『休日閑話その3』



個々のお客さんは「片付いてよかったね」と云いつつ戻って呉れるケースが多くなった。最初から云うとおり、せめて強毒型国内発生と同時に育成段階でのワクチン接種が用意されていれば今頃は、少なく共この秋からの予定は立った筈だったが、実態は再発におびえ続けねばならない。中でも具体的防御策を持たず経済的にも窮地に追い込まれ、必敗の体勢のまま一敗も出来ない生産者の立場は悲壮ですらある。

あくまで私見だが、鶏と人の中間的存在の豚の場合の抗体分布から、弱毒株については、島国特有の広がり方をかなり以前からしていて、それが強毒型の侵入を防いで居たと思うし、侵入後も、感染力が強いと云うほど広がらないのもそのせいだと思って居る。ワクチン抜きのバイオセキュリティ強化だけでは限界がある。尤もその説をとると日本中の鶏は疑似患畜だらけで、とても摘発補償の方向は無理でワクチンに頼らざるを得ないだろう。野鳥の調査でも強毒型は発見されず、弱毒のほうは最初ちょっと出ただけで、後は報道されなくなった。不自然である。野鼠の抗体調査もない。

確かに野外では一貫経営の養豚のように人為的馴致の方法を取らないまでも、自然の形である程度同じ効果が期待出来るのだが、ひとつ危惧するのに浅田農産の「腸炎型」には局所免疫が効きにくい事が有る。アメリカでもニューカッスルワクチンが腸炎型ニューカッスルに効かないことからワクチンそのものの否定論まで出ているそうである。鳥類は構造的に、そ嚢があったりして胃酸の作用が遅れるのか、腸炎には弱い。早速殺菌作用のある添加物の売り込みが現れて居る。ヨーグルトだとか、竹酢(木酢酸)だとか。木酢酸も殺菌効果があるほど入れるとスポンジ卵になってしまうし、白身の味が変わる。

浅田農産の廃鶏処理が問題となった。発病を受けて当然自粛すべき廃鶏処分を殊更急いだ理由がカネ儲けだとして、尚更けしからんとしているのが、大槻さんあたりのコメントをはじめ一般的見方になっているが カネ儲けでなければ何なんだと云われるとハテと考えてしまう。

チョウマン、ガリ、脚弱辺りが、昔廃鶏が金になったころでも、カネにならない廃鶏の代表だった。ボテフリと称された廃鶏業者にかかると、その割合が多くなると嫌がられたが、病気でない廃鶏もカネにならなくなって久しい。ただオールアウトの時代になっても、チョウマン、ガリは混在する。それが病鶏出荷とされて、すべて廃鶏業者に残して行かれた場合を考えて苦笑した。やはり養鶏場は穴を掘る場所が必要になる。つまり廃鶏とは昔はすべて具合いの悪い鶏だったのが、オールアウト時代には混在するだけになり、これからはそれを除かねばならなくなるかも知れず、いろいろ考えさせられる。

実際には全て問題の先送りで、不安も、やられる危険性も少しも緩和されてはいないが、せめて実態とかけはなれた国の清浄国論と学者達のワクチン危険論はそろそろ引っ込めてもらいたいものだ。まるで鶏へのワクチン接種がトリウイルスの人型への変異を促進するようなことを学者は云うが、それ以前に我が国では既に押さえ込みが不可能と思われる低毒型の環境への浸潤が予想されることもあり、いまさらワクチンを問題視することはおかしい上、現実には1976年米国ニュージャージー州での豚インフルエンザ流行でパンデミック再来が予想されたときも4000万人がワクチン接種をして、押さえ込みに成功した(CDC)とされる事例などワクチンこそがウイルスの環境への広がりを押さえる残された唯一の手段であることは間違いないだろう。