『鳥インフルエンザ問題の今後(Y)』



刻々とその時期が近づいている、そんな恐怖感はあっても安心感はサラサラない。

何しろ有効と思われる対策が取られて居る形跡は皆無に近い。私自身は過去の経験からNBやNDの生ワクチンの頻繁なスプレーによる自称お山の大将方式(競合排除法)を強化させたが、これとて肝心のH5N1侵入型が呼吸器よりむしろ腸管粘膜に取り付きやすいということならお手上げだ。それに生ワク噴霧をすれば、細菌、マイコなどは絡み易くなるから、他のLPAIだって感染すれば重篤化する懸念がある。ただAI被害先進国の多くで、その間隙を縫う形でのNDの流行を見ている事実から、二律背反そのどちらを取るか難しいところだが現実にはNDワクチンの接種率は下がり続けている。そうなれば、ここ数年の状況からNDは必ず大発生するだろう。それなのに今年は公式のND発生報告がない。真に怪しい限りであり日本はそういう国だと思ったほうが良いかも知れない。

昔、バタリー養鶏などで梅雨どきなど伝染性下痢症という病気が流行った。チアノーゼを起こし緑便をして鶏共は佇立する。これを雛白痢診断液で調べると強陽性と出るものが多かった。家衛試の安藤先生の診断は鶏チフス、サ・ガリナールムが原因菌。ところが教科書では日本では稀な疾病ということになっている。野兎病(大原病)というのがあって、開拓期のアメリカでは野兎を食って多発し死亡率3%といわれたらしいが日本ではないとされる。ところが我が国でも野兎を食って亡くなった例はよく耳にした。だから本当のところは良く分からない。

やはり昔、畑にドロドロの鶏糞を埋けたら(今はご法度だが)何年たってもそのままで閉口したことがある。今回の大量の埋没鶏も、始末に困るだろうとしていたら、やっぱり浸み出て来た。斃死率100%なら鶏舎を覆っておいて干からびるのを待つべきだとラジオでも云ったのだったが、馬鹿な国には普通の常識が通用しない。そんな指導者には責任を取らせるべきだ。オランダやカナダに聞きに行くより国情に合わせて常識的に判断すべきで、このままで同じ手法を取れば、我が国では為政者、行政の責任を問う前に、全国の養鶏場の排斥運動が起き兼ねない。養鶏業界も、もっと前向きな運動が必要だ。

NBIなどの云われるように、もともと我が国では、大量の鶏生き埋めは条件的に不可能だ。どう考えても選択肢はワクチン接種以外ない。大量埋没の影響は今回のプレ発生だけでも今後は公害の全国問題に発展しかねない。それなのに大槻教授ときたら「Therefore,I believe it’s too early to implement vaccinations」(5月3日デイリーヨミウリ)だそうだ。

今度の鳥インフルエンザ騒ぎで、推定3000万羽の採卵鶏が減ったとの噂も有る。特に5万羽以下の小羽数養鶏の減り方は著しい。取引条件の変化もあるが自力で廃められる点も大きい。企業養鶏だと実際やられるまでは止められない。政府や指導者たちの云うとおり、もう安全なら卵価の高騰を当て込んで、大手養鶏家の増羽気運も本物になるかも知れないが、ここ数年はLPAIの発生までないことになっている国の発表など、それはそれでかえって危険な状態だ。業界全体が、世界に冠たる長寿国を栄養の面から支えているのは本当は我々なんだという自負と責任で、政府、行政の過ちをただして行かなければ、業界どころか、食の供給と安全を危うくして、この国の将来もないとさえ考えるのだ。