万座温泉1泊2日ツーリング(2)


9月24日。午前5時半ごろ自然に目覚めた。伸びをして布団から起き出して窓のカーテンを開け、外を眺めた。まだ雨が降っている!
「え〜!勘弁してよ・・・」と空を仰ぐ。雨は降ってはいるが昨夜に比べると小雨だ。
昨日、苦労してはるばる万座温泉に来たからにはこの旅館の風呂を全部制覇してやろう・・・。家内も起きたので「風呂に行こう」と誘い、タオルを肩にかけ浴衣のままで風呂場に向かった。

この旅館は大きくは二箇所に風呂場があり、それぞれにいくつもの風呂がある。もちろん私の大好きな露天風呂もある。
昨夜は私たちの泊まった建物の内湯に入ったので、今朝は湯治客も利用する外湯の方に行ってみよう。
階段と廊下をかなり歩いて外湯のある場所に出た。いったん建物から外に出るかたちで外湯のある建物がある。

傍らの丘に蒸気の出ている個所が見える。「硫化水素ガスに注意!」の看板もある。硫黄の匂いがぷんぷんしている。この硫黄の香りが私は大好きだ。いかにも温泉です・・・という情緒を感じる。
外湯の建物は湯治客が泊まれる施設を兼ねている。古い木造だ。入り口から入るとそこに食堂があり湯治客用の朝食の準備を始めていた。
食堂を横目に中に入るといろいろな「湯」の名前がついて分かれている。片っ端から入っていくことにした。
湯船はかなり古くなった桐製だが湯ノ花がびっしりとこびり付いている。朝が早いためか先客は一人だった。
湯につかるととても気持ちがいい。温度も適温だ。浴槽で手足を伸ばし、筋肉をほぐす。あくびが出た。
温まったところでそこを上がり、次の風呂に入った。そこは見た目は同じだがお湯の成分が微妙に違うのか入り口に成分表が書いてある。基本的には少し白濁しているのが万座温泉の特徴のようだが、透明な湯が入っている浴槽もある。ラドン温泉と書いてあるところもある。
こちらは温度が熱く、湯もみしても熱すぎて入れなかった。足の先をちょこっと浸けただけであきらめた。
仕方なく今度は露天風呂に行くことにした。階段をかなり上ってようやく露天風呂がある。息をきらしつつ浴衣を脱いだ。
脱衣場から露天風呂にでると万座周辺のスキー場のゲレンデが見えている。冬は一面雪化粧となるのだ。しんしんと降る雪の中で入る露天風呂はとても乙なものである。スキーを兼ねて来たいものだと思った。

露天風呂の浴槽は岩風呂だった。外の気温が低めなので気持ちがいい。湯につかりながら山々の緑を眺めると気分は最高だ。
「お!雨が止んでいるじゃないか!」
知らないうちに雨が上がっていた。それに空が明るくなってきている。空をぐるりと見回すとなんと一部に青空が覗いているところもある!天気が回復してきたようだ。「よかった〜・・・」思わず笑みがこぼれた。
のぼせないうちに風呂を上がり外湯の建物の周囲を散策して汗がひいたところで部屋に戻った。
朝食は7時である。他のみんなも既に起きて三々五々風呂に行ったようだ。
7時前に食堂前にでかけ食堂の開くのを待つことにした。
食堂が開いたので皆揃って入った。珍しくバイキング形式の朝食だ。
和食も洋食もある。好みのメニューを適当に皿に盛ってテーブルについた。通常は私は朝食は食べない習慣だが、不思議と旅に出ると朝から空腹感があるのだ。
食堂から外を見ると、先ほどよりも青空が広がってきている。道路はまだ濡れている。
そこで出発をチェックアウトぎりぎりの午前10時とした。少しでも遅い方が天気が良さそうだ。
朝食を済ませまだ出発までにたっぷりと時間もあるので旅館内の売店でお土産を見繕った。それでもまだ十分な時間がある。
お腹がこなれたらまた風呂に入ることにした。こんどは内湯の方の露天風呂に浸かった。こちらもスキー場のゲレンデが見下ろせた。
空は順調に明るくなってきている。
風呂から出て部屋に戻りゆっくりと帰り支度を始めた。部屋に干していた濡れた手袋や雨具はすっかり乾いていた。ブーツは完全に乾いてなかったが仕方がない。走っているうちに乾くだろう・・・。
フロントに清算したい旨を伝え、皆からお金を集金に回った。会計係りも担当だ。
そこへ鯨さん、こと逸見さんから申し入れがあった。「ここにもう一泊してゆっくりと帰ることにします」と。
鯨さんは毎年北海道にソロツーリングに行かれている猛者だ。のんびりとマイペースで走って帰られることを希望された。
私たちは今日中に帰らねばならない。月曜から仕事だ・・・。鯨さんもお仕事があるがそのあたりを自由に出来るお立場にあるという強みがある。
羨ましいが仕方がない。私たちも鯨さんのようにもう一泊してのんびりと帰りたいところだが、残念ながらそうもいかないのでここでお別れすることになった。

