2004/3/2 文化放送取材への返答
『広がる鳥インフルエンザは行政の失敗か?養鶏場経営者の声』



【Q】実際に鶏を飼っている側から見て拡がった鳥インフルエンザをどう感じるか?

【A】全国的な問題です。消費者の不安もピークでその影響もあり、未曾有の卵価安のせいで、現実に餌が入ってこない養鶏場も増えています。そうなると餓死する鶏も増え、どこまでが病気でどこまでが餓死かの区別もつかなくなります。そしていたるところに風評がたち、収拾がつかなくなるのも目に見えています。そして一方でワクチンも使えず、相変わらず一般消費者は生きた鶏の袋詰めを見せられ、恐怖感と嫌悪感で養鶏場離れを起こすのは間違いない状況です。

【Q】FAOやWHOそれにOIEは2月5日の共同声明でアジア周辺国にワクチン接種を呼びかけたが日本は無視したが…

【A】日本はあくまでウイルスを撲滅し清浄化を狙っていると言っているが、それは日本だけだ。FAOも最良の選択かとうかは別として、ワクチンを使わざるを得ない状況になっていることを懸念して勧告しているのです。日本の行動は事前防御ではなく、ただの”事後処理”。ワクチンを使うことの目的は環境中のウイルス量を減らすことであり、それが人間を救うことになるのです。

【Q】農水省で家禽類問題の委員長を務める北海道大学の喜田宏さんは『病気の鶏は卵を産まないから大丈夫。病気になった鶏も色を見ればすぐに分かるから問題ない』と話していたが…

【A】現実問題として京都の例でも処理場専門の検査員がいたにも関わらず、判別できないという難しい面がある。基本的には前記の三機関が推奨するように、アジア全体の問題としてワクチンで抑えて行くことを考えないと、小手先だけでは対処しきれない状況になっている。

【Q】学者の言うことには矛盾を含んでいるということか?

【A】特定の学者の意向をうけた形で動き、全てが一方付いている。それに伴い、ワクチン自体がタブー視されている。報道でも緘口令(かんこうれい)を布かれているような状態だ。中国のテレビでは多くの学者が意見が述べているが、日本では一切討論がなく、特定の学者さんがいつも出てきて、持論を述べて「ああそうですか」ということで皆引っ込んでしまう。これではどこまで行ってもこの方向から抜け出せません。我々の仲間の間では中国の報道のほうがよっぽど進んでいると言っている。

実際には養鶏場はワクチンを接種しなければやっていけないのです。ところが政府の方針に反抗すると補助金が出なくなってしまう。それが、また死活問題になってしまうのです。

【Q】行政側の感染死した鶏の処分方法にも問題あり?

【A】処理の仕方には問題があります。処理をする人間の安全を考える視点が全く無い。発生最盛期が一番危険な状態です。安全を確保するには、発生したらすぐに報告し、従業員を退避。そして鶏舎を封鎖し、ウイルスが散らないようにして、発症最盛期を過ぎ、沈静化を待ってから処理すべきです。こうすれば危険性も薄らぐでしょう。これはペンシルベニア当局も薦めています。とにかく、人間のの安全を第一に考えるべきでしょう。それを念頭に置けば今回の京都の報告遅れなどは防げたはずです。
…04/3/2放送「文化放送蟹瀬誠一ネクスト!」からの要旨