『古きを尋ねる』



平戸勝七編 「獣医微生物学 第7章 家禽ペストウイルス」を改めて見る。
昭和39年初版の古い記述だが、その疾病の歴史に始まり、ウイルスの性状、病原性、臨床および剖検、診断、さらに免疫に至るまで基本的には今の継ぎ接ぎの情報より分かりやすく、特に臨床、剖検では浅田農産での「眠るような」「腸炎」そのままの症状が示され、またワクチンについては既に次のように書かれて居る。

『その後ワクチン材料に感染鶏胎児が用いられ、Generosoらは油およびホルマリン添加不活化ワクチンによって優れた免疫効果を収め、Mosesらは紫外線およびホルマリン不活化ワクチンの優れた免疫効果を認め、これに水酸化アルミニュームゲル、死滅抗酸性菌、falbaなどのadjuvantを添加することによってさらに免疫効果の増強する事実を認めた。Daubneyらもadjuvantとして水酸化アルミニュームゲル、ラノリン、蜂蜜を添加したワクチンの優れた免疫効果を認め、アルミニュームワクチンの2回注射によってニワトリに5〜7ケ月持続する免疫をあたえることに成功した。
Daubneyらはハト胎児継代ウイルスおよびハト胎児からさらにマウス脳内に継代したウイルスはニワトリに対する病原性をいちじるしく減じ、その耐過鶏は強毒株に対し強い免疫性をしめす事実を認め、生ウイルス・ワクチン応用の可能性を示唆した。』

通常自然感染を起こさないハトも脳内接種によって神経症状をあらわし感受性はあるとのことだが、その生ワクチンの開発もPOXとのコンビナント以外それっきりらしい。

興味深いのは F 予防と治療の記述の中に『本ウイルス感染鶏は多くの場合100%死亡するため、伝染源が自然的に消滅し、上記のような予防措置によって比較的容易に撲滅されることは過去の歴史が証明するところである』 としていることで、最近の各国の状態を見る限り過去の歴史が当てはまらなくなって来たのだろうか。

当時は獣医の教科書に使われたというこの本(養賢堂発行)は今覗いても面白くミクソウイルスとしてのブタ、ウマ、アヒルインフルエンザ比較など、臨床面の記述が多く養鶏場にとって、かえって参考になる気がする。参考資料のなかには、なつかしい研究者の名前も沢山みえて、何か良き時代だったと思わせるものがある。その後の新しい研究はあっても臨床的には決して古くはない。日本が世界に誇る豚コレラのワクチンもその頃の産物なのだから。

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