『鳥インフルエンザ問題の今後(]XT)』



国税庁が採卵鶏は飼養期間が一年以内だから償却資産でなくその年の経費で落として良いと通達を出して20年位経つと思う。それに先鞭を付ける形で喧伝されたのが浮野養鶏の120%更新だった。爾来、採卵鶏の新陳代謝はそれくらいのスピードでおこなわれている。どんな軽い疾病でも産卵低下をともなって12カ月以内の飼養期間内に採算がとれないようだとその時点で繰り上げ淘汰されるが、その判断は迅速果敢を要し一刻のおくれも許されない。そのくらいシビアなのが今の企業養鶏だ。
法廷伝染病で摘発淘汰される場合の補償は鶏体の損耗に対しておこなわれるが、損失の実態は移動の禁止に有り、淘汰されなくても採算のとれない鶏群をそのまま飼わざるを得ないとすれば損失としては同じなのである。その辺が為政者行政側は分からぬらしい。

産卵低下をおこした鶏群を一刻も早く廃鶏処分しようとするのは大槻教授のいう商品出荷で儲ける為ではなく、換羽までの残存期間で採算の取れぬ鶏に一日でも無駄な餌をやるわけにいかない面があるからである。

育種、飼養管理の両面から今の鶏は産卵開始後一年しか経済寿命がない。その実態は冒頭の国税当局でさえ認めて居る事実である。昔、農林省大宮種畜牧場の13−30号系の種鶏でヒナ白痢の非特異反応が多発して問題となった時、たまたま屋内ケージで人工授精すると反応が出ないことを発見した。矢張り野外でない方が免疫の交差がないのであろうし、その分抵抗力がないと確かに云えそうである。そしてその当時、廃鶏のピックアップは日常の産卵調査と早期換羽鶏に対しておこなっていたが、其の際10年目の鶏の翼帯を見つけることがよくあった。いまでは産卵2年目になると卵殻卵質の低下はまぬがれない。育成中に施した種々のワクチンが切れて、IBD,EDSなども顕在化して来るのかもしれない。余談となったが一年の経済寿命ではほんの少しのブランクも許されないのは当然だから、何かあればその鶏舎はあっというまに空になる。大体鶏病というのは薬は使えない、治さないのが基本だからもともと獣医は要らなかったのである。学校でも鶏のことは教えなかったらしく、養鶏現場では触診でチョウマンと脂肪鶏の見分けがつかないとか、鶏のさばきかた(解体して肉にする)が下手でそれでは肉が食えないとか、採血がなってないとか云われ、気嚢の混濁のあるなし、メッケル憩室がどこかよりも、とにかく鶏を知るために横浜の愛鶏園でアラ養鶏の勉強をしてきたと家保の先生達が笑う時代だった。従って北日本大会で養鶏協会の島田専務が自らが獣医であることを強調されて居たが、それはそのまま養鶏場の実態や考えが分かっていないということでもあるので、これから鋭意勉強して頂きたい(笑)。企業養鶏といっても浅田農産の会長の考えと我々の習ってきたことと大差はない。一カ月無駄食いされたらもうその群は利益が出ない。卵価安だろうと産卵低下だろうと鶏共は処理場に一直線で、同じ希望の養鶏場が競合する中、一刻も猶予出来ないとするのが経営を預かる親父心理である。繰り返すように平常時でも一日40万羽が処分されている。一年では1億数千万羽で浅田農産の24万羽など膨大な数の流れの中で引っ掛かったほうがおかしいくらいで、事実そう考えて居る人は業界にも沢山いるらしい。無論良いとか悪いとかの話ではない。ただ浅田会長は気の毒だったなという話の出る根拠はそんなところにあるのだと思う。腸なんか開いて見て居る間になんで繰り上げ淘汰してしまわなかったんだという話。鶏病に薬はない、おかしいなと思ったらすぐ廃鶏処分する習慣はもう永い間のもので、そこには臭いものにフタをする気持ちなど鳥インフルエンザが問題になるまではみじんもなかった筈だ