鳥インフルエンザ問題の今後(213)



週間現代の記事からこっちの、まあ業界内の<コップの嵐>も過ぎ、それよりも何よりも実際の発症がクマタカ記事を最後に止んで、ガンカモ白鳥も北へ帰り、さすがに4月に入れば人間のインフルエンザも収まってくるだろう。そんな中、ひとりタミフル問題だけがテレビ、新聞を賑わして居る。

一種の錯乱状態というか、タミフル以前のアマンタジン服用の時も、子供が恐い夢を見ると注意されたし、単純な熱さましのアセトアミノフェンだけの時も似たような例はあった。もともとインフルエンザ自体が小児に脳炎脳症を起こしやすいとされていたから、わが家に関連のあるオチビさん達にはアマンタジンから寧ろ積極的に処方してもらって居た。高熱、特にインフルエンザによる高熱の後には、年寄りでも一種の錯乱状態になる例がいくつか思い返されて、何か子供だけの問題、タミフルだけの問題ではないように私自身は感じて居る。タミフルで注目されただけで、全く違う薬の、アマンタジンや解熱剤でも似たような状態が聞かされて居て、もっと基本的な高熱と脳症の関係など、まだ良く分かって居ないのではないのか、とさえ勘ぐりたくなる。

《とき》様のいわれる、家禽が既にある種の抗体を持って居るのではないかとする疑問は、昭和40年代初頭のアジア型ニューカッスル病猖獗時の絨毯爆撃的な感染の拡がりかたとも、同じH5N1の韓国事例などとも違って、明らかな手遅れ状態であっても点状での発症が一向に拡がらないのは、我が国には、<無意識のうちに>既に何らかの抵抗勢力が存在するのではないかという疑問を持って居たことは確かである。ただA型インフルエンザ相互間の交差免疫さえ認めない我が国の学会が主導するなかで、それらの主張が通るはずは無い。

そんな中で、もうさんざ繰り返して来たように現場として注目したのが、隣国オランダ、ベルギーがH7N7HPAIにこっぴどくやられた際にも一件しか発症例がないとされたNDワクチン強制国のドイツの例であった。近年接種率が落ちたといえ日本も、育成業を中心にNDワクチンは普及している。そして何よりも実際発生した浅田農産ではそれが抜けて居たとの情報があったからだ。そして自然飼育方式と目される、野外のウイルスとの接触を防ぐことが難しい飼い方を取って居る仲間達は、その多くが実際に競合排除によりフィードバックされていると感じている。このことは清浄国論の我が国はさておき、ほとんど家禽での発症を見ないドイツでも、環境の調査ではありとあらゆる亜型が見つかって居ることからも察せられる。

さすがに暗中模索の鳥インフルエンザと違って、十分の現場体験を積んで居るニューカッスル病などに関しては、ワクチン抜きでの対策は考えられず、メキシコのトリフルワクチン対策を云々する前に、我が国のNDワクチンをこそ全廃せねばならぬところだろうが、ところがどっこい現場では、学者は一切認めない競合排除による他病対策も含めて、その重要性は増すばかりである。またそう考えると学者達のようにメキシコのやりかたを非難する気にはならず、ワクチンで誘導しながら清浄化の暁にはワクチンを廃するという理想論も豚コレラのように発生してからでも間に合う類いの感染症にしか適応出来ないだろうと思うのだ。これも繰り返して来たように、茨城株のような存在は1996年岩手、鹿児島の発症を受けて実施された家衛試の翌年の全国調査以来、関東各地で発生する気管支炎様症状に、IBのあらゆる型のワクチンを使って効果がなかった体験など実は多くの養鶏場が記憶していることであり、決して茨城水海道の初発事例を特別なものとは感じていない。

H 19 3 23. I,SHINOHARA.