『鳥インフルエンザ問題の今後(]U)』



館沢さんに送って戴いた日本ウイルス学会誌の座談会の記事を読む。症状の出ないまま「眠るように、、」と云った浅田農産の症例が、呼吸器上部がいきなり破壊されるというこれまでの子供の甚急性インフルエンザと同じなのか、AI特有の脳炎脳症なのか「エボラ出血熱と同じだった」とする感染症研究所の以前の発表などが思い返されて引き込まれた。しかし家禽のワクチン是非の項では反対する者のない中での放談会で、養鶏業界の切実な要求も一切無視されてcalm downするのを待たれているとあっては心中穏やかでない。
海外の研究者のワクチンに対する助言も、要するに直接のHPAI対策では無論なく、LPAIをきっちり押さえることこそ大切だとしている中では,HPAIのない今がむしろワクチンを取り入れるチャンスと捉えるのが本当ではないだろうか。

具体的に、アジアに跨がる取り敢えずはH5タイプの、隠れている未知のLPAIウイルスを想定して、既存のH5N2オイルアジュバントワクチンを使ってカプア博士の指導するようにIFTをふくめたDIVA戦略を取り入れ、あわよくばHalvorson論文にあるように「アメリカではH5,H7をも想定して家禽に非H5,H7不活化インフルエンザワクチンを使うことはMPAIの予防と抑止に有効なことが広く受け入れられている」と、とても我が国の学会では受け入れられそうもない理論も(読み違がいの可能性はあるが)、そして生ワクによる、粘膜性免疫、細胞免疫についてさえ未だに世界中で研究が進んでいないまま現場では、いろいろな感染症に許可される範囲では用いて来ている事もあり、更にシムズ博士のオイルアジュバントワクチンの、より広範な免疫機能に期待する発言もあって、養鶏業界としては何とか生き残りを賭けて要求を通したいところである。そして、これまでの、NDにしてもIBにしても、ことワクチンの要求に対しては、反対するのが我が国の研究者の常だったと考えれば、とことん諦めるべきではなく、学ぶべきは学び、戦うべきは戦うべきであると考える。

今月から家保によるAIの立ち入り調査が始まる。わが家でも採血くらいは何時でも応じられるよう若い者を特訓した。「昔は雛白痢自主検査で10羽づつ足で押さえながら採血したんだ」と自慢すれば、そばから老妻が凝集反応の「緑色のまだら模様が寝てからもちらついた」などと応じて、今から思うとそれでも良き時代だったと回顧ひとしきりだった。それにしても実効あるサーベイランスとして特定の亜型だけでなく自然界にある、すべての弱毒ウイルスの実態が、たとえ副産物としてでも明らかにされるよう望んで居る。家保でのNDと区別しただけの段階の調査結果が亜型に関係なく、そのまま知らされることも
現場でのLPAI対策として重要だと思われる。その意味でも適当なELISAやAGIDなどの簡易検査器具が全薬工業から発売されるとあって問い合わせたら未だ開発中であった。とにかく飼養現場としては情報集めで頭でっかちにならぬよう、さりとて中途半端で生兵法にならぬよう気を付けながら違法にならないで試せるものは何でもやってみるつもりである。

それにしても世界の三機関を初め多くのエキスパートが、むしろ公衆衛生の為にワクチンを勧める中、なぜ我が国の学者は相変わらず正反対の云い方ばかりするのだろうか。もはや自分達の牙城を守るためだけの主張としか思えなくもない。ただ事AIに関してはワクチン問題は家畜衛生の立場の主張だけではどうにもならぬことは確かで、ならばこの辺で一度AI不活化ワクチンは公衆衛生上有益か有害か国内でも徹底して議論してもらう必要がありそうだ。