養鶏現場の知恵を生かそう



最初から消費者、生産者の不安心理を解消する落とし所としてはワクチンしか残って居ないと思って居たが、政府が清浄国主張の本音を消費者に隠す為に学者を使ってあれだけワクチンの弊害、危険性を強調したあとでは、その消費者側の理解を得ることは困難だったのだろう。また生産者側も実際はワクチンだけを許可されてもそれと引き換えに補償やら助成やらを打ち切られてはどうしようもない面があったと思われる。仕方ないといえば仕方ない。

こうなっては生産現場の知恵を出し合って、この難局を打開して行くよりない。

学者達は弱毒が強毒化すること、人間に罹るように変化することを強調して消費者の不安を煽り、政府行政もまた一切の議論を封じて清浄国論を貫き、生産者側のワクチン要望を封じることに成功したが鶏病の続発を見た場合の負担も尋常では有るまい。

歴史的に見れば、病勢の変化は学者の言い分とむしろ逆である。世界的に猛威を奮ったスペイン風邪も、ホンコン風邪も今では、H1N1,H3N2として我が国で広く人獣、そして鶏の間に分布して、鶏以外はワクチンが使用され、流行は繰り返すものの、すっかりマイルド化されている。この間、ワクチンがその病勢を変化させてウイルスが強毒化したとする話は聞いたことはない。つまりウソなのだ。更に豚にはワクチンが使われても清浄国の妨げにならず、鶏でのみ感染発見が遅れるなどと難癖をつけて許可しない理由など一切明らかにされない。鶏の中にも、豚と同じ、H1,H3が常在し、それが原因とも思われる症状が頻発して多くは気管支炎として処理されている事実から、豚と同じH1N1などのワクチン投与は有効と思われるが、既にアメリカではH5,H7に対して、H1N1のワクチンが使われて居ると云うのに、どうして日本の鶏だけワクチンは人間にとって危険だとする云い方をされるのか不思議で、清浄国主張だけでは理屈に合わず、てっきり学者の研究方向への不都合ゆえと判断してきたのである。

それら豚の扱いとの差など肝心の点が一切説明されず、消費者にむけてワクチンを殊更危険だとして不安を煽ったやり方は、将来本当に、それが必要になったとき消費者に理解させるのが難しいと危惧するものである。

また新入りのH5が(1)新しいヒトインフルエンザに変異してパンデミックを起こすのか(2)このまま日本に定着して強毒発症を繰り返すのか(3)既存のウイルスに押しやられて弱毒化し常在するようになるのか、その可能性をもう少し論議しても良さそうだ。

更に、もうひとつイタリーのように同じ型の弱毒が冬になって強毒に変異する方向は、日本の場合、既存のHINI,H3N2のこれまでの永年の動きから今更有り得ないと思う。だから現場の養鶏場としては、強毒H5のウイルスを極力(3)の方向に誘導する以外ない。さしもの学者達も撲滅は無理だと云い始め、それを捕らえてワクチン解禁間近しとの見方もあったが、今回はっきり否定されたのだから。

H 16 3 20 I,S