鳥インフルエンザ問題の今後(211)



京都産業大学のHPに於る大槻氏への一見弁解記事は、AI生ワクチンとして実際世界の常識であるベクターワクチンを指して増殖を繰り返し強毒に変異する恐れのある危険なワクチンと解説したり、ここ数年間の業界関係者のワクチン接種の要望努力を全く無視するなど杜撰すぎる面はあっても、少なく共大槻氏本人の持論からは掛け離れた全く異質な、良い意味では大学本来の産業側に立った主張であるともいえる。喜田さんは小委員会の内と外で言うことがころころ変わり、<その言やインフルエンザウイルスの如し>であるがその点、大槻さんは寧ろ首尾一貫して生粋の<清浄国論者>であることは当の農水も認めて居るが同時に典型的御用学者でもある。

もともと敵は本能寺に在りとする《清浄国論》は、本来のウイルス学とは相容れない。その《清浄国論》自体が、自給40%輸入60%を問題視する食料安保の上から遠からず見直しを余儀なくされそうで、そうなると今の御用学者達は使い捨てになる可能性さえある。茨城問題で苦し紛れの当面打開策として、國が打ち出した「闇ワク疑惑」論は小委員会を使っての無理な「消去法」や、ことさら中米株を強調するため、あらゆる研究機関を使っての遺伝子配列へのこだわりなどを見せた。しかしH5N2そのものが過去に、ペンシルバニアからメキシコにかけて流行し、イタリアなどではそのまま強毒発症したものの、次第にマイルド化して世界に拡がった株であるからには、歴史的に中米に深い関連があるのは寧ろ当然である。

茨城株でさえ既に三つに小変異していたとされるし、いまさら見つかる国内のH5N2が茨城株そのものでないのは当然である。しかし常識的に考えれば茨城以後、国内の野外株にH5N2が多いのは当たり前であるが、それをことさらに茨城株と区別するのは600万羽を殺して、その株を絶滅させたとする手前であるからだ。茨城事件は壮大な焼け跡調査であった。見つかった少数のウイルスは燃え残りの火の粉に過ぎない。これを強毒変異するとして騒いだのがH5N2が発展途上にあった1983年のペンシルバニア例を持ち出した河岡教授と大槻教授である。このとき河岡さんはウインドウレス鶏舎の鶏を残してあるのを失念し、大槻教授は強毒変異の可能性を2年に延ばしたりして当然ともいえる野外への拡がり懸念を無視して殺処分を正当化した。

HPの杜撰さは問題だが、京都産業大学経営学部の由緒は正しい。前任教授の駒井さんは京都大学在学中から「エーコク種」の研究論文を<鶏の研究>に連載していた。昭和58年に経営学部の教授になってからも食鳥業界の発展に多大の努力をされていると聞く。その持論とするところは、業界の発展は「何よりも、予防薬やワクチンの開発、普及によって大羽数のブロイラーや種鶏が安全かつ計画通りに飼育出来るようになったことによる。」とそのHPで述べて居る。これが<業界性悪説>の代表格ともいえる大槻教授となるとこれまでの大学の産業重視からスタンスはがらりと変わる。そのことが京産大のHPに如実に現れて居て、われわれにはおせっかいながら大学のミスキャストに映る。

中国の対日政策ではないが、あまりにも強力に推し進めれば政府自身も統制が効かなくなるように、我が国の《清浄国論》も具体的な「茨城闇ワク論」あたりから、その明らかな徴候が見え始めて居る。もういい加減で「闇ワク論」を打ち切りたい当局の意向も漏れ聞こえるそんな中での週刊誌大槻発言である。大槻さんはその点、変幻自在な喜田さんと違って、今までの当局の方針に忠実な根っからの御用学者である。だから余計なことだが国の方針が変わったら生き延びることは不可能だと見る向きさえある。

H 19 3 15. I,SHINOHARA.