『鳥インフルエンザ問題の今後([)』


秋以降の再発を想定して、それぞれの養鶏現場では具体的な対策を考えている。自場で発生したら届け出ることに決まって居ても尚個々には逡巡さえみられる。これは地方行政の立場でも変わらないと思う。そんななか鳥獣人共通病として進化を続けるインフルエンザの脅威が世界の研究機関から時々刻々伝えられて来て居るので純粋に家畜衛生の立場だけで対策を立て難いが、我々現場としては、それが著しく公衆衛生上の脅威とならない限り、つまり法的に許容される範囲の対策は立てていかなければならない。

何時、何処で、誰がやられるか分からない状況では雛の搬入もローテーション通りとはいかないで飼育期間を延長せざるを得ない場合、鶏舎構造上可能かどうかは別として、現在の状況ではEDS(不良卵)、IBD(免疫不全)、MG(基礎免疫)などのうち追加が必要なものはワクチンメーカー等に問い合わせて接種する必要があると思われ、別に競合排除の目的でIB,NDLVを使う場合はスプレーによる不確実さを計算に入れれば、時期には少なくともT、5ケ月に一回の噴霧が経験上は必要だった。

我が国には既に鶏にとっては弱毒の、H3,H1は確実に分布しており、ペットのH6,渡り鳥のH5その他、未知のウイルスが沢山居ると思われ(何しろLPAIに関してサーベイランスが行われて居ない)、諸外国でも或る研究者はウズラが、また或る人はアヒル、更にはブタがそれらウイルスの混合容器になって居ると云い、日本だってそのどれもが危険性はあるのだろう。それらの発表のなかに、七面鳥は鶏よりインフルエンザに弱いが、野外飼育のトリは発症し難く、柵飼いのトリは密集しているので発症し易いというのがあった。しかしこれなど柵飼いの環境が劣悪過ぎれば別だが、自然の抗体の差ではないかと思う。現にあえて野外のウイルスに意識的に暴露を試みた(不埒な)例が二三報告されて居るそうだ。尤も私自身はフィードバックは必要な手法で決して不埒だとは思わない。

外国のどの研究者の話でもLPAI対策の重要性に言及して、ワクチンはHPAI対策ではなく環境中のウイルスを減らし人間の安全を守るための公衆衛生上の必要手段であるとし、日本の清浄国論のように本来の防疫問題を貿易問題にすり替えるような、本筋から外れた主張をして顧みない政府当局とそれに加担する曲学阿世の学者達は世界の真剣な議論から相手にされなくなってしまいかねない。 実際問題として6月30日の農水省自身の発表のように野鳥はおろか、ヒト、ネズミ、昆虫果てはミミズに至るまでウイルスの運搬者として注意しなくてはならないとあっては、いかな閉鎖型鶏舎と云えど対策はお手上げに近い。

もう一つ何度も繰り返すが、HPAI対策は一旦発生すれば殺処分は当然としても、重大なのは共同通信が6月24日に報道した「埋却地周辺の地下水に臭気 山口の鳥インフルエンザ」記事である。山口での処理は、これがモデルケースと喜田委員長が胸を張った理想的処理とされたが、文字を見ただけで屍臭を感じて食欲をなくすようなそんな事態が続発するようだと日本では鶏など飼えなくなる。大勢の白装束による生き埋め作業を度々見せられた嫌悪感だけで、貴重な健康源の卵と鳥肉を忌避する人達は未だに居る。風評とか何とかいうが、消費を減退させるのは本当は安全性とかの理屈だけではなく、そう云った嫌悪感が一番であることを今回嫌でも学ばせられた。其の意味で全国の養鶏現場は、別の方法を研究して(ウイルス拡散防止、臭気対策、場員の安全など)自らそのような処理法に反対すべきである。

その前に、重要なLPAI対策としてサーベイランスと事実上の摘発補償が困難ならば、HPAI発生に備える意味でも想定される見えざる弱毒型のH5,H7亜型のワクチン位は許可しても良さそうなものだ。