京都の発生現場での「無症状で眠るように死んだ」と云う甚急性発症の恐ろしさには研究者たちも震え上がったろう。 当初、国立感染症研究所の発表で人間への感染症例報告から「多臓器不全でさながらエボラ出血熱」だとし、岡部センター長は「鳥小屋に近づくような馬鹿なことをするな」と警告した。多臓器不全を起こすということはウイルスが、血液を介して(ウイルス血症)どの臓器へも取り付くということで、その後の呼吸器だけで他の臓器には付かないから大丈夫とする、ほかの発表とは大きく違っていた。 それが今回は多臓器不全を起こすまでもなく、いきなり脳に取り付いた事になる。そのことは既に文献などには現れていたが、やはり百聞は一見にしかず、特に自分の研究に取り付かれた人達には見えなかったらしい。 私たち現場の人間は最初から感染症研究所の警告に従い、普段は仕方ないにしても発症時の危険に場員をさらすことを最も危惧して来たし、タミフルを用意し、同時に最も危険な鶏の発症を防ぐために、一日も早いトリインフルエンザワクチンの使用許可を望んで来たのである。 もう本当に京都の業者の対応をあげつらっている暇はない。その業者の鳥がやられたこと自体、事態はそこまで来ていたのだ。山口は鎮圧に成功したが京都は業者の報告遅れで失敗したとマスコミはこぞって云い、業界の一部までその尻馬に乗っているが、今度の事例がなければ、繰り返すように感染研究所の警告も他の学者たちによって実際死者でも出るまで無視され続けたろう。遅まきながら目覚めさせる意味ではよかった。 現在、京都で続けている作業も、相手の正体が見えた今、人体に影響の無いことを祈るばかりだ。もう実際には、怪しい事例はそこら中にある。繰り返して云っているように京都の業者の対応を非難してそれに捕らわれて本当の対策がおろそかになるほうが、ずっと危ない。みな本筋を見失わないようにしたい。私自身は、もう自分の鶏は諦めている。決して悲観的だとは思わない。これは本心だ。 H16 3 3 I,S |