農水省は4日、都道府県の家畜衛生担当者などを集めた緊急会議を開き、全国一斉の鶏舎消毒実施を要請した。消毒だけで強毒化したトリインフルエンザウイルスに対抗しようというのだから、農水省の暢気(のんき)さには呆れるばかりだ。 京都2例目の農場は、訪れた家畜衛生保健所員に「これ以上の対策はない。よくやっておられる」と言われる位に徹底したバイオセキュリティ態勢をとっていた。にもかかわらず発生を許してしまった。場員も獣医の免許を持ち、発症を早期に発見・報告し、いくら行政側に感謝されようが、その損失は計り知れない。ここまでくれば、農水省が”予防”として指導していることが、いかに”無意味”であることがわかるだろう。消毒が無意味であるとは言わない。ワクチン接種なしの消毒だけでは片手落ちだということだ。発生時の責任や処理は県の職員や養鶏場に負わせ、補償は国民の税金を使い、農水省幹部や先導する学者達は、安全な室内で自分達の研究や資料収集に没頭しているだけで終わり、現場の痛みや国民の不安を全く感じていない。 それともう一つ。2例目の発生時における対処の仕方が問題だ。 鳥取大の大槻公一教授は、2例目の養鶏場にウイルスが侵入した時期を、1例目の養鶏場で大量死がピークと同時期の25、26日と推定している。2つの養鶏場の距離は約5キロでしか離れていないので、大槻教授は「ウイルスが同一の型なら、関連性は非常に高い」と2次感染の可能性を強く示唆した。 一日に数万羽がバタバタと死んでいる正にウイルス繁殖の最盛期に、シロウトばかりを数百人集めて処分作業を行うのは愚の骨頂だ。いくら消毒をしながらとはいえ、これではウイルスの拡散を皆で促進しているようなものだ。他国ではこのような家畜伝染病に対し、緊急対応組織を既に持っている国もある。ちゃんと教育された者が適切に作業を進めていくなら分かるが、それとは全く次元の違う話だ。2次感染の可能性があるなら、現在の行為を一番に疑うべきではないのか。 何度も述べているが、既に鳥インフルエンザを経験しているペンシルベニアではウイルス拡散を防ぐ為に、最盛期は鶏舎外側と周辺の消毒だけを行い、内部の処理はそれを過ぎてから行うことを推奨している。鶏糞などの消毒もあとでゆっくりやれば良い。日本ではそれ大変だとばかりにシロウトを集め、防疫だと言いながら、暴れる鶏を袋詰めしながら大勢の人間が出入りし、強毒化したウイルスを撒き散らすただの助長行為にしか見えない。 このように、農水省やそれを先導する学者達の行政指導はいくつもの矛盾を抱えている。このままでは日本は鳥インフルエンザで汚染されてしまう。いやもう汚染されているのかも知れない。バイオセキュリティだけでは防げないことははっきりしている。「ワクチン接種」という選択肢を並行させることによって、防圧している国はいくつもあるではないか。 このまま次の発生がなければ約一ヶ月後には制限は解除されるだろう。その時は一時の喜びは沸くかもしれない。このことは、山口や大分も同じだが、どこかで、またはもう一度発生する危険は常につきまとうことになる。この繰り返しで、本当に「安心」を得たと言えるのだろうか?養鶏協会もワクチン接種の要望を出しているが、常に補償問題を並べて書いている。それでは焦点がぼやけてしまう。結局、国は「補償」を前面に出すことにより、根本解決を怠ることになってしまう。 人間への感染を防ぎ、養鶏業界を救い、真の「食の安全」を得るためには「ワクチン解禁・接種」の”一点突破”を打ち出して行くべきではないのか。農水省や喜田・大槻教授の言うことを鵜呑みにしていると、”予防が出来ず事後処理だけ”という、とんでもないしっぺ返しを食うことになる。 |