清算を済ませチェックアウトしたところで玄関前にハーレーをずらりと並べ記念撮影した。

2日目、出発前に旅館玄関前にて

全員で旅館玄関前で記念撮影

  

旅館前にハーレーが勢揃いしたために旅館に出入りする他のお客さんたちの注目を集めた。いっしょに写真を撮って・・・と言う人もおられた。
荷物も積み込み終えた。出発前に、雨で汚れたハーレーをタオルで少しでもきれいにしようとみんな余念がない。アスファルトも少し乾き始めていた。
皆の顔を見回すと、「今日こそは楽しむぞ・・・」と書いてあった。
鯨さんとはここでお別れだ。お互いに「お気をつけて・・・」と声を掛け合い旅館を後にした。
万座温泉から2キロほど峠道を上がれば、志賀草津道路(国道292号)である。この道は標高2000メートル以上と森林限界を超えるルートである。遠くに北アルプスを眺望し、道路周辺は、高所独特の景観を楽しめる素晴らしいルートだ。
出来るだけゆっくりと景色を楽しみながらハーレーを流した。空には薄日もさしてきた。天気が回復して本当に良かった。
途中、景色のいいところで小さな駐車場があったのでそこに入った。しばらくは景色を堪能した。

標高2000メートルを超える志賀草津道路わきにて  2ショットで(^^ゞ

遠くは霞んで展望は100%とは言えなかったが、それでも皆さん、「いやぁ、来た甲斐があったなぁ・・・」と仰って一安心。

しばらくは景色のいい高原道路を「これぞツーリング!」とばかりに気持ちよくハーレーサウンドを響かせながら走った。
やがて横手山ふもとに来たが、あいにく山頂は霧で見えない。ということは山頂に登っても360度の展望が望めないということだ。
予定ではここで山頂に上がるつもりだったが素通りした。
5キロほど走るとスキーのメッカ、志賀高原への道が分岐している。鋭角にその道へと入る。5分ほどでゲレンデがたくさん見えてきた。
スキー客で冬は賑わうここ志賀高原もこの時期は人もまばらだ。道の両側にスキーゲレンデが次々に現れる。大きな宿泊施設も並んでいる。ここを抜けて走っていくと志賀高原もここまで・・・というところまで来た。そこにある大きな宿泊施設もまるでゴースト化して全く人気がない。
その施設のこれまた馬鹿でかい駐車場で休憩しようとハーレーを駐車場のど真ん中に導いた。ずらりとハーレーを並べてもまだまだ寂しいくらい広い駐車場だ。ここでちょっと休憩することにした。

広い駐車場で・・・

一息入れて出発だ。予定では景色のいい山田牧場の方を抜けて帰るつもりだったが、空を見ると雨雲が見える。
山田牧場方面は道が狭く、もしも途中で雨に降られると神経を使う。そこで予定を変更して国道をそのまま下っていくことにした。
残念だが仕方がない。もうこれ以上、雨の中、冷や冷やしながら走るのは勘弁して欲しい。
国道に出て峠を下りだすと、皮肉にも再び晴れ間が覗いてきた。が、山の天気は気まぐれだ。そのまま下っていくことにした。
中野市に下りてきたところで道の駅「やまのうち」があったのでそこで昼食をとることにした。ここから高井富士と呼ばれる富士山によく似た山が目の前にそびえていて景色がいい。
蕎麦が食べたいと思っていたら、「自家製手打ちそば」がメニューにあったので、それを注文した。麺は腰がありとても美味しかった。
道の駅を出て上信越自動車道の「信州中野」ICに向け走れば、あとは高速道路を我が家に向けてひた走るだけである。幸い、お天気も雨の兆しはなくなっていた。
インターに入ると、昨日とは違ってとても走りやすい。路面も乾いているし、景色を眺める余裕すらある。
家内のハーレーも今日は好調だ。一定速度で流しているとあまりの単調さに眠気を催しそうになる。時々追い越し車線に出てスピードを上げメリハリをつけて走る必要がありそうだ。

高速に入ったのが正午過ぎ・・・。途中で休憩を入れながらこのペースで走ればほぼ予定通りに帰れそうである。
やがて高速は長野道となり、頂きに残雪のあるアルプス連峰を右手に眺めつつ最初の休憩地「梓川SA」が見えてきた。
SAへ入るべく、方向指示器のスイッチを押し、とりつけ道へと進入した。
バックミラーには後続のハーレーのブルーのサイド灯や回転灯が鮮やかに映っていた。

・・・完