数年前サルモネラ・エンテリティディスが騒がれた時も、当初、専門家の間で、ネズミは問題にされず、アメリカの情報が入るにつれて徐々に認識されて行った。昭和30年頃、雛白痢陽性多発が一部繁殖鶏で問題になった時、現場ではネズミの媒介を疑って、以来しばらくは軍手をして野鼠を捕まえるのが得意技になったほどだった。そんなふうに現場での体験は忘れ難い。 だから今回のトリインフルエンザに関しても我々現場は、当初からネズミの存在、その感受性に注意してきたのは、ホームページを見直して頂いても分かる。一旦国内での感染を見たら、もう現場としたらネズミ抜きでは考えられない。カラスが死んだと云うので、皆そっちに目が行ってしまった。専門家の喜田教授らの話ではカラスやスズメ、犬、猫は大丈夫だろうと云うことだった。タイでウンピョウや猫、最後には虎も死んだ、コウノトリもやられたという報道があってからもである。これほど専門家の云うことは根拠がない。 二年前、河岡教授の紹介では当時のH5N1はウイルス2ケでマウスを殺す、とされた。今回のは幾分毒性が低いと云う。逆に危険性が高い訳だ。これも専門家の話としてウインドレス鶏舎はトリインフルエンザに対して安心だとする説にお目にかかったが、渡り鳥、野鳥の専門家であって、ネズミの専門家でなかったのが残念だった。冗談でなくこのような専門家ばかりでは本当に危険だ。 ウインドレス鶏舎は特にネズミに弱い。周辺の環境では必ずネズミの汚染が起きていることに間違いはない。これは過去の鶏の感染症すべての体験からはっきり言えることである。いつも想定外の後手後手でなく、たまには先回りしなくてはならぬが、これも実態からすると決して先回りどころではない筈だ。ネズミから猫、さらにカラスと、ウイルスの環境への広がりは切りがなくなる。もうその状態と見るべきである。防圧などとっくに不可能なのだ。もうその落としどころを準備するためにもワクチンの正しい知識を国民にも伝えるべきだ。 今のニュースでA農産会長ご夫妻のご不幸を聞いた。こうならなくては何の手も打てない政府の対応をずっと批判してきたが改めて欠陥マニュアルを含めた行政側の手落ちに、文字通り死をもって抗議されたとき、抗することが出来るのか疑わしい。同業者として心からご冥福を祈る。明日は我が身かも知れない。 H16 3 8 I,S |