春、近し
3月に入り、めっきりと暖かい日が続くとバイクに乗りたいと思うようになる。そういえば、1月に一度だけ実家に帰る時に乗って以来、ご無沙汰である。2月となると流石に寒い日も多く「冬はスキー」と割り切ってスキーに精を出していたこともあって、バイクの事は意識に上らなかった。しかし、梅の花が咲き、うぐいすが囀る声を聞き、室内よりも外の日差しが暖かくて気持ちがいいと実感し出すと、とたんにバイクの虫が目覚める。先日、庭先の日差しのあまりの気持ち良さに、長い間乗っていなかった我が愛するウルトラと、家内のヘリテイジのボディカバーをはずし、「バッテリーが上がってるかもしれないな・・・。一度エンジンをかけてみるか・・・。」と、家内と二人してハーレーに跨りエンジンに火を入れた。先ずは家内のヘリテイジからエンジンをかける。少しだけチョークをひいてセルを回すと「ギュンギュギュッ・・・ズドドドドッ・・・」と一発でエンジンは目を覚ました。久しぶりのハーレーのエンジンが奏でる重低音は心地よい。
1000回転強でアイドリングをキープし、しばらくは排気音に聞きほれ、振動に身を任せた。エンジンのシリンダーが熱くなって触れなくなったところでエンジンをきった。
続いて私のウルトラである。同じく少しだけチョークをひいてセルを回すと、私のウルトラはバッテリーを2連装備しているだけに家内のヘリテイジよりも勢い良くエンジンは始動した。ウルトラの排気音はもともと家内のヘリテイジに比べると甲高く歯切れのいい音だが、久しぶりにその独特な音を聞いて思わず鳥肌が立ちそうになった。家内と二人で「やっぱりいつ聞いてもハーレーっていい音してるなぁ」と感心する事しきりである。このままどこかに走って行きたくなるのを押さえてエンジンをきった。
3月の声を聞くといよいよバイカー達にとっては待ちに待った季節の到来である。冬眠していたバイカー達がぞろぞろと出てくる。すでに気の早いバイカー達は春を待ちきれずに走っているが・・・。
私達もバイク免許をとりバイクに乗り始めたころは冬の寒さに負けず、出来るだけ暖かなところを選んで走りまわっていた。真冬はどれだけ防寒対策をしても寒さは身に凍みる。それはそれで楽しいのだ。しかし、春や秋といったベストシーズンこそバイク本来の楽しさを味わうには最高の季節だ。風の心地よさを感じるのはやはり春や秋なのだ。
幸いにも私達のハーレーはバッテリーも上がらずにこの冬を乗り越えてくれた。あの排気音は「さあ、ご主人様、早くどこかに連れて行って下さい」と訴えていたように聞こえた。今年はどこを走ろうか・・・。
