歌山経由で帰ってくるという計画でした。
日帰りツーリングやチョイ乗りは時間を作っては結構あちこちに出かけていましたから、バイクにも大分慣れてきました。でも泊りがけのツーリングは今度が初めてです。もう嬉しくて、わくわくして前の晩はなかなか寝られませんでした。
まだ暗いうちから二人でバイクに荷物をくくりつけ、少し肌寒い中を出発しました。近くのスタンドで満タンにし西名阪道に入りました。制限速度は80Km/Hですが、そんなスピードは出したことがありません。でもトラックや他の車はびゅんびゅん飛ばしています。私と主人のバイクは側道を時速60Kmくらいで走りました。二人はハンディフリーの無線機をメットにつけていますから会話しながら走れます。お互いに「風が冷たい」とか「車が怖い」とか感じたままを無線で話しながら走るのです。
東に向かって走っていますから次第に空が明るくなってくるのがわかります。やがてお日様が顔を出し、東の空が赤黒かったのが徐々に明るさを増し、青みが出てきました。山陰から太陽がキラッと出てき
ました。雲はほとんどありません。快晴です。日が昇るとさっきまでの寒さが消え、ぽかぽかとしてきました。いよいよツーリングの幕が開いた、という感じです。バイクのエンジンの振動や音が興奮をさらに盛り上げます。
途中、何回もSAやPAに立ち寄って休憩しながらのんびりと走りました。高速走行にも少し慣れて来ました。それにしても、なんて楽しいのでしょう。この道は車で何度も走っているのですが、バイクで走るのは初めてなのです。バイクだと初めて走る道のような新鮮味があるのです。見慣れているはずの風景もバイクからだと視点が変わり、新しい発見があります。色々なにおいもあります。パンを焼く良いにおいで近くにパン工場があることに気づいたりします。こんな事は車ではわからなかった事です。
ゆっくりと走ったので、最初の目的地である浜島の民宿には、夕方近くに着きました。
お風呂につかり、今日のツーリングを振り返りすごく充実感に浸りました。夕食までの時間主人と近くの海岸を散歩しました。夕方の海って奈良ではめったに見る機会がありません。今日は子供抜きで主人と二人っきりです。これもバイクに乗るようになったお蔭です。あー、なんて贅沢なんでしょう。
翌朝、朝食後早々に荷仕度して潮岬へと向かいました。今日は高速道路は走りません。車の少ない道を選んで地図を見ながら走りました。バイクは小回りがきくので行き止まりでも大丈夫です。途中何度か民家の庭に迷い込みました。
海岸線沿いに走ったり、山の峠を越えたり変化に富んでいます。潮の
香りの後は、山では鳥のさえずりを聞き、ほんの少し紅葉めいてきつつある木々の色を楽しみながら走りました。そうして少しづつ目的地に近づいています。
今夜の宿、潮岬の民宿には日没間際に到着しました。夕焼けがとてもきれいでした。
ここの民宿でお風呂を頂き、部屋に戻って窓から外を眺めていると、ハーレーに乗った若い人たちのグループが到着しました。独特の迫力のある重低音の排気音を轟かせながら・・・。主人も慌てて窓際にやってきました。「ハーレーだ。いい音してるなあ!」としきりに感心しています。
私たちのバイクの隣にハーレーが4台並びました。彼らもここにお泊まりのようです。
次の朝、私たちはハーレーの人たちより先に出発しました。バイクに荷造りしていると今度はハーレーの人たちが窓から私たちを見ています。軽く挨拶して民宿を後にしました。

道すがら、主人と無線で先ほどのハーレーの人たちの話をしました。主人はハーレーの事を好きだけど故障が多いから乗りたくないなんてこの時は言っていたのです。
さあ、ツーリングも終わりに近づいてきました。今日は我が家が目的地です。「最後まで、無事故で安全運転を心がけて走りましょうね」と主人と無線で確認し合いました。
楽しい事はあっという間に終わってしまいます。無事帰宅した私たちは、またツーリングに行こうと約束しました。でも子供たちもいるので今度はタンデムで子供たちを乗せてツーリングに行こうという話も出ました。