我が国の清浄国論の建前に一番切歯扼腕していたのは当の喜田さん、大槻さん達であろうことは最初から想像して居た。だからそこを責めていれば何れは本音が出てくるものと思って居た。 鳥インフルエンザ対策で、これだけ出遅れてしまって尚、彼らの自負を支えて居るものは、世界に誇る、豚コレラワクチンの開発実績である。それがあるが故にAIに関しては事実上先進国で成功国でもあるメキシコを途上国扱いしたがるのである。何しろ彼国は未だに豚コレラさえ自力で解決出来て居ない。 たびたび指摘しているように豚コレラと鳥インフルエンザの対策が同じようでは、どう考えてもおかしい。しかし事ワクチンに関しては、我が国で開発した豚コレラワクチンは鳥インフルエンザに対しても理想に近い。そのことは彼らの現行AIワクチンに対する酷評に如実に現れて居る。ただそのことが国の清浄国論に阻まれて、はっきり云えないのである。しかし、もともとワクチン学者である彼らの本音が、それでもちらつくことがある。豚コレラ用と同じで、作れば出来る(あるいは出来て居る?)、国の清浄国論がなければとするような。 そう云えば、豚コレラと鳥インフルエンザはウイルスそのものが一本鎖RNAウイルスで、ある環境下で変異し易い点でも似て居るそうだ。 繰り返すように農水省も獣医学会も、こと豚コレラ対策では絶対の自信を持ち、GPワクチンの開発を初め、世界に冠たる実績を誇り、未だ豚コレラに悩むメキシコでの、トリインフルエンザ防圧の事実など無視してかかろうとするのも分からぬではない。 調べてみると、確かに農林省家畜衛生試験場で開発され、1969年から使われて居るその生ワクチンは優れ物である。接種後数日で効果が現れ、感染、発病ともに押さえる。しかも我が国に存在した野外ウイルスはニューカッスル病ウイルスの高揚現象を示す、つまりEND+であるのに対してEND現象を示さないENDマーカーなので、野外毒と識別可能であり、そのうえ生ワクチンでありながらウイルスを排泄せず伝播性もないというのだから、今のトリインフルエンザワクチンと比較にならないのは当然である。 それ故に尚更、35年も前に、それだけの開発能力のあった日本がAIワクチンでメキシコの後塵を拝する屈辱には彼らとしては耐えられないのであろう。繰り返すように、ワクチンの開発能力は我々にある、あるいは既に開発済みかも知れない、ただ現在は国の清浄国論の前に沈黙せざるを得ないとするのが彼らの本音であろうことは容易に推察出来そうだ。推察は出来るのだが、本音は何処からも出て来ない。生産者側も同じだ。 私だって、研究費のつく方へしか学者は動かないじゃないか、と非難はするものの、養鶏現場でも制度資金を初めとする国の補助政策がなければにっちもさっちも行かぬことぐらい分からぬではない。やっぱり国の力は大きく、どうにもならぬらしい。 国に改めて貰う以外にない。 H 16 3 25 I,S |