鳥インフルエンザ問題の今後(210)



《 週間現代誌3/3号の大槻発言を全部取材記者の無知のせいにするのは無理がある》

京都産業大がHPでいくら弁解しても、記事の趣旨そのものは<清浄国論者>の大槻教授のこれまでの言動と矛盾はしていない。本人の意向や意志に全く反した記事を科学的に全く無知な素人記者が捏造出来る筈もない。確たる証拠も無しに、苦し紛れともいえる「闇ワク論」を中米株に似て居ることを、むしろ奇貨として大々的に発表したのは大槻教授を含む、國の小委員会である。それに沿って茨城600万羽は淘汰された。そしてそれは根絶されたとされ<清浄国論>は一応守られた。しかし繰り返すように発症も伴わず、不顕性感染の形でひろがった茨城株が淘汰によって絶滅させられるのであれば、学者達が普段それで騒ぐことはない。実際は不可能であるからこそサイレントエピデミックとして問題視しているのだ。

大体、動衛研、感染研を問わず野外調査での精密検査の結果、我が国で発表されて出て来るのはH5N2,H5N3ばかりだ。それでいて一々茨城株とはシークェンスのわずかな違いを殊更強調して茨城H5N2とはわざとらしく区別される。とまれ我々現場はその「闇ワク論」にさいなまされて来た。<闇ワク問題>は京都産業大がいうような「二年前の過去のトピック」などではなく、未だに深刻な影響を業界に及ぼして居る。その元凶ともいえる一人が外ならぬ大槻教授その人である。

当初、小委員会による「他の要素を総て消去したうえでの闇ワク疑惑」はそのまま全世界に向けて発信された。さすがに次には4番順位にされたが、マスコミを含め一度公的情報として流布されたその説は、生き続けたままである。あの記事の内容通りで、あれこそそれを言い出した学者達が、良いこと幸い否定もせずにこれまで来た論調そのものなのだ。それを自分が云って居ることとされて、もともとウイルス学者にあるまじき論拠に立つ御用学者の一人として慌てたに過ぎない。《だから自分自身で言い訳の一つも出来ないのだ。》

しかし逆にこれで<闇ワク説>を流し続けた学者達もその恐ろしさに目覚めることだろう。それで被告人にされかけた人達の苦しみも幾分かは分かるかもしれない。記事の当初で生ワクチンとし、後で不活化としたのは別の話だ。茨城株を生ワクとしたのは<闇ワク>ときめつけて淘汰鶏に注射痕がなかったからそう云ったのだろう。これは記者の発言とは考えられない。いまメキシコなどで使われて居るベクターワクチンが、京産大のいう生ワクのように勝手に大増殖するものかどうか。それではとてもワクチンとは言えまい。

「野鳥に感受性がなく鶏に馴化しているから、これは人為的な株である」と確定付けて言い続けて居るのが大槻教授である。我々は無論そうは考えて居ない。要するにこの記事は大筋で大槻教授の意向を全面的に受けたものであることは間違いない。どこに、聞いたことと逆の事ばかり書く記者がいるものか。 

事実、われわれ現場はもう馴致して変異し尽くした茨城株が、またひょんなことで発見されて、新たな闇ワク接種とされかねない、一面で記事が指摘して居る通りの懸念を持って居るのである。それはまた國が清浄国論維持のため御用学者を動員して二匹目のドジョウを狙って当然のようにやりかねない事でもあるからだ。 

H 19 3 13. I,SHINOHARA.