鳥インフルエンザ問題の今後(223)



農水省とOIEによる、アジアにおける鳥インフルエンザの防疫体制強化についての話し合いが、今日から二日間東京で開かれるという。 折しも隣国の韓国南部ではH5N1が大発生して500万羽を越える家禽類が淘汰されている最中で、国性爺合戦の一場面をシミュレートして天空から見下ろしたとすれば、その舞い上がる白煙は風に乗って日本の何処かに漂って来て居ると見えるに違いない。

養鶏現場から見れば生きた心地がせず、鶏の病気の鶏対策を抜きにして人間様用のプレワクチンを云々するなど正気の沙汰ではないと感じても、行政当局などは既に防疫指針を定め、現場には周知徹底してあり備えは万全であると説明することだろう。たとえ不完全なかたちにしても他の近隣諸国がワクチンを使って防御に努めている現状では、ウイルスはバリアのない残りの国にいずれは押し寄せるのは自明の理ともいえる。

これまでの経緯を見ると、学者達が強毒株のサイレントエピデミックを恐れる自然の弱毒株は、どうも消長が激しくて、逆の意味でバリアとしては頼りになりそうにない。それでも今回の韓国での流行があるまでは、我が国のように寒暖の差が激しい場合は冬の流行期だけを警戒すれば良かったがそうはいかなくなってきている。渡り鳥とは関係なさそうな人間の季節株の流行を見ても、どんどん通年化しているように見えるし、馬鹿の一つ覚えで渡り鳥ばかりを気にし過ぎてはいないだろうか。

茨城での弱毒株が人為的に絶滅出来たなどと考える人はいないだろうが、表立った流行が治まると何処へとも無く消えてしまう。喜田教授ではないが、一つ所に二週間と居ないで消えてしまう可愛いウイルスでもあることは確かなようだ。その可愛いウイルスを鳥取大では不自然に28経代も実験室に閉じ込めて強毒化に成功し、過去の茨城での鶏大虐殺は無駄ではなかったと、その行為を正当化し擁護して見せた。これは学者の発言としたら明らかにおかしい。近々には強毒化した事実はない、その証明だけで良いのだ。最近どうもこういう学者が多すぎる。だから政治的に利用されてしまうのだ。そして利用されることで予算をもらう。これでは曲学阿世以外の何物でもない。何万年もの間、毒性をもたらしたり全く苦にされなかったり消長を繰り返して来て居るのが他ならぬインフルエンザウイルスではないのか。

かつてUSDAのスアレスチームがメキシコで調査したように弱毒株が自然界でエンデミック化し定住するのは気候的にも韓国や日本ではありそうにない。数年前には韓国の40%の鶏が弱毒株に汚染されたと報じられた。もしそれがそのままの状態なら今回の強毒株の大発生は寧ろ防げた筈である。渡り鳥に因ってではなくインフルエンザそのものが一つの波になって渡り歩き消長を繰り返して居るとしか思えない。居ると思って内心は期待して居た弱毒株も実はさっさと居なくなって居て全く無防備の状態の韓国だったのかも知れない。

自然界ではウイルスでなくても細菌でさえもよく理由の分からない菌交代を繰り返す。我々の身近かなサルモネラがそうだ。昭和30年代にかけて我が国ではどこででも見られたエンテリティディスはその後ティフィムリュームに代わり、近年はまた世界的にSEが流行したかと思えば、北海道では昨年STによるスズメやネズミの大量死が話題となった。昭和30年代、ヨーロッパには居ないとされたSEでさえそうである。それよりもはるかに足のはやいインフルエンザウイルスが一カ所に止まってなど居るはずがない。いずれは大挙して押し寄せるのは必定である。

一方で我が国の養鶏はマレックの流行以来、分業が進み、育成中は許された形のあらゆるワクチンが用いられ、学者は否定的でも業界自体は、それらの間の交差的な免疫効果や競合による排除、ウイルス同士の干渉作用などにも淡い期待をかけながら観察を続けて居るところである。

H 20 , 4 ,20 篠原 一郎